狙われるアイスロンド集落
ある日、オーレス王国の王城ペリディウスでは、七大騎士が王の前に跪いていた。この日は、王に計画の進行状況を報告する日であった。その計画とは、元王国騎士の抹殺である。
「……第一騎士団長、報告せよ。」
謁見の間に王の声が響き渡る。その声には重みがあり、場の空気を一層張り詰めたものにした。この場所では、物音を立てることすら許されない。七大騎士たちは緊張に身を固くしながら報告を始める。
「ハッ……毒牙の騎士、戦技の騎士の抹殺が完了いたしました。しかしながら……凶刃の騎士を取り逃がしました。」
「二人か……ふん、下級の騎士を二人殺しただけか。堕ちたものだな、第一騎士団は。」
「申し訳ありません……この失態は、必ずや取り返してみせましょう。」
「もうよい。第一騎士団に期待した私が愚かであった。私自身に腹が立つ。この計画は第二騎士団に引き継がせることとする。第二騎士団長のみ、この場に残れ。…他の者は持ち場へ戻れ。」
王の言葉を聞き、各騎士団長は一礼して部屋を後にした。第一騎士団長は不満げに王を見上げ、そのまま背を向けて出て行った。謁見の間が一瞬の静寂に包まれる。残った第二騎士団長の前に、王がゆっくりと歩み寄った。第二騎士団長は緊張のあまり、言葉を失っていた。
「第二騎士団長。お前ならば、この任務を成功させられるな?」
「陛下……恐れながら申し上げます。引退したとはいえ、彼らは未だ力を有しております。第二騎士団のみでは、戦力が……」
「……つまり、お前は私の命令に歯向かうというのか。」
王の声音には明らかな苛立ちが混じっていた。第二騎士団長は血の気を失い、慌てて言葉を訂正する。この国で王に逆らって生き残った者などほとんどいない。歯向かった者の末路は、処刑か拷問のいずれかだ。
「も、申し訳ありません! すぐに、陛下のご期待に添えるよう騎士団を派遣いたします!!」
「……それでよい。……そして命令がある。アイスロンド集落を地図から消せ。」
「……は?」
この命令には、第二騎士団長もさすがに驚きを隠せなかった。一つの集落を“地図から消す”というのは、すなわち集落を滅ぼすという意味だ。つまり、そこに住む民を皆殺しにせよということである。
「恐れながら申し上げます。なぜ、アイスロンド集落を地図から消さねばならないのでしょうか。」
「……随分と主に逆らう犬だな。そうだな……理由を一つ挙げるなら、あの地に邪魔者がいるからだ。」
「邪魔者……と申しますと?」
「イステル・ローズブラッド。……いや、今はローズブラッドではないな。イステル。奴は消さねばならん。あそこまで弱らせはしたが、まだ危険な存在であることに変わりはない。人の身でありながら、この私に歯向かった愚か者だ。だが、私の手を煩わせたこともまた事実。消しておくに越したことはない。」
王の声はいつもと変わらぬ静けさを保っていた。しかし第二騎士団長には、その声音がどこかわずかに高くなっているように聞こえた。
◇◇◇
王城で起こっていることを何も知らないイステルは、今日も魔物の討伐に励んでいた。今日狙う魔物はロックゴーレムである。ロックゴーレムというのは岩でできた巨人のことで、人を襲うことで知られている。倒しても岩と魔石しか残らないため、冒険者であっても討伐する者は少ない。
そのため、ロックゴーレムによる被害が絶えないのである。
ロックゴーレムの討伐方法は主に二つある。一つ目は爆薬を使う方法だ。爆薬で魔石を覆う岩を破壊し、魔石を抜き取ることで討伐ができる。二つ目は魔法を使う方法だ。魔法で爆発を起こし、一つ目の方法と同様に討伐することが可能である。
イステルは魔法を使うことができないため、爆薬を用意していた。彼は物陰に身を潜め、右手には着火剤、左手にはダイナマイトを持っている。ロックゴーレムの重い足音が響く中、イステルは機をうかがっていた。
やがてロックゴーレムが後ろを向いて歩き始めた。イステルはこの好機を逃すまいと走り、ダイナマイトをロックゴーレムの胸に向かって投げつけた。轟音があたりに響き、ロックゴーレムの魔石が露わになる。イステルはその魔石を剣で十字に切り裂き、ロックゴーレムの動きを止めた。魔石は四つに割れ、もはや使い物にならない状態になっていた。
「討伐完了だな……魔石の残骸は持ち帰るか。」




