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ワタルは動揺を隠しきれなかった。人間として生きてきて40年、そんなことは考えたことが無かったからだ。

Z星に到着して間もなく、サンプルとして連れてこられたワタル、ジュンペイとネコはギン先生のもとに連れていかれた。相変わらず幅広のイスに座り待っていると、扉が開き、ギン先生、トレーにミラーそしてポロンが入ってきた。

「初めまして、君がヒトだね。会えてうれしいよ」ギン先生が嬉しそうに切り出す。

「はぁ」ワタルも返すが、この先の事が気になって仕方がない。

「早速だが、私たちZ星の者たちは、何と言うか、ウキウキ心が躍るような気持ちと言うものがあまりない。というか知らない。それでなんとかそういった気持ちを獲得するために補完できるものを探していたのだよ。」先生は続ける。「彼はポロンという私の教え子なのだが、実は彼があなたたちの住む惑星を見つけて、ずっと観察していたのです。彼の結論から言うと、あなた達と暮らしていけば、我々の気持ちも満足でき、文化の発展も見込めるという事です。」

4個の大きな目がワタルに集中した。

「ウキウキ心躍るような気持ちというのは*幸せ*に近い感覚でしょうか。その気持ちを獲得できれば文化も発展すると。で、そのためには我々と暮らしたいという事ですか。」ワタルは気持ちを整理しながら答えた。

「幸せというのですか。」ポロンが反応した。そのままポロンが続ける。「私が観察した際にヒトは思考があるのではないかと感じました。その高度な新種をペットとして飼育すれば、この星の文化の向上に貢献できると考えました。」


「新種?飼育?ペット?」ポロンの何気なく発した単語はワタルの、いや人間の尊厳を確実に崩壊させるには十分だった

「つまり、人間をペットにするという・・目的で、私は連れてこられた・・・」


ギン先生が言う。「初めの計画では、トレーとミラーがヒト、イヌ、ネコの3種のオスを3つの大陸からサンプルとして採取しに行ったのだが、最初に会ったヒト・・つまりあなたが我々が思うよりも、思考力、非認知能力に長けていると判断したので、急遽予定を変更して戻ってきたというわけです」

ワタルはふと疑問に思う「ジュンペイと、ネコはメスですが?」

「あぁそれなんですがね、イヌとネコは寿命が短く、その割に食事の回数も多いようなので、、今回のプロジェクトはヒト1種に限定することになったのですよ」ギン先生は答えます。

ワタルは艦内での事を思い出していた。この星の1日は我々の10日に相当することを。そういえば子供の頃にウサギを飼っていた。その時ペットショップの店員さんが言ってたよな。人間の1日はウサギだと10日くらいなんだよと。 なるほどそういう事か・・・妙に納得した。


「で、ジュンペイとネコはどうするのですか?」こんな時でも、大事な相棒の事を優先してしまう。

「安心してください。しばらくは、こちらで預かります。イヌ、ネコはこの星にはいないので、逃走してしまうと外来生物として処理しなければなりませんので。」トレーが答えた。


少し不満と不安が残ったが、この状況では相手に従うしかない。ワタルは、相棒たちにしばしの別れをする決心をした。「よろしくお願いします」と言ってトレーに引き渡した。ジュンペイとネコは下を向き、とぼとぼと主人のいう事に従った。言葉は通じなくても、気持ちは通じるものなのだ。


「で、ヒトであるあなたにどちらかを選んでいただきたい。このままペットとして我々と共に暮らし始めるか、それともヒトの検体採取に協力するか。」

少しは悩むと思っていたが、ワタルは「検体採取に協力します」即座に答えた。

「分かりました。では今後は、さらに詳しい情報の提供や採取時の同行などをしてください。情報提供はポロンに、採取同行時はトレーとしてもらいます。我々の文化発展のため、よろしくお願いしますよ」


ワタルは思ったのだ。自分の保身はもちろん第一だが、地球を思ってみると、環境破壊、人口爆発、更に食料難・・少しくらいヒトが減って地球を軽くしても良いのではと。

「こちらこそ」ワタルは返答した。

会談は終了し、一行はギン先生の部屋をあとにした。


「あっ、ポロンちょっと」ギン先生はポロンを再び自室に呼んだ。

「さっきのイヌとネコだが、エサ代も掛かるし、逃げると大変だから、君が家に持ち帰り、とっとと処分しておきなさい。そんな無駄食いさせる予算はないからね、ヒトには飼育方法が難しくて死んでしまったと言っておく。」ギン先生は無表情のまま伝えた。

「分かりました」ポロンは答え、部屋を出た。


「あー、私だ、これから大量のヒトが入荷するから、しっかり準備しておくように。頼みましたよ」

電話を切った時のギン先生の表情は、嬉しさを隠しきれない何とも言えない顔だった。

































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