表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

第39話 決めきれない場所。嵐の前触れ

 景斗総司令の部屋に入ってくる梨央と瑠華さん。たしか、景斗総司令は梨央だけを呼ぶようにと言ってたはずだ。


 だけど、なぜか瑠華さんも付いてきている。僕が怜音になぜ瑠華さんがいるのか聞くと、『ちょうど二人がいたから』と言った。

 

「それで、梨央と瑠華さんはなんで一緒に?」


「そうね……。彼女と中谷先生から聞いたのよ。永井のこと。本当はあの子好きじゃないけど、言い過ぎた私にも非があるわ」


「神代さん。ようやく私の意見を聞いてくれたの正直遅すぎると思ったよ。中谷先生のおかげで緊急性が出たっていうのもあるけどね」


 どうやらそういうことらしい。景斗総司令はまた無言で僕の血を抜く。これは、梨央と瑠華さん。そして怜音の分だ。


 本当のことを言うと、僕のこの血にどれだけ影響力があるか心配でならない。


 景斗総司令は、まず先に怜音へ打った。問題ないことを確認すると、今度は梨央に打つ。


 最後は瑠華さんだけになった。問題は彼女が素直に打ってくれるか。そこが不安になってしまう。


「景斗総司令。この黒い液体は何かしら?」


 やはり質問を飛ばしてくる。それに総司令は淡々と続ける。


「優人くんの血液だよ。今度最上位クラスのメンバーには、魔生物信教に関連する場所へ行ってもらう」


「魔生物信教ですって? そこに何があるのよ」


「おそらくだけど、そこに永井さんがいるはずなんだ。僕の予想だけどね」


 言い切った景斗総司令は続けて血液のことに関して説明した。


 僕の血液には血液型が存在しないこと。アナフィラキシーショックという拒絶反応を起こす危険性が極めて低いこと。


 そのことを後から説明を受けた梨央は、少し怖気づいた顔をしていた。問題はないのに……。


「これは潜入の任務ですよね?」


「梨央さんそうだよ。君たちには、魔生物信教に関連している施設に潜入してもらい、永井さんを救うのが目的だね」


「つまり、その前準備として、優人の血液を投与している……と」


「そういうこと」


 梨央は自分にされたことを気にしてなかったのか、余計に気になってる様子だった。


 対して慎重な瑠華さんは、漆黒の髪を手ぐしで梳かしながら、僕の方に近づいてくる。


「あなた。親の血液型ってわかるかしら?」


「え? し、知らないです……」


「そう。親が普通ならあなたも普通のはず。だけど血液型がないのは根本部分からおかしいわね……」


 瑠華さんはポケットから金色のヘアゴムを取り出した。それで、腰のあたりまで長い髪を後ろで結ぶ。


 首元がすっきりした瑠華さんを見るのは初めてかもしれない。僕はそんな彼女に目を奪われた。


「景斗総司令。さっさと終わらせていただけるかしら?」


「君も打つんだね」


「ええ。むしろ、これを打たないと永井を助けにいけない。間違ってるかしら?」


「間違いじゃないよ。じゃあ、腕見せて」


 景斗総司令は素早く瑠華さんに僕の血を投与した。瑠華さんの中に入っていく流れは非常にゆっくりだ。


 無事に終わると瑠華さんは髪をおろした。なんだか瑠華さんの美しさに見とれている自分がいる。


「総司令。これで私も問題ないのよね?」


「うん。大丈夫だよ」


「そう。では、今回の任務について詳しくお願いできるかしら?」


 瑠華さんがそういうと、僕の隣に座り込む。その動きに乗るように隼が近づいた。


「瑠華さん。顔色。悪い? 大丈夫? 瑠華さん。体調。よくない」


「あなた。私のことを思ってるつもり?」


「うん。レン。瑠華さん」


「あいよ」


 バレンが瑠華さんの治療にあたる。バレンは本当に万能というか、僕の知らない部分が多い。


 本人曰く150超えてるバレンの魔法知識量が気になって仕方なかった。


 治療を終えるとバレンがその場を離れる。ものの数分で終わっていた。


 ところどころ、隼に聞いていたことから、最善の治療法を教えてもらっていたのだろう。


 僕の後方から動かない怜音は『ボクに頼めばよかったのに』と、みんなに聞こえる声でぼやいた。


 隼はバレンと瑠華さんに懐いている。というよりも、僕の相手をしてくれたのはたったの数回だ。


「瑠華さん。元気なった。大丈夫。大丈夫」


「私がどうなってたのかは知らないけど。まあ、とりあえず助かったわ」


「どういたしまして。レン。さすが」


「どうも」


