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ロボット、です!!

 時代が進み、科学が進歩した現在。ネットショッピングでロボットが買えるようになった。ロボットは主に人間の身の回りの世話をするために作られ、人間が馴染みやすいように、人型に模し、性別や性格なども一体一体きちんと設計されてある。


 それで、ですよ。僕も炊事洗濯をしてくれるロボットが欲しくて今、モニターを見ながら探しているわけだけども、正直どれを買うべきか悩んでいる。原因はどのロボットも可愛くて目移りしてしまうから。


 ああ、ちなみに僕は男なので買うロボットはもちろん女性型ロボットになる。男なら当然だよね。


 うーん、それにしてもどうするかなぁ。何かこう、後もう一押ししてくれるロボットはいないものか……ん、これは何だ? おおおお!!


 そこは初めて訪れた店だった。特に考えなしに新商品のコーナーをタッチすると、非常に可愛らしいメイド服を着たロボットが映し出された。ロボットを人間に例えるなら女子中学生くらいの年頃か。


 ……いや、それにしても可愛い。僕は画面に釘付けになった。ビデオチャット機能で、このロボットの実際の動きを見ながら会話することができる。僕はさっそく試してみることにした。


「もしもーし、聞こえますかー?」


「は、はい!! ばっちり聞こえます!! 私の名前はヒナタ!! 正真正銘のロボット、です!!」


 と、ヒナタという名前のロボットは元気な声で返事をしてきた。おお、健康的な声。さらに可愛くなったじゃないか。


「それじゃあ、ヒナタ。メイド服を着てるってことは、君は炊事洗濯とか代わりにしてくれるロボットなのかな?」


「いえ、私は炊事洗濯なんてできません!! メイド服は客寄せ、です!!」


 客寄せって……正直だな。でも、その正直さも可愛いよ。


「あ、そうなんだ。じゃあ、君にはどんな機能がついているのかな?」


「私の電池寿命は少なくとも50年以上、です!!」


「へえ、それはすごく長いね」


 大抵のロボットは頑張って10年ほどだから、50年持つのは別格だった。


「だけど精密機械の上、あまり頑丈に作られてないので、すぐ壊れちゃったりするかもしれません!! なので私をお買い上げになられても保証書はつかない、です!!」


……いきなり電池寿命の優位性を打ち消してしまう発言だね。ここの会社、名前すら聞いたことないけど、何を考えてこれを開発したんだろう。精密機械だからこそ頑丈に作ろうよ、ねえ。


「しかぁーし!! その分お求め安い価格となっております!!」


 ヒナタは大げさな動きをしながら、自分の腰につけてあったプライスカードを僕に見せた。


 あ、確かに安い。これなら買ってすぐに故障しても仕方ないと割り切れる値段かな。それにしても動きの一つ一つも可愛くて仕方がないじゃないか。


「これをどうぞ!! パンフレット、です!!」


「ん、ありがとう」


 僕は画面の中のヒナタが差し出したパンフレットにタッチした。すると画面がパンフレットの中身に切り替わった。


 ざっとパンフレットに目を通すと、ヒナタを製造した会社のコンセプトが『何もできないロボット』だということが分かった。


 ここの会社はロボットをただの便利な道具として扱うのではなく、人間の隣で共に生きるパートナーとして考えていた。そのために便利な機能は排除して、電池寿命だけに特化したロボットを製造している。壊れやすいのもわざとで、ロボットを時に病気を患う人間と同じように考えさせるためらしい。


 ……なるほど。理念として分からないでもない気がする。どうしよう? 買っちゃおうかな? 値段も手ごろだし。何より可愛いし。ただ、炊事洗濯はどうする?


 ……


 ……


よし、決めた!! 買っちゃおう!! 炊事洗濯くらい自分でするさ!!



 ――――――――――



 後日、ヒナタが自宅に届けられた。そして一緒に暮らしだして分かったのだが、何もできないという触れ込みのこのロボット。想像以上に優秀だった。


 まるで人間のように食事もすれば、睡眠を取る。取った食事は睡眠時間を使ってエネルギーに変えているらしい。これがあるから電池も50年持つそうだ。エネルギー以外のものも生成されるのだが、それはわざわざトイレに行って排出している。


「ヒナタ。お風呂が沸いたから、先に入っていいよ」と、僕が言うと、


「分かりました!! 先に入らせてもらいます!!」


 そう言ってお風呂に向かう。防水機能も完璧だ。うーん、良い買い物をした。


 僕はヒナタがお風呂に入っている間にテレビを見ることにした。だけど、特に見たい番組がなく、時々チャンネルを変えていったら、結局ニュース番組に落ち着いた。


 ニュースは親から虐待されて逃げ出した子供たちが集まって一つの会社を立ち上げていたことを報道した。その会社名は、あれ? ヒナタの製造会社と同じじゃないか。


「ただ今、お風呂から上がりました!!」


 と、後ろからヒナタの声が聞こえてきたので、僕は慌ててテレビの電源を切った。


 実はね、薄々おかしいとは思ってたんだよ。ヒナタはロボットなのに普通に髪の毛が伸びてるんだもん。


「ヒナタ、湯加減どうだった?」


「バッチリ、です!!」


「そう、それは良かった」


 ……そう、良いんだ、これで。ヒナタは可愛いから、そんな細かいコト僕は気にしないよ。


 ……


 いや、と言うかね、僕はむしろこれで良かったとさえ思えるん、です!!


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