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第6話 やっぱりいた、下種プレイヤー

 港町、魔王達の安否が気になるが、船は出航してしまった。王国までは3日ほどだそうだ。

船員「おーい、冒険者さんよー。手伝ってくれねえか?」

 ごついおっさんが俺に声をかける。


「なんだ?」

船員「死体を片付けたいんだがよう、とれねえから手伝ってほしいのよ」

 船の外壁の金属板に、巨人の投げてきた人間砲弾がめり込んでいた。骨などがひっかかって取れないらしい。

「多少船を壊してもいいか?」

船員「どうせ直さねえといけねえから沈没しない程度にならやってくれ」

 俺は外壁の上から竜巻型の衝撃波を生み出すと、それを使って死体と金属板をこそぎ取った。すまん、知らない犠牲者よ。だがお前に腐乱されると俺達が気分悪いのだ。水葬ということにしてくれ。

船員「あんたひでえなー」

 船員はまさかこそぎ取るとは思っていなかったらしい。

「俺は俺の目的以外に気を使うつもりはないんだ。すまんな」

 リルが無事ならそれですべて良し。あとは些末事だ。


 船に揺られながらの旅は快適に進んだ。天候も荒れず、モンスターも出ずに王国の港街、ウラガーに到着した。


「さて、ついたはいいが、どういうことだろうか・・・」


 てっきり俺は白いモンスターに囲まれてるくらいのことを想定したのだが、普通に色のある港町が待っていた。

 人通りはえらくすくないものの歩いてる人もいる。

 俺は情報収集を兼ねてウラガーを歩き回った。しかし街は違う意味で異常だった。

 街の住人は囚人のように首輪をつけているものがほとんどだった。

 黒い革のような素材だ。道行く人々の表情は暗い。

 腹も減ったので食堂に入ると、そこには首輪をしていない男がカウンターで飯を食っていた。

 男は俺に目を向ける。

「お前、プレイヤーか。今のウラガーはちょっとやばいぞ?」

 と、声をかけてきた。

「ん、なんでわかる?」

 はっきり言って俺にはNPCとプレイヤーの区別なんてつかないんだが・・・。そもそもこいつはなんだ?

「課金パック。あれにピアス入ってただろ?あれつけてると区別つくんだぜ?お前初心者だったのか?」

 なんだと!?趣味じゃないからと速攻でうっぱらったあれにそんな機能がついていたのか・・・。もし装備してたらリルがどっちかもわかっていたのか??

「いや、まあ知らなかった。しかし、と言うことはお前もプレイヤーなのか?」

神様の爺さんはほかのプレイヤーがいるということは言ってなかったが、あの魔剣を持ってる奴には権利があることをほのめかしていたしな。

「おうとも、元のゲームよりだいぶ少ないが複数のプレイヤーがこっちにいるぜ?この辺りの凍結空間は大体解除したし、上位陣は帝国領土奪還目指してるみたいだ」

「なるほど、どおりで白い連中がいないわけだ」

 納得した。プレイヤーがPTやギルドを組んでいるならばあいつらを狩ることも可能だろう。それにこいつらはチート能力を持ってるはずだ。どんな奴らがいるかわからないが、情報は持っておいたほうがいいだろう。

「お前はどんなチート能力をもらってきたんだ?」

 男は自慢げに胸をそらして言った。

「聞いて驚けよ?俺のチート能力は、物質破壊だ!!あの白い連中と同じで破壊不可能なオブジェクトも俺が触れば一撃よ」

 なかなか強力そうだが、触れないとダメなようだな。

「すげえな、でも上位陣が更にいると?」

 そう、こいつは先ほどそう言ったのだ。上位陣は帝国領土を目指していると。

「まあな、物質創造とか、エターナルフォースブリザードとか、邪気眼とか、発想がやばい連中がたくさんいるぜ。さすがに俺もそういうのはちょっとなあ」

 間違いない。上位陣は人格的に危険そうだ。

「なるほど。すさまじいな」

「で、お前はどんなのもらったんだ?」

 まあ、やはり聞いてきたか。無難に誤魔化そう。

「ん、身体強化だ。しかしいまいちだな。もうちょいひねれば良かった」

 実際にはレベルアップで異常に成長、だが。今のステータス的には身体強化くらいで誤魔化せるだろう。まさか1レベルあがるだけで3倍強くなるとかアホなチートとは思うまい。

「なるほどな、そいつはなんか失敗したかもなあ。俺はブレイクだ。困ったことがあったら俺に相談してくれていいぜ?港町を支配してる剛腕のブルックとも顔見知りだからな」

「剛腕のブルック?」

「ああ、ゲームでも結構有名だったんだぜ?リアルでは負けなしのスーパーヤンキーだったらしい。あいつのチート能力は全ステータス2倍だからな。半端なやつじゃ何もできないうちに終わるぜ」

 あー、確かに昔そんなDQNがいるのを掲示板か何かで見かけたが・・・港町を支配だと?

「支配ってのはどういうことだ?」

「ん、そのまんま。ほら、チートプレイヤーは強いからさ。普通に群雄割拠状態だぜ。俺はうまい飯を食ってだらだら過ごせるだけでいいから暴れないけどな」

 まさかとは思うが、ネット小説のチートプレイヤー達よろしく、好き勝手に暴れているだと!?

「王都はどうなってるんだ?」

 リルが心配だ。

「王都、ね。2日くらい前に腐乱王が全領域制覇って聞いたぜ?住民全員ゾンビ化してそうで近寄りたくねえよなー」

「腐乱王・・・あのゾンビマニアか!?」

 最強クラスのネクロマンサーとして有名だった廃人だが、よりにもよってなんてことしてくれてんだ!?

「ほら、NPCなんて人であって人でないみたいな扱い受けてるだろ?実際俺達からすると塵芥みたいな戦力しかないのがほとんどだ。ブルックもこの街の全員に首輪つけてるしな。誰がどうしようとなあ」

 リルはNPCだ。俺をここに送りだしてくれた魔王や側近だってエネミーとはいえNPCだ。心も感情もあるのにモノみたいな扱いをしているやつがいるだと・・・?

「すまんが、ブルックの話を聞かせてほしい。ちょっと殺してくる」

「おう、いいぜ?・・・ん?殺す!?」

 俺は凄みを効かせた視線でブレイクを射すくめてこう言った。

「NPCの人権侵害をする奴とか許せん!!」



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