第5話 別れ
この小説は書き溜めしてません。さっきプロットが10分でできたので仕事の合間に書いて、でき次第アップしていたり・・・。
港町が解放されたことによって、俺は王国への移動手段を得た。魔王はついでに港街をゲットした。
・・・のだが。
魔王「一人で行くがよい。まだこちらを掌握しきれていないというのに王国へ行くのは、得策ではない。こちらが片付いたら折を見て王国も配下としようぞ」
ここまでタッグを組んでやってきた魔王だったが、二重の盤面で侵略をするつもりはないらしい。戦略的には手堅い奴のようだ。
「仕方ない、俺はリルを探しに行く。今夜の宴の後はサヨナラだ」
側近「ザム殿、リルとやらを迎えた後、よろしければ我が軍に士官せぬか?ザム殿が魔王様と組めばより早急な侵略ができそうだ」
魔王と組んで世界征服か・・・考えたこともなかったが、それもありかもしれない。
しかし反対は意外なところから来た。
魔王「・・・それはあまり勧められたものではないな。おそらく、リルという娘が反対するだろう。世界制覇が終わった頃に領地をくれてやったほうが良きはからいだろう」
「確かに、リルは嫌がるかもしれないな。まあ、また機会があれば共闘しよう。遅れをとるつもりはないが、王国にも白いやつらいっぱいいそうだしな」
その晩の宴は俺の送別会となった。うまい料理をたらふく食い、一晩中リルについて熱く惚気た。魔王がすごい嫌そうにしていた。3発ほど即死魔法を打たれたが気合で耐えた。
翌朝出発する際に魔王と側近達は船まで見送りにきてくれた。
朝もやだか霧だかに出航する船のシルエットが見える。
「行ってくる。必ずリルを連れて戻るよ」
魔王「次に会うときは更にパワーアップしているから楽しみにしておけ。とりあえず死ね」
側近「魔王様のことは私がしっかり面倒を見ますので、ご心配なさらずに・・・」
船着き場にトゲトゲのフルアーマーとその従者がいる様は違和感以外の何物でもなかったが何気にうれしかった。
ズシン・・・・
地面が揺れた後、大量の血しぶきが雨のように降り注いだ。
臓物やら千切れた手足やらが後から降り注ぐ。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
突如、平和な朝の港が阿鼻叫喚の地獄絵図に代わる。
「なんだ!?」
霧の中で、巨大な何かが起き上がるのが見えた。
魔王「白騎士の復活か!!」
港町の真ん中には先日倒した白騎士の死体が放置されていた。というかあんなものどうにかする処理場などない。頭も内臓もすべてぐちゃぐちゃになった状態だったからと油断していた。どうやら再生したらしい。
最早鎧の大半がなくなったそれは白い巨人だった。あまりにもでかい、でかすぎて冗談にみえてくるそいつは、復活した港町の人々を掴んだり、蹴散らしたりして血しぶきの雨を作っていた。そして、白い巨人は俺の乗ろうとしている船に気が付いた。走りながら人間をつかみ、船へと投げつけてくる。
人間砲弾はマストを一本へし折り、桟橋を砕きと、なかなかシャレにならない破壊力になっている。
側近「いけません、船が狙われています!!」
船乗り「急いで出すぞおお!!みんな乗り込めえええええ」
魔王「貴様はさっさと乗れ、ここは任せろ」
せかす船乗り、行けという魔王。俺が一緒にいれば倒せるだろう。だが魔王一人であの巨人は倒せるのか?側近がいても全力を出せるのか?躊躇する俺に魔王は衝撃波を放つ。吹き飛ばされた俺は船の甲板まで転がった。
船が出る。
「くそ、かっこつけやがって!必ず勝てよ!!」
魔王「誰にモノを言っている?この魔王の心配など無用、とりあえず死ね!!」
霧にまぎれて魔王と巨人の戦いは見えなくなる。
やがて衝撃音や光も収まった。