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第20話 第一部隊

 昨日の一件から一夜明け。僕と飛鷹は予定通り第一部隊の本部へとやってきた。今見て思うのは、街よりも広い空間。


 ここに来る方法は特殊で、迎えに来た麗華さんの亜空間経由だった。亜空間の中を通るのは、怜音の時以来。


 加えて、麗華さんの方が移動時間が短いというもので、一部の人が引き起こすという亜空間酔いもしないくらいの短さだった。


「麗華さんは、どれくらい空間魔法を?」


「そうですね……。ここに入った15年くらい前でしょうか……。私は総司令から教わりましたね」


「総司令がですか?」


 麗華さんは、少し曇った表情をしたまま、右手で顎を軽く掻く。どうやら突っ込んで欲しくない話らしい。


 それでも、麗華さんは一つ深呼吸をして、僕の方を見た。


「私は魔力はあったんですけど、魔法適性がなかったんです。どこの属性にも含まれない。属性魔法が使えない落ちこぼれでした」


「隊長なのに?」


「はい。そんな私を景斗総司令が誘ってくれたんです。『第一部隊に入って特訓してみない?』と」


 その言葉で似た話を思い出す。それは怜音だった。どうやらこの麗華さんも、景斗総司令に拾われた類らしい。


「景斗総司令はこの日本で数人しかいない、全属性を操れる人です。彼は私の本当の適正属性を片っ端から調べてくれました」


「でも……」


「はい。結局適正属性はわからないまま。そこで、総司令は私に空間魔法を教えてくれたんです。今では現代の空間魔法使いでトップクラスで……。ちょっと、恥ずかしいですね……」


 麗華さんはそんな事を言いながら顔を真っ赤に染める。そして、この第一部隊の本部は亜空間内に作られた施設とのこと。


 この空間を制御している人こそ、景斗総司令本人で常に魔力消費をしながら維持をしていると、麗華さんは説明してくれた。


 ――『景斗。なんかどっかで聞いたことのある名前なんだよなぁ。気のせいか?』


(蓮がそう思うなら気のせいじゃない?)


