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十三番艦 「問題」

碧がレヴァンクレス皇国に召喚されて1週間が過ぎた。それぞれの人々が残り1年というタイムリミットに追われながら奮闘する皇国で碧も皆と協力しながら作業を進めていた。優しく頼りになる仲間に支えられながら碧は日々を過ごす。

俺、波城(なみしろ) (あおい)がレヴァンクレス皇国に召喚されて1週間が経った。午前はこの世界の歴史情勢の勉強や魔法の勉強、午後は第一造船工廠に足を運び蒸気機関の製作を主導している。今のところ不自由は無いが俺は一つの課題に直面していた…


「火よ…我が手に宿れ」

(あおい)は人差し指を立て、目を瞑り、静かにそう言う。しかし何も起きない…火の粉すらあがらない。一生懸命祈る(あおい)の姿をエノアはじっと見つめる。


「ダメだ…」

(あおい)は諦めた口調でそう言った。


「今日もダメでしたか…一体どうして…詠唱も術式も完璧なはず…」

エノアは思いつめた声でうつむきながら言う。


「すまないエノア、今日も出来なくて…」


「いえいえ!アオイ様は悪くありません!私の教え方が悪いのです!」

エノアは慌てながら言った。


「いや、エノアの教え方は超分かりやすいよ。出来ないのは…俺のせいだ」


「アオイ様……」


…生きとし生けるもの全てが魔法を使える世界で、俺は…魔法が使えなかった。

この世界では基本の初級魔法なら杖無しで行使出来るが、上級の魔法になると杖が無いと行使出来ない。

あれから魔法の特訓をしているが、俺は杖を使わない初級魔法すら発動出来なかった。エノアが言うには俺の魔力は他の人の魔力とは少し違うらしくそれが影響しているのではないかと言う。俺は今日もなんも成果も上げれないまま、部屋を後にした。


「アオイ様!元気を出して下さい!アオイ様にも魔力があるのは感じます。きっと練習すれば使えるようになりますよ!」

「そ…それに魔法が使えなくてもアオイ様にはその叡智があります!なので…なのでそう落ち込まないでください…」


「ありがとう、励まそうとしてくれて。俺は大丈夫だよ」

(あおい)は微笑み笑顔でそう言った。


それから数時間が経ち、午後。俺、ラーティス、カイル、その他兵器開発局の重鎮が一つの机を囲んでいた。


「集まったな。ではこれより第一回陸海共同兵器開発会議を始める。現状、どれくらい作業が進んでいるのか確認したい。それじゃ初めにラーティス総局長、報告をお願いします」


「はい。海軍兵器開発局は昨日、陸軍兵器開発局と共同で実験的に『蒸気往復動機関(レシプロ機関)』を正常に動作させる事に成功しました」

挿絵(By みてみん)

蒸気往復動機関(レシプロ機関)』の機構図


「しかしまだ実験段階であり、切削(せっさく)をする為の旋盤としての運用はまだ時間が掛かりそうです」


「報告ありがとう。しかし昨日は本当に感動した。たった1週間でここまで出来るとは予想外だった。この調子で頼む」

「次にカイル総局長、報告をお願いします」


「はい。我々、陸軍兵器開発局は簡単な金属部品の量産を開始しています。現在順調に作業が進められており、蒸気往復動機関(レシプロ機関)が正式に完成した場合、旋盤の量産化までかなり早く取り掛かれるでしょう」


「ありがとう。陛下が陸軍の方達も動員してくれて本当に助かった。遠くで作業を進める陸軍兵器開発局の皆にも礼を言っておいてほしい」


「招致しました。アオイ様」


「それで次がこの会議が開かれた一番の理由なんだが…」

そう言うと(あおい)は机の上の紙の束を手に取った。

「昨日、海軍軍需統括部から提出された『燃料資源不足に伴う石炭採掘の実行困難性についての報告』についてロイ海軍軍需統括長、説明をお願いしたい」

(あおい)がそう言うと一人の男が立ち上がった。


「はい。改めましてロイ・スレイン海軍軍需統括長であります。報告書で上げた通り、現状では船舶に使う為の燃料…いえ、金属切削に使う為の旋盤の燃料すら十分に供給出来ない可能性があります」

ロイがそう言うと会議室内はざわめき声で満たされる。皆が報告書を手に取り、文章をじっと見つめている。

「まずアオイ様が提案する蒸気機関という機械構造には大量の可燃性物質が必要となります。石炭自体は皇国本土にも現存しますが、今まで大量の燃料を必要としていなかった為、採掘環境が全く整っていません。一応小規模な採掘施設は魔道具製作の材料の為に稼働していますが…今から燃料に使う程の石炭の採掘環境を整えようとするとかなりの時間と費用が掛かります」


「想定される1年後の戦争までに間に合わないと…」

(あおい)は深く考え込んで言った。


「はい。その為、アオイ様が提案する石炭を燃料とした蒸気機関の構想はかなり厳しいと具申致します」


「なるほど…しかし困った事になったな…」


「すみません。意見よろしいでしょうか」

(あおい)が思い悩んでいるとカイルが手を上げ、名乗りを上げた。

「燃料は木材でも良いのでは無いですか?動作実験では木材を使いましたし、石炭に拘らなくても」


「いや、切削用の旋盤ならそれで良いんだが…船舶用だと炎の温度は最低でも1000°Cは必要だ。積載量の事も考えると木材、木炭では効率が悪い」


「なるほど。理解しました。しかし石炭に変わる燃料ですか…」


「あの、これは私個人の意見になるのですが」

ロイは少し躊躇いながら手を挙げた。


「何か方法があるのか…?」


「はい。まだ出来るかは確認していませんが魔道具を使った燃焼炉構想はどうでしょうか。つまり魔力を燃料として使い炎を燃やし、蒸気往復動機関(レシプロ機関)を稼働させる方法です」


「そ…そんな事が出来るのか!?最低でも1000°C程の炎は必要だが…」

(あおい)は驚いた声で言った。


「可能性は十分あります。皇都の最終廃棄物処理には巨大な魔導炉が使われていますし。しかし実際に可能かは軍事魔法技術研究所の方に確認してからでないと…」


「なるほど。でも石炭よりかは現実的…という事か」


「はい。どうでしょうか…」

ロイは強張った顔で言う。


「俺はロイ軍需統括長の提案に賭けてみたいと思うが…この案に賛成の人は手を上げてくれ」

(あおい)は手を上げながら皆に言うと、会議室にいる全員が手を上げた。

「全会一致だな。ロイ軍需統括長、この会議の後軍事魔法技術研究所に確認をお願いしたい。何か分かったら俺の方に通信を入れてほしい」


「分かりました。お任せを」


「それで次はパッキンの代用品についてなんだが・・・」


それからも会議は暫く続いた。各それぞれが意見を出し合うその場は活気と熱意で溢れていた。



誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。

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