七番艦 「魔法に似て非なるモノ」
<前回のあらすじ>
碧はエノアに馬車内で皇国の重要な軍港『皇国四大軍港』について教えてもらう。レヴァンクレス皇国の事を早く知りたい碧は、エノアに色々な事を聞き、2人はとても楽しそうに話していた。そんな話をしていると2人は目的地『ストルハーヴァン軍港』に到着したのだった。
碧とエノアは馬車から降り、目の前に鎮座する門の前に立っていた。
上を見上げると2つの旗が風になびいて音を立てている。
「エノア、昨日から気になっていたのだが、あの旗は国旗で良いんだよな」
「そうですね。左がレヴァンクレス皇国の国旗『曙旗』、右が皇国海軍の軍旗『航海薄明旗』です」
「なるほど」
そんな話をしていると目の前が門が重々しい音を出しながら開く。
その奥から人影が一つ、こちらに向かってきた。
「アオイ様!お待ちしておりました!」
ラーティスの大きな声が港中に響いた。
「全員、準備ができております。どうぞこちらに」
碧とエノアはラーティスの後ろについていく。
「うおぉぉおお!スゲェぇぇぇぇ!!」
一歩一歩、歩くたび碧の目には楽園の様な光景が映る。石と赤レンガで作られた重厚な建物群、石を組み上げて作られたドックに木で作られたクレーン。港を守る堅牢な要塞に海に浮かぶ夢にまで見た木造の帆船。
「なんかここに入ってきてから雰囲気変わりましたね、アオイ様。さっきは冷静沈着って感じだったのに…」
エノアは少し困惑した顔で言う。
「あぁ、昨日も船の話をしたらこんな感じだったぞ。正直俺はこっちのアオイ様の方が好きだな」
ラーティスは明るい声で言った。
「つまり、アオイ様も軍港が大好きって事ですか!?やっぱそうなんですね!」
「アオイ様とエノアってなんか似てるよなぁ…」
ラーティスは小さい声で呟いた。
2人が話していると碧の目にまた新しいものが映る。
「ラーティス、アレが昨日言っていた大破した6隻の軍艦か」
一目見ただけで航行不能と分かる痛々しい船が雑に浮き砲台として浮かんでいた。
「はい。もうあそこまで壊れてしまったらどうしようもないので…」
「そうか…」
碧は残念そうな声でそう呟いた。
「さぁアオイ様、行きましょう。もう少しで第一造船工廠ですよ」
そんな話をしていると目の前にデカい建物が連なっているモノが見える。その左側には先ほど見た木造クレーンより大きなクレーンが大量に並べられた空ドックがこの位置からでもはっきり見えた。
碧はそんな壮観な光景にまた目を光らせる。
3人は一番手前の工廠に入る。そこには昨日、報告会議にも居たカイル陸軍兵器開発局長、それから大勢の人々が希望に溢れた顔で待っていた。
「「「アオイ様!これからよろしくお願いします!」」」
大勢の大きな声が広い建物の中に響く。
「あぁ…よろしく…」
碧はその熱意に押されながら答える。
「ってあれ、カイルって陸軍の兵器管轄じゃないのか?」
碧は不思議そうな顔で尋ねた。
「いやまぁそうなんですが、アオイ様が何をするのか気になりましてね。作った謎の装置も気になりますし」
「なるほど。というか昨日頼んでいたモノ、もう出来てるのか」
碧は思い出したかのように聞く。
「はい、出来てますよ。こちらです。私達にはこれが何なのか分かりませんが…」
「しっかり納期までに完成させてやりましたよ!」
カイルが指すその先には、確かに何なのかすら分からない物体が机の上に鎮座していた。
「アオイ様、これは何ですか?なんかの魔道具とか…?」
皆がこの珍妙で奇怪な物体を見つめている。
「これは『アイオロスの球』または『ヘロンの蒸気機関』と言って、今から教えるモノの説明にちょうど良いんだ」
「ラーティス、カイル、設計図に書いてあった物も準備してあるか?」
「はい、用意してますよ。火を発生させる装置と、真水ですよね。ここにあります」
「ありがとう」
碧はその2つを受け取ると、ある疑問が浮かび上がる。
「…この火を発生させる装置?ってどうやって火をつけるんだ?」
「これですか?これは魔導ランプと言ってですね…」
エノアはそう言いながら人差し指を差し出し、装置に向ける
「火よ…我が手に宿れ」
穏やかな優しい声で呟くと、指の先からマッチ程度の火が放たれた。
それを装置の点火部分に当てると装置はメラメラと燃え、その輝きを維持し始める。
「すごいな…これが魔法か…」
碧は不思議な微細な光を出しながら燃える装置をじっと見つめる。
「アオイ様、魔法知らないのですか?」
エノアは不思議そうに尋ねた。
「あぁ…、元の世界には魔法が無かったからな」
「へぇ、神々の世界には魔法が無いのですね」
ラーティスは妙に納得している顔で言った。
「ま、まぁ…そうだな…」
「というかアオイ様。部屋にこれと同じ様な魔導ランタンがあったと思いますが…」
「あぁ、あれやっぱ魔道具だったのか」
「という事はまさか…昨日はずっと真っ暗だったという事…ですか…?」
「いや、昨日はライターがあったからそれで………」
……
「…?アオイ様?どうされましたか?」
エノアは話してる途中で放心状態になった碧を呼んだ。
「あ、ごめん。少しボーっとしてた。それよりも実験を始めようか」
「まずはこの下の半円球に真水を入れる。そしたらその下に熱源を置いてしばらく待つ。すると…」
「「プシュッ!プシュッ!」」
音を立てながら上の球体が両端の管から何かを噴射し、回り始めた。とてもシュールなこの光景を皆が目を点にして見つめている。
「おぉ…すごい…」「これは魔法なのか…?」
そんな言葉が四方八方から聞こえてきた。
「これが俺が一つ目に教える【魔法に似て非なるモノ 『蒸気機関』 】だ!」
誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。




