十六番艦 「魔天脈」
軍事魔法技術研究所がある魔法都市『ペテルトリンネ』へ急行馬車で向かっていたエノアと碧。馬車内ではエノアが甘い幸せな時間を過ごしていたりと色々あったが、そこから6時間程度経ちついにペテルトリンネに着いたのだった。
「あぁー着いたぁー!ごめんエノア、途中で寝ちゃって」
碧は馬車から降りると勢いよく上に手を伸ばす。くるりと後ろを向き、今梯子を降りようとしているエノアに向けて言葉をかけた。
「い…いえ…大丈夫です…」
「むしろごちそうさまでしたというか…」
エノアは赤くなった顔を下に向けながらボソッと声を出した。
「ん?なんか言った?」
「いえ何も!さぁ行きましょうアオイ様!研究所はこっちですよ!」
エノアは先を指差すと、碧の前へ走り出す。
「あ…あぁ…うん、分かった…にしても本当に自然に囲まれた大都市って感じだなぁ。アマテリアやストルハーヴァンとは雰囲気が全く違う…」
碧とエノアは話しながら自然に包まれた風景の中を進む。
「ペテルトリンネはユーマル川上流付近の魔天脈を守るために建物の殆どが木材で建設されてますからね。アマテリアやストルハーヴァンの様なレンガ造りの建物だらけだと魔天脈から放出される魔気が弱まっちゃうんですよ」
「えっそうなのか!?そんな繊細なのか魔天脈って…」
「魔天脈はいわば世界が認める純なる自然の具現化です。元ある自然の形を崩しすぎると魔天脈はその力を失っちゃうんです」
「つまり…元ある上流付近の自然を残さないといけない訳か。世界中全ての魔天脈もそうなの?」
「原則としてそうですが…その自然の形によりますね…。例えば山という自然が魔天脈の場合、その山という自然を構成してるのは土や粘土鉱石、あとは木などなので開発してもそこまでの影響はありません」
「湖、川という自然が魔天脈の場合、水を塞き止めたり埋めたりするのは影響がありますが、その周辺を開発しても影響は少ないらしいですね」
「へぇー…なんか思ったより自然の定義が曖昧な気がするけど。ってアレでもペテルトリンネの魔天脈はユーマル川上流付近なんだろ?川が魔天脈なら周辺を開発しても問題ないんじゃないか?」
「アオイ様、ペテルトリンネの魔天脈はユーマル川上流”付近”なんですよ。この場合、魔天脈はユーマル川上流とその付近であるペテル森林の一部になります」
【ペテルトリンネ魔天脈範囲内(赤)ペテル森林(黒)】
「なるほど。複合される場合もあるって事か。確かに…森が魔天脈だとかなり開発が難しい気がする…」
「そうなんですよ。使えるのは土と木材が主になっちゃいますし、森林という体裁を保つため木も都市内に大量に植えなければなりません。でも魔天脈は魔法研究者や魔道具発明家が喉から手が出るほど欲する土地ですから。何とか自然を残して開拓して、石レンガ造りの様な木造建築物を乱立させてこの魔法都市『ペテルトリンネ』が出来上がったという訳です!」
「本当に皇国にとって大切な都市なんだな」
「…なぁエノア、さっきから気になってたんだけど…通行人からかなり見られてる気がする…」
横を見なくても分かる人々の視線に碧は少し萎縮する。
「あーまぁ私達軍服ですし、アオイ様は仮で海軍将官の制服で私は海軍佐官の制服なので目立ちますよね」
「前も言ったけど俺に海軍将官の軍服なんて勿体ないし、元々着てた服で良いんだけど…」
「そんな事ありません!むしろもっと階級の高い軍服にするべきですよ!でも残念な事に大将より上の階級は”現状”存在しないので”今は”仮ですけどね」
エノアは一部の言葉を強く発音しながら言った。
「なんでそこ強調するの…」
「実は今、皇帝陛下がアオイ様の軍部内での階級について考えてるらしいんですよ。詳しくは分かりませんが…っとそんな話をしてたら着きましたね」
「おぉ…マジか…これが…」
「そうです!これが『大皇国魔導総合研究所』です!」
そこには巨大なビルが鎮座している。石やレンガ、粘土が使えないからこそ出来た木材の巨大建築物はもはや一種の前衛建築の様だ。
誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。




