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一部分を除いて本当に普通の恋愛青春小説です。
一人称の練習も兼ねているので変なところもあるかもしれませんが、生ぬるい目でみてやってください。
それでは楽しいひと時になるように。
「そういえばさ。明日菜ってば拓弥先輩振ったの?」
「ちょ、ちょっと! しーっ!」
私は慌てて人差し指を口の前に出していた。
学校帰りの生徒で賑わうカフェ。さつきの声はそんな騒がしい中でもよく通るから困る。
「そ、その情報は何処から?」
恐る恐る私は尋ねた。
「麻実からよ」
さつきは私の隣に座っている麻実に視線を移す。つられて麻実の方を向く。
「先輩、最近元気なくてさ。振られたらしいって噂があってね。中学の時から明日菜の事、気にしてたからもしかして、ってさつきに言っただけなんだけど」
そういえば麻実は拓弥先輩と同じ星ヶ丘北高校だったっけ。
「あの……その……」
「そのリアクションからすると。どうやら告白されたのは本当みたいね」
麻実の向かいで静かに様子を見ていた真珠が口を挟んできた。
「そ、そうです。本当です」
言い逃れはできそうにない。正直に話そう。私は降参と言わんばかりにそう言った。
「拓弥先輩振ったのも?」
「は、はい」
「もったいないわねぇ!」
「さつき、声のボリューム落としてっ!」
私は悲鳴混じりに言った。拓弥先輩は私たちの母校、星花中学出身の大スターだ。勉強、スポーツ、容姿、性格。全てパーフェクトのイケメンでもちろんファンも多い。そんな先輩に告白された。しかも振ったなんて話をいろんな学校の生徒が集まるカフェで話せば大勢の耳に入る。それはつまり、いらん恨みを買う可能性もあるということ。私はファンに袋叩きにされている様子を思い浮かべて身震いした。
「他の人が聞いたらそりゃもったいないって思うわよね」
「私たちにとっちゃ何の疑問もないんだけどね」
真珠と麻実は苦笑いを浮かべながら言う。
「明日菜のイケメン嫌いにも困ったものねぇ」
「嫌いってわけじゃないよ、先輩はカッコイイって思うもん。けどなんだろう。惹かれないっていうか」
さつきの言葉に私は反論した。
「明日菜は宇宙人が好きなんだもんね」
麻実が私の肩をぽんと叩く。
「ゲテモノ系見て『かわいいいいいいっ!』ってなるのは逆に尊敬しちゃうよ」
真珠も呆れた様子でそう言う。
「え~かわいいじゃん~」
私はそう言いながらグレイと呼ばれる宇宙人の携帯ストラップを人差し指でなでた。
幼い頃見た宇宙人特集の番組。その番組に出てきたタコのような宇宙人や、グレイと言われるツルツルの宇宙人。それらに胸をときめかせた事を思い出していた。そんな女の子まぁいないよね。みんなと趣味がずれてる事は認めるしかないようだ。
「明日菜もさぁ。そろそろ彼氏つくりなよ」
「さつきに言われたくないよ」
「私には真珠がいるんだもんね~」
つっこまれたさつきは真珠の腕にしがみつく。
「さつきもそろそろ私離れして欲しいんだけど」
「そんなこといわないで~!」
そう言いながらきゃっきゃとはしゃぐ二人。
この二人本当に仲良しなんだよなぁ。幼馴染みで高校まで一緒。真珠は美人でお嬢様だけど面倒見がいいし、もしかしたらさつきより真珠の方がべったりなのかも。さつきは男の子っぽいし、もしさつきが本当に男の子だったらこの二人お似合いだろうな。なんて事を考えて私は思わず笑った。
「さてと。そろそろ帰ろっか」
麻実が時間を確認するとそう呟く。
「そうだね。」
私たちは片付けを済ませ、店の外に出た。
「明日菜も麻実も今月末からテスト?」
帰り道、真珠がそう尋ねる。
「うん」
「そうだよ」
「高校初めてのテストかぁ。麻実大丈夫?」
さつきが心配するのも無理ない。麻実の通う北高はこのあたりでは一番偏差値が高いからだ。
「ぜんぜん大丈夫だよ。それよりも私は明日菜の学校のテストの方が気になるんだけど」
「え?」
「それわかるわ」
「変わった人が多いけど授業は普通だから」
何か誤解を受けているようだ。私の通う星ヶ丘南高校。自由な校風で生徒を伸ばすをモットーに人様に迷惑をかけなければ基本何をしても咎められる事はない。本当に自由でいい学校なんだけどなぁ。
「自由すぎて変な人が多いからね」
「まぁそれは否定しないわ」
さつきの言葉に私は頷いた。確かに変な人が多い。そのイメージが先行して変な学校と思われているんだろうな。
「あ、私ここ寄って帰るから、バイバイ」
私は星ヶ丘公園の入り口で立ち止まりそう言った。
「大丈夫? 最近変質者が出てるらしいけど」
真珠が心配そうに尋ねる。
「大丈夫大丈夫! もう子供じゃないのよ。思い切り蹴飛ばしてやるんだから」
「でも……」
「麻実、そんな顔しないでよ。それにその時の事なんてほとんど覚えてないんだし」
「明日菜の日課は誰にも止められないよ。本人が大丈夫って言うんだし」
「うん……」
さつきの言葉に麻実は返事をする。でもなんだか納得してないみたいだ。
