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幼なじみ

 高校一年の時、好きでもない男性ひとと付き合い始めて二年が経った。未だに好きになれないけど付き合っている。でも、これも一つの道だと私は思っている。


 私の幼なじみに麻奈まなという子がいる。麻奈はずっと好きな男性を想い続けている。その男性は、私と麻奈の幼なじみで名前をさかきと言った。他の女性ひとを見ている榊がこちらを振り向くまで、麻奈はただ待っている。私とは方向が違うけど、これも一つの道なのだろうと思う。


 ある日、私は麻奈と他愛もない会話をしている最中に、一つのオカルト話をした。ウチの地元にはオカルトで有名な山があるのだけど……


 その山には言い伝えがあって、ずっと昔、山に住む鬼にさらわれた姫を、許婚であった男が助けに入った。男は鬼を追い払ってなんとか姫を助けだしたけど、鬼をしとめるまでには至らなかった。以降、鬼は山に一人で立ち入った女だけを殺すようになった。そばに男が付いていれば手出しはしない。


 これは都市伝説として現在にも伝わっていること。だからか、この山には女の自殺者が多い。自殺者を鬼の仕業と考える人も中には居るけど。


 私は麻奈に言ってみた。一人で山に行ってみてはどうかと。そこで確認したらいい。榊が助けに来るかどうかを。来るのであれば、二人は結ばれる可能性もあるかもしれないのだからと。


 その数日後、麻奈は家に戻らなくなった。心配した榊は私の元へ来て、麻奈について何か知らないかと尋ねてきた。


 私は素直に答えた。麻奈は山に行ったと。榊は激昂した。どうしてそれを止めなかったのかと問い詰めてきた。私はため息をついた。榊は昔から私たちに対して過保護なところがある。


 三人の幼なじみ、そこで一人だけ男なのだから、そうなるのも仕方ないのかもしれないけど、そのせいで麻奈が榊から離れられなくなったとなぜ考えられない? 無神経に榊が麻奈を大切にし過ぎた。それこそが麻奈が山に行った原因なのに。


 榊は山に向かった。そこにまだ麻奈は居るだろうか? 居たとして連れて帰ってこられるだろうか? 所詮、都市伝説なんてものは事実ではない。鬼なんて居ないことは、二年前のあの日から私は知っている。


 翌日、好きでもない私の彼氏が、私の元へ来てこう言った。「埋めてきた」と。これをしてくれるほど、私に夢中にさせるのに二年かかった。


 手に入れたくても入らないものなら、誰の手にも渡らないようにするのも一つの道だと、私は思う。


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