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なりたいもの

遭遇したゴブリンらしき存在。そのLvは15以上だった。


俺のレベルは5。レベルが10以上離れている相手には勝ち目がないという話だったはずだ。


「なあ、相手の情報はなかったんだろ?Lv15以上って判断した根拠はなんだ?」


「そうね。正直言ってデータが少なすぎるから、かなり最悪のケースの推測で出したものなんだけどね。一番は魔力よ。あれはシンの数倍は濃密だったからね。仮にシンがあれと同程度魔力が使えるとしたら、Lv15以上は確実って判断したのよ。あとは外観からだけど、肉体的にもそれなりに膂力があるものと推測できたわ。」


確かにあの魔力の濃度は自分に比べて明らかに濃かった。

あれを仮に自分が使えるのならこれまで相手してきた猛獣など余裕で倒せる気はする。


「魔力の濃度?量?が絶対的な強さの判断基準かどうかは現状わからないけどね。もしかしたら、知能が低くて戦闘してみたらたいして強くないって可能性もあるわよ」


その可能性もあり得なくはない。魔法、魔力というのは結局使い方だ。それなりの知能がなければ使いこなせないだろうから、持っている魔力量に対して案外簡単に倒せるかもしれない。


自分の知らない魔法を使ってきたり、無意識に本能的に使ってこられたら勝てない気はする。

それに魔力をまとって防御に使用するということが可能なら、それを突破して相手にダメージが与えられないのではないか。


「あの魔力が常時防御に使われていた場合、俺の攻撃で相手にダメージを与えられると思うか?」


「ちょっと待ってね、現時点のデータからシミュレーションしてみるから。」


そうして真面目そうな顔でおそらく脳内?で戦闘シミュレーションを操作しているのだろう。こうしていると有能そうな美少女に見える。所々でやや大げさに手を動かて何かを操作しているところは、本当にそんな動作が必要なのか怪しいが。以前からことあるごとに有能さをアピールしてきていたから、これもそれに延長のような気もする。


作業が終わったのだろう。やや自慢げにこちらを向いて、俺の反応を確かめているようなしぐさを一瞬して、やっぱりなと思う。


「そうね。仮にあなたと同程度の魔力操作が可能だとしたら、あなたの持っている刀では致命傷は与えられないかも。」


「ダメージは与えられそうなのか?」


「あの魔力を厚く張られていれば傷はつけられないわね。薄いところがあれば切れるだろうから傷つけられるとは思うわ。ただ、傷つけられなくても全ての衝撃を防げるわけじゃないから、切りつければ打撲は与えられると思うわよ。」


「この非常事態用のハンドガンなら?」


「そっちはおそらく有効ね。仮に貫通しなくてもかなりのエネルギーがあるわけだから、防げてもダメージがかなり入るはずよ」


「なるほど」


たしかに身体強化で魔力の膜で覆っても俺は相手の攻撃を無効化はできない。ヒグマの鋭い爪での攻撃を受ければ引き裂くことは可能でも攻撃自体の衝撃はほとんど防げなかった。何度吹っ飛ばされたことか。


そういうわけで戦闘訓練では相手の攻撃は、基本的には回避し、それが難しい場合は、刀を使用して受けたり、攻撃を逸らすことにしていた。可能ならカウンターも行う。


この世界の防御がどういうものかはまだわからないが、ただ体を覆う膜のようなものしかないとすれば、攻撃自体は全くダメージを与えられないということはないかもしれない。

仮にその膜を高質化できるような魔法があったとして、例えばフルプレートアーマーを着込んだようなものか。とすれば衝撃自体はそこまで防げない、だろう。


そう考えると武器は鈍器のようなもののほうが良かったかもしれない。

だが訓練を主に刀で行ってきたためほかの武器種はほとんど触っていなかった。


まあ、この刀、かなり頑丈な素材でできているらしく、そうそう折れることはないらしい。

折れないのならとりあえずは一番使い慣れている武器を使う方がいいか。


問題は刀でほとんどダメージを与えられなかった場合だ。そうなると銃での攻撃だが、これは正直かなり難しい。


最初に手渡された後、しばらくシミュレーション上で使ってみていたが、威力はあるだろうが反動が強すぎて、両手でどっしりと構えないとまともに的に当たらなかった。


片手撃ちはできなくはなかったが狙ってもかなり接近していないとおそらく当たらない。


そして止まっている的ではなく実践で猛獣相手に使用すると、移動している相手にあてるのはかなり厳しく、当てられたのは相手が直線的に攻撃してくるのを迎え撃つという時くらいだ。


ゴブリンの戦闘時の移動速度がわからないが、的としては小さく、初めての戦闘で格上かもしれない相手と対峙して、あのプレッシャーを前にして、まともに当てられるか、全く自信はない。


色々と考え、そして戦いを挑む方向で考えていた。


なぜなら俺は勇者として転生したらしいのだ。シエルが勇者が何を意味するのか知らないと言っていたが、普通勇者とは何らかの強大な存在を倒すために存在するというのがセオリーだろう。

チュートリアルの途中でサポートが終わっているというのは不安だが、勇者というのだから俺はそれなりに強い、と信じたい。たしかに最初は弱いとか、実は勇者候補というのが複数いて一人一人は実はそんなに期待されていないとか、ひのきのぼうしかもらえない程度の期待しかないとか、そういう可能性もある。


だが、ゴブリン相手に逃げ回って最初の街に行く、そんなの勇者と言えるだろうか、そんなものになりたいと俺は考えているのか。


そんなわけがない、記憶も目的も不明だが、それだけは確信があった。

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