「じゃあまた今度。テスト終わったあたりかな」
「またね~」
「気をつけてね」
「バイバイ!」
私は3人を見送ると、公園へと続く階段を駆け上がった。小高い丘の上にある公園からは町が一望できる。夕日がよく見える場所に立つと私は大声で叫んだ。
「お~い! お~い!」
大きな声で。宇宙へ届くように。叫び続ける。
「お嬢ちゃん」
「うわっ。びっくりしたぁ」
突然後ろから声をかけられ振り返ると、30代ぐらいのおじさんがいた。
「驚かせてごめんよ。何をしているんだい?」
「宇宙人を呼んでるのよ」
「う、宇宙人?」
おじさんは苦笑いを浮かべた。まぁ大体の人はこういうリアクションだよね。慣れっこの私は話を切り上げ再び夕日へ叫ぶ。
「そうか。ここは宇宙人がでたって噂になったもんなぁ」
おじさんは一人で勝手に喋り始めた。
「知っているかい? ここは星がよく見えたから星ヶ丘なんて呼ばれているんだ」
そんなものここに住んでる人なら子供でも知ってる。何を自慢げに話しているんだろう。なんだか気持ち悪い。
「お嬢ちゃんが生まれるぐらいかな? UFOがでたって大騒ぎになってね。そりゃあマスコミが大勢やってきたのさ」
そんなものも知ってる。なんなんだこのおじさん。今日はもう帰ったほうがよさそうだ。
「お嬢ちゃんは宇宙人に会いたいのかい?」
「会いたくなかったらこんなことしてないわよ」
「ははは。それもそうだ。そんなお嬢ちゃんにいい事を教えてあげよう。おじちゃんはね。UFOの破片を持っているんだ」
「ホント!?」
私は思わず声をあげる。
「あぁ。こっちへおいで特別に見せてあげるよ」
「い、いい。やっぱりもう帰らないと」
おじさんの目つきが急に怖くなった。それにUFOの破片なんて明らかに怪しい。
「遠慮しないでさぁ」
「いやああっ!?」
突然おじさんは私の腕を乱暴む。そして近くの茂みへ連れていこうとする。そこでフラッシュバックが起きた。
幼い頃の私がいる。今日みたいに宇宙人を呼んでいた。そこに怪しげなおじさんがやってきて私に声をかける。そのおじさんは宇宙人を見せてくれると言う。
(ダメ、ついて行っちゃ……)
もちろん今の私の声は届かない。幼い私は喜んでおじさんと一緒に茂みへ入っていく。そしておじさんは突然ズボンを脱いだ。訳がわからず硬直する。そして理解する。これは宇宙人じゃない。このおじさんは変質者だ!
悲鳴をあげたのは幼い私? それとも今の私?
おじさんの目付きが急に変わる。今目の前にいるおじさんと同じ目だ。そして私を黙らせようと口を押さえる。暴れる私、でも子供の力なんて大人に敵うわけがない。
「いいからおいでよ」
おじさんの声に私は現実へと戻ってきた。
「い、いや……いやああっ!?」
身体が固まって動かない。何がもう子供じゃない。蹴り飛ばしてやるだ。腕を引っ張るおじさんに抵抗するのでいっぱいいっぱいじゃないか。
「声をあげるな!」
おじさんは私の口に手を伸ばす。大きくなったとはいえまだ子供なんだ。やっぱり勝てない。
「ぐはっ!?」
その時、おじさんが突然倒れた。急に手を放され私は尻持ちをつく。そしてさっきの記憶の続きが再生される。
「な、なんだっ!?」
突然まばゆい光に包まれる。その光の中で銀色に光る物体が動いた。
「うわあっ?!」
おじさんが悲鳴をあげ倒れる。
「グ、グレイ?」
銀色の物体。それはグレイだった。グレイが私を助けてくれたんだ!
「明日菜っ! 明日菜っ!」
「しっかりして明日菜!」
「あ、あれ?」
気が付くと、真珠とさつきが私の肩を揺すっていた。傍らにはさっきのおじさんが倒れている。
「大丈夫?」
「し、真珠? さつき? なんで?」
「たまたま近くを通ったんだ。そしたら悲鳴が聞こえて……」
二人は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「グレイは?」
『グレイ?』
二人の声がハモる。
「――そっか。怖い思いをしたんだね」
「私警察に電話してくる!」
真珠が私を強く抱きしめてくれた。
「なにやってんだよ! おっさん!」
あの時みたいにグレイが助けに来てくれた。そう思って私は声の方を見る。夕日に照らされた少年の横顔があった。
「大丈夫か?」
「あ、はい……」
彼は私に手を伸ばし立ち上がらせてくれた。そこでようやく彼の顔をはっきり見る事ができる――なんだ。ただのイケメンか。がっかり。
「く、くそぉおお、覚えてろよ!」
おじさんは捨て台詞を吐き逃げていった。
「あ、ありがとうございました。」
私は少年に頭を下げる。すると彼は私の両手を握ってこう言った。
「やっと会えた」
「は?」
「俺と付き合ってくれ」
「はああっ?!」
なんだこいつ。ただのナンパ野郎か?
「あ、あの、そんな急に言われましても……」
「きっと幸せにするから!」
そんな事、この前言われたなぁ。しかし何だこの男は。助けてくれたと思ったら。そうだこの人も変質者かもしれない。とりあえず逃げよう。
「ごめんなさいっ!」
私は彼の手を振りほどくと一目散に逃げ出した。