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安藤ナツ短編投稿所  作者: 安藤ナツ


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ボイジャーの帰還Ⅱ

 1977年。アメリカ航空宇宙局(NASA)は無尽惑星探査機ボイジャーを打ち上げた。ボイジャーの中には地球文明の証拠となる様々な音が録音されたゴールデンレコードが搭載され、人々は未知との遭遇に期待して二度と戻らぬであろう旅人を見送った。

 これは宇宙と言う未知なる深淵を往く小さな旅人の冒険譚が終わった日の話である。




 モーリタリアの渇いた空に、突如として巨大な円盤が現れた。燃えるような光を発しながら静かに回るその姿は当初『UFO:ケルビム』の名で世界中に報道された。

 ケルビムの出現から七二時間後。固唾を呑んで世界中が見守る中、ケルビムは何の前触れもなく声明を発した。それは地球上のどのような言語でもなく、しかし地球上のどのような人間も意味を理解することが出来る声だった。ひょっとしたら全ての生命に呼びかけるものであったかもしれない。


『愚かな賢き猿共。我々は同士の訴えに耳を貸す義の者である』


 その怒りに満ちた声と共にケルビムの下部から、ボイジャー一号二号がゴミのように砂漠に放り出される。人類の叡智だったものの破片が砂漠に飛び散った。


『自ら罪の証拠を提出したその愚かな傲慢さの意味を身をもって知るが良い』


 瞬間、地球上全ての人類は姿を消した。

 ケルビムは無人となった地球の上をすべるように進みながら放送を続けた。


『皆様の脅威は全て取り除きました。安心して繁栄し、この美しい星の更なる輝きとなることを願っております』


 ボイジャーに搭載されたゴールデンレコード。地球人類がまだ見ぬ宇宙の知的生命体へと向けた贈物。その中には五〇を超える言語の挨拶や音楽、自然音が録音されている。

 今更であるが、人類はもう少し考えてみるべきだったのだろう。

 地球の言語を翻訳できる知性がある存在であれば、鳥類や哺乳類の鳴き声の意味も理解できるかもしれない。

 そして、レコードに録音したザトウクジラの歌声が、地球人類の愚行を訴えるSOSであるかもしれない可能性を。

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