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第7話 NPCにやさしくない奴にやさしくない奴

 ブレイクから聞いたブルックの話はこうだった。とにかく下種い。最初名前が似ているからと言う理由でPTを組んだのはブレイクの方からだったそうだが、無礼、不作法、非常識、乱暴、それでいて狡猾な男らしい。

 北斗の○でいうところのハート様のような巨体を持ち、その手に持ったハルバートで大型モンスターと怪獣大決戦をするような腕力を持ちながらも、レイドボスとの戦闘では後方から様子見をするような奴らしい。

「ブレイク、お前結構ストレスたまってたんだな」

 後半は愚痴大会だった。

「ああ、あいつのやり方にはストレスがたまっていたところだ」

「物質破壊食らわせちゃえばいいじゃん」

 ブレイクは遠い目をして言った。

「いや、俺ウィザードなんだよ・・・」

 物質破壊は近接スキルだ。ウィザードは遠距離攻撃魔法主体の魔法使いなわけだが・・・。移動や身のこなしがよくなるスキルやステータスは持っていない。ぶっちゃけ接近戦にはまったく向いていない。

「不意打ちしか使えなさそうだな・・・」

「うむ、とりまきもいるしな。しくじったら何されるかわかったもんじゃねえ。だから俺は関わらないで飯食ってだらだらしたいのさ」


 ブレイクは現状の殺伐とした状態は望ましくないようだが、かといってどうこうしたいというのもないらしい。


「まあ、DQNの位置はわかったしな。俺は仕留めてやる」

「って、お前初心者だろ!?身体強化くらいじゃやばくないか?ここで俺と一緒に愚痴ってようぜ?」

「俺のレベルは1501だ」

 ブレイクは手に持っていたスプーンを取り落す。

「カンスト超えてるじゃねえか!?」

ブレイクを放置して俺は足早に店を出た。


 ブルックの屋敷は街を見下ろせる小高い丘の上にあった。

 入ってみると山賊のような衛兵がいっぱいいた。


「いらっしゃいませ、こんにちは、なんのご用件でしょうか?だるいから死ねやあああああ!!」

 門番はそうまくしたてるといきなり切りかかってきた。

「ちゃんと要件聞けよ!?」

 俺は問答無用でその剣を斬りとばし、ついでに衝撃波で上空に打ち上げると同時に飛びかかって追撃し、地面にたたきつけた。

 たぶん即死。

もう一人の門番が失禁する。汚い。

「ブルックに会わせろ」


 失禁した門番その2は俺を連れてブルックの私室に案内した。

「だ、旦那、お客人ですぜ」

 そういって開かれたドアの先には、ハゲ、デブ、髭の大男がソファに持たれていた。左右には街の女の子がほとんど裸のような恰好で抱えられている。

「なんだテメーは」

 汚らしい大声で吠えられた。

「NPCを解放しろ、不愉快だ。彼らにも心はある」

 単刀直入に俺が言うと奴はこう返した。

「プレイヤーもNPCも関係ねえよ、俺様より弱い奴は全員奴隷だ!テメーは強制労働だな。俺様に舐めた口きいたことを後悔させてやる!!」

 

 横にいた女の子たちを放り出すと立ち上がる。

でかい!!

おそらくマックス身長+装備の効果だろう。だいたい3mはあるか?

インベントリからハルバートを取り出し、俺につきつける。

「今なら半殺しにしてやるがどうする?土下座するか?」

「ハゲの豚に下げる頭なぞない」

 俺はそれだけ言うとマキシマムペイン13をハルバートに叩きつけた。

 金属同士のこすれる音と火花が飛び散り、女の子達が悲鳴を上げる。俺の一撃で体勢を崩したブルックは、強化されたステータスで無理やり体勢を戻すと同時にスキルを発動した。

「大旋風刃でひき肉にしてやるぜええええ」

 下種い笑顔で涎を飛ばしながら吠える。ハルバートが高速回転しながら敵につっこむ技だ。

「アホが、シャドウブレイド!!」

 俺はあわてず、自分の影に剣を刺した。ささった刀身はブルックの影から飛び出し、ブルックの腹をぶち抜いた。

「オゲエエエエエエエ!?なんじゃこりゃああああああああああ!俺様のステータスは2倍なんだぞ!!なんで俺様がやられてるんだ!?」

 ハルバートを取り落し、腹を抱えてのた打ち回るブルック。

俺のステータスは既に3倍以上だ。まだ上がるし2倍に負けるわけがない。

「解放するか?」

 俺は冷酷に見えるようにふるまう。

「ふ、ふざけんじゃねえぞ。なんで俺様だけがそんなことしなきゃならねえんだ」

 ブルックははみ出た腸を手で抑え付けながらもまだ吠える。

「なら死ね」

 俺は問答無用で首をはねた。こいつみたいなプレイヤーをこの世界の残しておいたらリルが危ない。ただでさえ腐乱王が何してくれてるかわからないのだから・・・。

 女の子達は俺を悪魔でも見るような目で見ながら絶叫している。解放したのにこれでは報われない。

 俺は食堂に戻りブレイクに顛末を話した。

「お前すげえなあ・・・でも殺したとかやりすぎじゃねえか?」

 ブレイクは結構臆病なようだ。

「俺の愛する人はNPCだ。障害になるような奴とか生かしておくわけがない」

 俺はふつうにそういったのだが・・・。

「惚れた女のために虐殺しそうだな。お前こええわ」

 ブレイクはやばい奴を見る目で俺を見ていた。

「安心しろ。俺はリルと幸せに暮せる世界なら平和に生きるから」

「わかったわ。俺も平和に飯食ってだらだらするからそっとしといてくれよ」

お前飯食うしかやりたいことないのか・・・と思っていると

「そういや、まだ名前聞いてなかったけど教えてくれないか?」

 すっかり忘れていた。

「ザムだ。一応エターナルってギルドのマスターやってたから知ってる奴は知っているだろう」

 俺の名前を聞いたブレイクは再びスプーンを落とした。

「あ、あの、パートナーに話かけた男に闇討ち常習の暗黒騎士で、ギルド対抗戦で挨拶しただけでカンストパラディンを開幕2秒で即死させたという悪名で2ちゃんの掲示板でさらされまくっていた関わりたくないギルドマスター4天王のザム!?」

 なんだそれは!?

「マテ、尾ひれがすごすぎるぞ!?あれはあのクソ野郎が嫌がるリルを口説きまくるから決闘しただけだ!!」

「そ、そうなのか??」

 すごい疑われている。

 確かに俺はリル大好きオーラを出しまくっていたが、ギルドメンバーにも祝福されてたし、リル本人も俺の好意をうれしいと言ってくれていたんだ!?そんなストーカーチックな扱いされる言われはないぞ!?

「く、とりあえず俺はストーカーとか粘着とか変態ではないからな!」

 負け惜しみに聞こえる・・・。

「あれだな、とりあえず王都に急いだほうがいいんじゃね?パートナーのリルって言ったか?NPCだったんだろ?ゾンビ化されてる可能性高いぞ」

 そうだった。依然、リルがピンチなのは変わりないのだ。

「ああ、お前に一つ頼みたい。俺が、NPCにひどいことする奴を殺して回ろうとしてると広めてくれ」

「いいのか?狙われるかもしれないぞ?」

「関わりたくない奴のほうが多いんだろう?ましてこっちはチート世界だからな。少し頭のまわる奴なら慎重になるさ。そうでないようなアホなら楽勝だろう」


 危険は増えるが、どのみち避けて通れぬ課題だ。俺はリルと幸せに暮すためには手段を選ぶつもりはなかった。


 


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