とある保守政党の、とある政治家の話
さて、どこまで書いていいものだろうか?
キーボードに向かって何時間考えても答えが出ない。言葉を打ち込んで、ためらい、書き直す。
そんなことをずっと繰り返している。
私が話したいのは、ある日本の政治家の話だ。
名前をぼかすにしても、書いてある内容で誰の話なのかはバレバレであるし、非常に評価がブレる人物でもある。人によっては極端な反応を示す人物でもあるため、下手な書き方をすると抗議が殺到しかねない。
とりあえずここでは、名前をS氏としておこう。保守政党の政治家である。
前エピソードでB氏から派生したコネで、私のところまで話を聞きに来た人間の一人でもある。
続々と芸能人や政治家が現れて、面喰っていた時期に、私はS氏と出会った。
私の意見を聞きに来たらしいのだけれど、何を期待していたのかは知らない。
私は氏の顔を見てすぐに、気が付いたことを口にした。
「腸に持病を抱えていらっしゃいますね?」
そのように尋ねると、S氏は驚いていた。持病があって健康に不安があるという情報は、政治家にとってしばしば不利に働く。だから氏は、自分の持病をごく親しい人間以外には秘密にしていた。
それを、私は氏の顔を見ただけで見破ったのだ。
これが縁になったのかどうかは不明だが、S氏とは何度かお会いして話をすることになった。
恐らく、日本にとって一番役に立ったのは2013年の一件であろう。
当時のS氏は政権を奪取したばかりで、政策に役立つ情報を必要としていた。
私は自分の知っている情報を、日本政府に伝える必要性を認めていた。
利害が一致したのだ。
呼ばれて赴いた先で、私がS氏に伝えた情報は以下の通りである。
1.2016年のアメリカ大統領選挙は、実業家のドナルド・トランプが勝利すること
これは、2002年に米民主党の議員たちと話をしたときに判明した情報である。
細かい説明はまた別のエピソードで話すことになるだろう。
2.2020年前後に、世界規模の疫病のパンデミックが起きること
いうまでもないが、コロナのことである。
なんだかんだと批判はあるものの、2024年現在にいたるまで、日本は諸外国に比べて上手にコロナに対処した国である。私の情報がどれほど活用されたのかは不明だが、活用されたと仮定すれば、日本はパンデミックが起きるまでに6年の準備期間があったわけだ。
3.ロシアはウクライナを侵略する。日本にとってはインフレの懸念が強いこと
これを知ったのは、やはり2002年のことである。ここでは経緯の詳細を話さない。
ロシアもウクライナも小麦の重要な輸出国であり、食料の価格に対する影響が大きい。これは日本にも波及するはずである。
そして4つ目。
4つ目の情報は、私にとって致命傷となった。
4.暗殺に注意せよ
時期は2020年以降の大きな選挙のある年。
場所は関西地方のどこかの県。
選挙の応援演説に赴いたときに、銃を持った男に襲われる。
銃は……これは散弾銃? いや、ガムテープみたいなものがあるから、自作の銃か。多分、テープで束ねた鉄パイプを銃身にして弾を込めたものだろう。犯人は……元自衛隊員。左翼団体の構成員などではない。なんらかの宗教団体に関係している……
ここまで話したところで、S氏は怒って席を立ってしまった。
「いくらなんでも、そんなに詳しくわかるもんか! 俺を馬鹿にしているのか!」
こんな捨て台詞を残して立ち去った。そして、私とS氏の関係は終わった。
1~3の話はすべて的中した。
4つ目については……勘のいい方は、S氏が誰で、どうなったのかに気が付いただろう。
考えれば考えるほど、その結末の無残に天を仰ぐしかない。
不吉な出来事の予言をすると、敵対的になる人は多い。私が人の不幸を望んでいるという解釈をされてしまうのだ。
挙げ句に、私の予言を否定すれば、予言された悲劇も起きないなどという安易な結論に飛びつく人もいる。
そんなわけないのである。
つまるところ私の能力は「天気予報」のように、これから未来に起きることを指摘するに過ぎない。台風の到来を告げた気象予報士を否定したって、台風が消えてなくなったりはしないだろう。それと同じことだ。
私の話を聞いてくれるけれど、肝心なところで信じ切ることができずに破滅していく人というのを、私は何人か知っている。S氏はその一人となってしまった。
ああすれば……こうすれば……と、さまざまな、あり得たかもしれない可能性が頭に浮かぶ。
だが、最初から私に他の選択肢などなかっただろう。
最初に書いた通り、私は普通の人間にはわからないことがわかる。
この能力は、天からの授かりものだと信じている。
だから私は予言について「決して」嘘をつかない。愚直であることに徹する。
吉兆凶兆関係なく。