九番艦 「信じる理由」
<前回のあらすじ>
蒸気機関の設計図を渡し、海軍兵器開発局の指南を終えた碧は後をラーティスとカイルに任せた。第一造船工廠を出た碧とエノアは海軍の視察の為、目的地である第二泊地へ向かっていた。
第一造船工廠を出た碧とエノアは海軍と軍艦の視察の為に第二泊地へ向かっていた。
左を向けば豪華絢爛な赤レンガ建築、右を向けば海と空の境界線がはっきり見える。
「さっきの設計図凄いですね!あんな綺麗な設計図私初めて見ましたよ!」
石レンガの道を2人で歩きながらエノアは少しはしゃいだ声で言った。
「そう言って貰えると嬉しいよ。(大学で製図は死ぬほどやってきたからな…)」
「あれでもアオイ様が召喚されたのは昨日って聞いてるのですがあの設計図って…」
「あぁ…あれは昨日、会議が終わった後部屋で書いたものだよ」
「つまりあの量を半日以下で!?まさか魔法とか…」
「さっき火の装置で驚いた様に魔法の使い方なんて知らないからな。ただの手書きだよ」
「…よろしければ私が教えてあげましょうか!?魔法の使い方!軍神様なんですし、きっと凄い魔法使えますよ!」
エノアは目を輝かせて元気が溢れた声で言う。
「……エノアはどうして俺が軍神って事を信じられるんだ…?他のみんなも。召喚された場面も見てないのに…」
碧は思い悩んだ顔をして少しためらった声で言った。
「どうして…ですか。まず目と髪の色でしょうか。神話の軍神様は目と髪が黒色なんです。どっちも黒色ってとても珍しいんですよ」
「それに…貴方からは不思議な魔力を感じます。これは多分私だけにしか分かりませんけどね」
エノアは碧の顔を一瞬見るとまた前を向いて淡々と話し始めた。
「不思議な魔力…でもそれだけの情報でここまで信じられるものなのか?」
「…確かに信じるに足る情報は乏しいかもしれません。でも希望がそこにあるなら、私達人はそれに縋りたがるものなんですよ」
「実際貴方は不思議な魔法を見せてくれました。クルクル回る未知の装置に、見た事のない機械の設計図。私達はその様なモノに希望を勝手に見出しているんです。祖国を守れるかもしれないという皆が諦めていた希望を。それだけで信じる理由としては十分なんです」
エノアの目はどこか遠くを見ていた。何処を見ていたか分からない。しかし真正面ではない事は隣からでも分かる。
「……」
碧はエノアの言葉を聞くとまっすぐ前を向きながら黙り込んだ。
波の音がさっきよりもよく聞こえる。
「…あと、何より勘です!」
エノアの調子の良い勢いがある声が2人の間の沈黙を破り去る。
「勘か…そうかww」
碧はエノアの方を見ながら微笑み顔で笑った。
「あっ!馬鹿にしてますね!?当たるんですよ〜私の勘は!」
今までと同じ様なテンションのエノアを見て、碧は深く安心した。
2人は真上に昇る太陽の真下で一緒に笑いながら歩いて行った。
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