一番艦 「抜錨(ばつびょう)」
「ねぇ、碧?碧は将来何になりたい?」
俺はふと子供の頃母さんに聞かれた言葉を思い出した。
俺は…いつもの様にこう答えたんだっけ。
『自由な船を造りたい!』
それが子供の頃の口癖だった。この言葉を言わなくなったのはいつくらいだったか。そもそもどうしてこんな事言ってたんだっけ。
そんな事を考えながら俺は大学内を歩いていた。今思えば無理な事は十二分にわかる。必要な船を必要な形で必要な数だけ設計する。自分が思い描く船なんて造れない。それが造船設計士、船を造る俺の夢だ。
だがまだ諦めている訳じゃない。俺は大学で造船学を学んでいる。自らの夢に近づくために…
そういえば船の船長とか、軍艦の艦長にもなりたいとか思ってたっけ…
「いや…無理だなw」
俺は苦笑しながら心の声を漏らした。
そんなことを考えている間に図書館についた。今日は借りていた本を返す日だ。「造船設計の歴史」「船の動力の歴史」そして「軍艦の歴史」「艦隊編成と海戦ガイド」これらに関する本だけで10冊は軽く超えている。お気に入りのショルダーバッグから本を取り出し、カウンターに持っていく。
「こんな船馬鹿、世界中…いや、どんな世界にだって居ないだろうな」
何百回もやってきた本の返却中、俺は少し自慢げに、そして虚しそうに呟いた。
本の返却が終わった俺は、本が無くなって軽いはずの身体を重そうにとぼとぼと歩き、一つの本棚の前に立った。ほとんど見るものがない海洋本コーナー、それをのんびり眺めていた。
4年足らずで完読した本達が一面棚に鎮座している。軍港に停泊している軍艦群に負けない壮観さだ。
「ん…?なんだこの本?」
中央に見慣れない本がある。俺は好奇心でその本を手に取った。
「かなり古い本だな。中世あたりに作成されたような…表紙の絵は…海図か?文字っぽいものも書かれてる」
不思議に思いながら高価そうな革製の表紙をめくる。
その瞬間、碧の下半身は下からのまばゆい光に包まれた。
「うわ!?」
碧はびっくりして手に持っていた本とショルダーバックを床に落とした。下に落ちた本の適当に開いたページが碧の目に映る。
「これは…地図か…?島のようなものがあるが…どこの…いやどの世界の地図だ?」
碧がそう言うと光がさらに強くなり体全体を包み込んだ。
しばらくして光が消えるとそこにはショルダーバックだけがポツンと置かれていた。
ここまで読んでくれた方ありがとうございます。私は小説を書くのは初めてなので文章に至らない所があるかもしれません。もしよろしければ変な箇所を指摘してくださると幸いです。
本当に思いつきで書き始めた作品ですが最後まで書けるように頑張りたいと思います。よろしければ応援よろしくお願いします