 バレンは満足そうに、その場を去る。景斗総司令は『そろそろ本題に入ろう』と言う。


「君たちには、コスメ『彩』の地下通路へ行ってもらう」


「コスメ彩って、たしか永井さんの実家だよね?」


 総司令の発言に梨央が反応する。


「そう。そこに、永井彩音さんが監禁されている可能性がある」


「なるほどね……。春日井。あなた彩の場所わかるかしら?」


「えーと……。たしか、桜ヶ咲オフィス街だったよね」


 梨央の回答に瑠華さんが頷く。そして。


「見世瀬。飛鷹。二人は行ったことあるんじゃない?」


「行きましたけど……。なんで知ってるんですか?」


「じゃ、種明かしするわよ。ミルキー! 出てらっしゃい」


 瑠華さんがミルキーと言うと、僕の背後から小さな生き物が出てきた。くりくりとした目に、まるまった尻尾。


 これは……。


「カメレオン?」


「そうよ。私の使い魔と言ってもただのペットだけど、カメレオンのミルキー。メスよ」


「か、可愛い……」


 僕はそのミルキーというカメレオンの背中を撫でた。舌を伸ばしたりひっこめたりしてものすごく嬉しそうだ。


 しばらくして気持ちがリラックスしたのか、ミルキーは姿を消す。


「ミルキーお疲れ様。実はと言うと、彼女は壁のすり抜けも得意なのよ。今回の潜入の手駒にピッタリじゃない?」


「そうですね……」


「これで、メンバーは揃った。早速作戦会議と言いたいところだけど……。今日はもう遅いわね……」


 誰も指名していないのにも関わらず、進行を始める瑠華さん。これに反論するような人はいなかった。


 僕は一人、自分の本当の役割について考え込んだ。リーダーはたしかに瑠華さんが適任だ。


 サポートには梨央が入ると安心できる。飛鷹は情報管理に一任させた方がいい。


 怜音とバレンはやはり前衛がいいかもしれない。隼の場合ならどんな場面でも対応できるだろう。


 じゃあ僕は……。僕はどうすればいい。


「瑠華さん。僕はどの立ち位置に?」


「今から決めるつもり? 早まるにもほどがあるわ。私と中谷先生、そして春日井。飛鷹は……その様子だとあなたも打ったみたいね」


「僕は早まってるというか……」


「迅速に助けたい気持ちはわからないわけじゃない。だけど、あなたの血液を打ったばかりの人が計四名。体調を万全にするのが先だわ」


 瑠華さんの指摘に、梨央も飛鷹。怜音まで頷いた。僕は頭のモヤモヤを抱えながら、帰っていくメンバーを見送る。


 取り残されたのは、僕とバレンそして隼の三人だけだった。隼はまた景斗総司令の後ろへ移動している。


 両肩の上に両手を乗せてもみもみする仕草。どうやら隼は総司令のマッサージをしているらしい。


「んじゃ。俺たちも戻るか……」


「それよりも。バレン。まだ訓練場開いてると思うから、一緒に訓練しない」


「ん? なんでだ?」


 僕だってもっと強くなりたい。僕の目に留まったのは景斗総司令の近くにある二本の木刀だった。


 それも、見た感じ普通の木刀じゃない。どんな強い衝撃にも耐えられそうな、金属質の輝きを持っている。


「剣技を極めたい。ってわけか……。面白いな。よし、俺が付き合ってやる」


「ありがとう」


 景斗総司令に木刀を借りていいか聞くと、借りるどころか、そのままもらっていいとのことだった。


 二人で訓練場に向かう。場内は誰もいなかった。ちょうど入浴前の訓練が終わったころらしい。


 僕とバレンは木刀を構える。思ったよりも重い刀は、なんとなく手に馴染んだ。


 僕たちは三戦ほど勝負した。結果は僕の惨敗。バレンもかなり身体の扱いに慣れたようだ。


 刀の片付けはお風呂に入ることができないバレンにお願いした。


 毎日入っているお風呂だけど、ここに入る前は数日に一度が普通。


 今ではしっかり綺麗にしないと落ち着かない。


 入浴を済ませ部屋に戻り布団へ潜ると、そのまま眠りについた。


 それは、僕が今の僕になる前の両親との思い出が詰まった夢。


 やがて悪夢に塗り替えられる前に、日付は10月2日に切り替わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
ついに潜入任務が本格化し、各キャラの立ち位置が動き出した今回…瑠華さんの主導力が印象的で、まさに“嵐の前の静けさ”を感じました。 そして優人の存在やその血に秘められた力、それを取り巻く人々の反応………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