異変
「あの惑星だ。地球というらしい。大きく陸が3つあって、あとは海で出来ている。とりあえず今回は、3つの大陸からそれぞれの種を採取すればOK」パイロット兼ハンターのトレーは余裕の表情だ。「楽勝だな」ハンターのミラーもうなずく。ワープを繰り返し、2日で到達する地球は近所のようなものだ。ちなみに3つの大陸とはアメリカ大陸、アジア大陸、アフリカ大陸だ。雑なようだが、知らない者からしたらこんなものだろう。
Z星からの侵入が間近に迫ろうとしているが、そんなことは微塵も知らず今日も世界は活動している。
地球を外側からマクロ的に見ると全く分からないと思うが、ミクロ的にみると様々な活動が見て取れる。
戦争している地域もあれば、ひっきりなしに大陸間を行き来する飛行機や船。そこだけ見れば、よく分からないが、それら全てに「ヒト」が関係しているとなると大変興味深いことだ。そして間もなく、トレーとミラーはそのことに気が付く。
梓ワタル 40歳 独身。有名大学を卒業したまでは良かったのだが、その後社会に上手くなじめず、現在バイト暮らし。特にこれと言った趣味や特技は無し。彼の名誉のためにあえて言うのならば、世間と迎合しない性格とでも言っておこう。友達もほとんどおらず、親しいと言えば、保護したメス犬の「ジュンペイ」、いつの間にか居ついていた猫の「ネコ」くらいか。そんな彼の仕事は週3回のバイトのみ。自分たちの食べる分だけ稼げばよいという。あとは、ジュンペイとネコと過ごす。不満はないどころか有り余る時間を背景に、心のどこかで、「幸福人生の完成だ。」くらいに思っていた。
今日も変わらずバイトから帰ると、ワタルは「ただいま。ジュンペイ。おやつだよ!」と声を掛ける。するとすぐさまジュンペイは小躍りするように近づき、しっぽを懸命に振る。再会の嬉しさなのか?おやつ目当てなのか?ネコもその後を追う。ワタルにしてみればどちらでもよい。帰ってきたときに迎えてくれる者がいるだけでも嬉しいのである。
週4休暇のワタルはジュンペイとの散歩が好きだ。もちろん後からネコもついてくる。今は時期ではないが、南北5キロに延びる桜の名所の堤がお気に入りの散歩コースだ。昔の武将がその堤を作ったようだが、詳しくは知らない。そこは桜以外の時期でも、菜の花や、アジサイ、向日葵など季節ごとに花が咲き、人が集まる憩いの場所である。今の時期は、曼珠沙華の最盛期だ。
そんな散歩コースをプラプラ歩いていると、ウィーンと何か扉が開くような音がした。何気なくその方向を振り向くワタルの目には信じられない光景が映った。
トレーとミラーが到着したのである。
宇宙人?!金属の円柱に手があり、3本の足で歩き回る謎の生き物。まさに知っている言葉で表すと宇宙人としか言いようがなかった。
本当に驚くと人は声すら出せなくなる。まさにそんな状態だった。しかし、犬であるジュンペイは違った、異形の者を見るや否や反応したのである。
驚いたのは、トレーとミラーも同じだった。いきなり艦から下りるや否や、いきなり威嚇されたのだから。「おいミラー、あれイヌじゃないか?」冷静を取り戻したトレーが言う。「おっ、ホントだ。早速かよ」ミラーがうなずく。「まず、この大陸での1種目捕獲だ。」トレーが言うと、ミラーはいとも簡単にジュンペイを連れ去った。
何が起きたのか、何をされたのか分からない、ただジュンペイだけがフッと消えたのだ。
そして声が聞こえた「あなたはヒトですか」
ワタルは、宇宙人に会うわ、ジュンペイは消えるわ、話しかけられるわで困惑を極めた。
しかし、愛するジュンペイを救うのが最優先だと腹を括った。




