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十一番艦 「模擬戦と魔法」

<前回のあらすじ>

海軍の視察をする為に第二泊地へ着いた碧とエノアはコンラート海軍大将と出会う。模擬戦をこれから行うという事を聞いて興奮する碧が見たのは憧れていた戦列艦と摩訶不思議な魔法であった。

アマテリア級艦隊戦列艦が出港すると続々と停泊している艦達も進み始めた。(あおい)は次々と出港する優雅な艦船を眺めている。


「それでは移動しましょうか。ここからでは模擬戦の様子が見えませんから。模擬戦の詳細は歩きながら致しましょう」

コンラートは艦に見惚れる(あおい)にそう言うと3人は桟橋の先へ歩き出した。


「模擬戦の内容は至ってシンプルです。攻撃側の艦隊が守備側の艦隊へ攻撃します。攻撃側が一回でも攻撃を相手船体に与えたら攻撃側の勝利、守備側が10分の制限時間まで無傷ならば守備側の勝利となります。攻撃側3隻、守備側3隻で別れ、攻撃側は赤色の旗、守備側は青色の旗が掲げられています」


「確かに分かりやすいけどそれって守備側が圧倒的に不利じゃないですか?しかも実際に攻撃するってかなり危険な様な…」


「大丈夫です。艦隊決戦しかも10分で相手船体に攻撃を当てる事は難しいですしバランスはとれています」


「いやでも…水兵に危険が及ぶんじゃ…」


「もし怪我をしても魔法で直せばよいのです。大丈夫です。艦隊の近くには衛生魔導兵を乗せた船も待機していますから」


「そ…そうか…」

(あおい)はコンラートの言葉に戸惑いつつそう言った。


3人が桟橋の先まで着くとコンラートは青色の小旗を天高く揚げた。合図を受け取った艦隊から少し離れた船もそれを艦隊の方に伝える為に青色の小籏を揚げる。伝言ゲームの様に合図を送りあうと、最後は桟橋の方に小籏を揚げ返した。こちらも旗を揚げる。美しい青色が風になびく。


「「「パッパラッパラー パラッパッパラー パ パパパパッパ――」」」

戦いの開始を知らせる音が軍港に轟き渡り、ラッパもまた勇ましい。


「ついに始まるんですね」

(あおい)は緊張と高揚を押し殺しながらそう言った。


「アオイ様、見ていてください。これがこの世界の海戦です」

コンラートがそう言った瞬間、攻撃側の全ての戦列艦が舷側砲(げんそくほう)から火球を斉射(せいしゃ)した。斜線には3隻の守備側艦、被弾は必然だった。


「ッ危ない!!」

その瞬間、守備側艦隊の前に光の半球が現れた。目を奪われる様な美しい光に約113の火球の弾幕が当たると艦に到達する前に派手に爆散した。”バーンッ”と耳を打撃する様な音が鳴り響くその光景を(あおい)はボーっと見つめる。


「…なんだこれ…まるで花火みたいだ…」

(あおい)は静かな声でそう言った。もくもくと上がる爆煙から逃げ出すように守備側艦隊は動き出す。それを逃さず攻撃艦隊も移動した。


「あの光の半球は何なんだ?」

いまだ形を維持する光の半球を指差して(あおい)は興奮を出来るだけ抑えた声で言う。


「それは私が説明します。あれは『防護結界』という魔法です。あの片舷(かたげん)に居る人たちが見えますか?」

エノアは守備側艦隊の方を指差して言った。


「あぁ、見えるな」


「あの魔導兵たちがあの結界を維持しています。魔力そのものを具現化して魔力の壁を形成し、その壁に当たった魔法は『魔符(マジックコード)元素(エレメント)』つまりバランスが不安定となり消滅します。しかしその性質上、魔法攻撃だけに有効で物理攻撃は無効化出来ません。ここら辺は少々難しい話になるので詳細な説明はまた今度お話ししますね」


「物理攻撃は無効化出来ない…ならあの火球も魔法なのか」


「はい。あの火球は舷側砲(げんそくほう)の『術式刻印型魔導砲』と呼ばれる魔道具から発射されています。今は火炎魔法が刻印されています」


(なるほど…ここまで聞いても知らない言葉がいっぱいだな…ってアレ…?)

(あおい)は少し考え込むと、ある一つ当然の疑問が浮かび上がった。


「魔法が無力化されるなら魔法を使わなければ良いんじゃないか?火薬を使った大砲とか」


「火薬…?アオイ様、それは何ですか?」

エノアはキョトンとした顔で言った。コンラートも同様その様なモノは知らないと言いたげな顔をして見つめている。

「魔法を使わずに敵艦を遠距離から破壊する方法は存在しません。一応、衝角(しょうかく)での体当たりなどはありますが…」


「そうか…いや、知らないなら良いんだ。今は忘れてくれ」

(あおい)は静かにそう言った。爆発音が途切れる事なく響く。


「そ…そうですか…分かりました」


……

「「「パッパラッパラー パラッパッパラー パ パパパパッパ――」」」

10分が経ち、模擬戦終了のラッパが鳴り響く。勝負は攻撃を1回も当てられずに守備側艦隊の勝利で幕を閉じた。


(なるほど…いわば海上の魔法対決と言っても良い代物だな。この世界の海戦において敵艦に攻撃を命中させるという事の難しさを実感させられる…でも、これならいける…!)

(あおい)は少し笑うと、心の中でガッツポーズをした。

「コンラート大将、今日はありがとうございました。出来ればこの国の船についての資料が欲しいのですが…」


「分かりました。後に部下に持ってこさせます。ところでアオイ様、この後はどうなされますか?」


「自由が許されるなら第一造船工廠に戻ってラーティス達、海軍兵器開発局の手伝いに行きたいと思います。俺が頼んだ事があるので」


「分かりました。それではアオイ様、また今度お会いしましょう。貴方様の活躍、心より楽しみにしております」

コンラートと分かれると(あおい)とエノアはまた第一造船工廠の方へ歩いて行く。その時には太陽の光は斜めから差していた。 



誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなど思ったら是非コメントをお願いします。

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