 ――『だといいんだけどな……。宮鳥(みやとり)景斗(けいと)……。顔見ないと思い出せねぇ……』


 蓮の話をもう少し聞いてあげたくなったが、今は第一部隊の本部説明だ。麗華さんは、僕たちは通路を抜け食堂に到着する。


 中央に大きな長テーブル。椅子の数も40近くある。麗華さんによれば、第一部隊に所属しているのは精鋭38人。


 僕と飛鷹が入ることになったことで、二席追加されたらしい。本当に一員となったんだと、実感が湧かないまま現実となってしまった。


「次に二人の部屋へ案内します。内装までは今準備中ですので見せられませんが、本日中にはご用意できるかと」


「ありがとうございます」


 それにしても、さっきから話してるのは僕と麗華さんだけだ。飛鷹は完全に萎縮してしまって、唇がプルプル震えている。


「書かなくちゃ……。早く書かなくちゃ……」


 彼に耳を傾けると聞こえてくる小言。何を書かないといけないのだろうか。とりあえず、放っておくことにした。


 麗華さんの案内で廊下に出ると、カラフルな扉がズラリと並んでいた。この扉の先一つ一つが個人部屋になっているようだ。


 そして、やってきたのは黄土色に青のラインが入った扉。ここが今度から僕が生活する部屋とのこと。


 こんな立派な扉に僕は本当に入っていいのか不安になった。今はここまでしか見せることができないようで、僕たちは次の場所へ向かう。


「第一部隊の本部って本当に広いですね……」


「そうですね……。関東地区第一部隊の本部は他の地区の本部とは違って、地上世界にないんですよ。だから、敷地関係なく増築できるのでしょう」


「なるほどです……」


 それにしても、一番驚きなのは総司令の魔力量だ。こんな広い空間を一人で管理しているのだから、尋常ではないほどの魔力を所有しているのだろう。


 やがて見えてくるのは、黄金の大扉。麗華さんが数回ノックすると、自動で開く。そこには、昨日写真で見た少年だった。


「朝比奈麗華です。入隊生をお連れしました」


「ありがとう。よく来たね。見世瀬(みよせ)優人(ゆうと)さん。飛鷹(ひだか)直哉(なおや)さん」


 年齢とは合わない黒髪。水色の澄んだ瞳。スっと椅子から立ち上がった彼は、僕よりも身長がある。


「初めまして、ここの総司令である宮鳥(みやとり)景斗(けいと)です。第一部隊の本部に来てみてどうかな?」


「そ、それはすごいです……」


 やっぱりこうなると思った。僕も飛鷹同様、言葉が少し引き気味になっている。こんなお偉いさんの前でなんて話せるわけがない。


「ぼ、ぼく……。ぼくも自分のお部屋が欲しいです……!」


「たしか、飛鷹君と僕は同じ部屋だったよね」


「う、うん……! でも、ぼくも一人部屋がいい……です!」


 飛鷹が頑張って言葉を絞り出している。今まで僕と同室だったから、本当にしたいことができなかったのかもしれなかった。


 しかし、そのできなかったことが何なのか。昨日の海鮮丼屋で彼は『しめ』という言葉だけ残して消えていった。


 きっとそこに答えがあるのだろう。僕はできるだけ問い詰めないようにしつつ、飛鷹と総司令の話を聞いた。


「そうか。飛鷹さんは一人部屋が欲しいんだね。わかった、今日中に準備を進めるよ」


「きょ、今日!? だだだ……。ここ……。景斗……総司令の魔力でできてる……って」


「大丈夫。あと50部屋以上管理できる魔力はあるからね」


 景斗総司令は余裕の表情でそう言った。この人一体どれだけの魔力を持っているのだろうか。そこが気になって仕方ない。


 僕は景斗総司令の部屋をくまなく見てみた。どこも金色の装飾で、目がチカチカする。きっとかなりのお金持ちなんだと思った。


「飛鷹さんは、部屋になにを置きたいのかな?」


「え、えーと……。本が1000冊入る本棚と……。パソコン台と……。低い机と……。ベッドが欲しいです……!」


「ふむふむ……。よし完成っと……」


 さすがに早すぎるけど、あっという間飛鷹の部屋が準備完了した。僕も内装を確認したら景斗総司令に丸投げしよう。


 部屋の位置を聞かれた飛鷹は、僕の部屋の隣がいいと答えた。正直とても嬉しい。僕も思い切って景斗総司令にお願いすることにした。


「景斗総司令。僕もいいですか?」


「うん。なんでも言って!」


「景斗総司令って、本当に133歳なんですか?」


 僕は自分の質問が失礼じゃないか、言った後に後悔した。他人から聞いた年齢を本人に聞くほど、失礼なことはないかもしれない。


 だけど、景斗総司令は顔色一つ変えずに『うん。僕は2032年生まれだからね』と、軽い口調で答えた。


 彼は隠し事を一切しない人だと、勝手に括ってみる。怜音よりもわかりやすい人だった。


「それにしても、優人さん大きくなったね。しばらく前まで赤ちゃんだったのに、無事で何より」


「僕が赤ちゃん? 本当にそれが僕だったんですか?」


「うん。間違いないよ。麗華さん。飛鷹さんを自室に案内してあげて、自分は優人さんと話があるから」


 景斗さんが麗華さんに指示すると、彼女は飛鷹を連れて外に出た。景斗総司令と二人。この緊張する空間は心臓に悪い。


「さて、優人さん。自分は優人さんのことを知ってるけど、さすがに君は覚えてないよね」


「は、はい……。顔を見るのも初めてです。でも、本当に僕だったんですか?」


「うん。面影はしっかり残ってるからね。ほらこの写真を見て」


 景斗総司令は宙に浮かせたスマホに一枚の写真を表示させる。そこには、まだ腰のすわっていない子供が写っていた。


「これが僕?」


「うん。君が小さい時の写真はこれ一枚だけどね。でも、本当に成長したね。副隊長に勝ったんだって?」


「は、はい……」


 一体彼はどこまで知っているのだろう。この話題は約20分ほど続き。僕は自室へ戻った。

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― 新着の感想 ―
えええっ?! ここにきて驚きの展開…✨ なんと総司令は優人の過去を知る人?! 謎が少しずつ明らかになっていく……!!
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