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二次創作をめぐる仁義無き戦い その後

(前回より続く)

 話はE氏の発言の直後まで戻る。

 このとき既に、私に打てる手段は無くなった。というか、あまりにも想定外のことが次々に起きたので、さっさと撤退したい気分だった。

 私のライターとしての面目は丸つぶれである。


 すべての努力が徒労に終わって肩を落としていると、そこにコミックマーケット準備会の岩田次夫氏(故人)と、数人の準備会メンバーと思われる人々が現れた。

 岩田氏とは、かつて「イワエモン」と呼ばれていた、あの人物だ。

 私は岩田氏に事態を説明した。経験豊富であろうこの人なら事態を収拾してくれるかもしれない。そう思ったからだ。

 特に、E氏の発言について解説すると、岩田氏の周囲にいた準備会のメンバーが舌打ちをして「あいつならやりかねない!」と言った。どうもE氏は過去にも何かやらかしていたようだ。私はその詳細を知らないが。

 岩田氏は最後まで、私の話を遮ったり否定したりせずに話を聞いてくれた。これは素直に、立派な態度であったと思う。


 ところでE氏であるが、岩田氏が現れても態度はまったく変わらず、ヘラヘラと笑いながら「これやるよ」といって私に何かを差し出してきた。

 見ると、それは青封筒だった。コミケのサークル参加には抽選が付き物だが、それを優先にしてくれる特殊な封筒である。

 私は憤然(ふんぜん)として、それを突き返した。

 どういう意図でE氏が青封筒を差し出したのかは不明である。

 私を黙らせたかったのだろうか。そもそも私はサークル参加者ではなかったので、どのみち、受け取っても利用価値はなかった。


 一方、最初の方に登場したA氏であるが、この事件以降、私に粘着するようになった。

「お前が何か作品を発表するまで、お前の言い分は聞かない!」とか言っていたけど、彼は私の話を何だと思っていたのだろうか。

 私が現実に言ったことは、要約すると「S社の社員がこう言っていた」という、ただそれだけの話であり、言い分も何もない。

 結局彼は、自分がS社を刺激したことで、他の同人作家が危険にさらされることを最後まで認識しなかった。というか、その説明を試みると話を遮って、早口で「同人誌を描け!」などと繰り返すばかりで、会話が成立しなかった。

 世の中には自分と価値観の違う人間がいる。

 しかし、会話が成立しないレベルで違っていたのでは、交渉も成り立たない。


 けっきょく唯一まともに私の話を聞いてくれたのは岩田氏だけだった。

 私は氏に、今後の対応をお願いした。S社が実際に動く前に、同人作家を守るために何らかの対策をしなければならないと。

 その後、氏が実際に何をしたのかは、私には知る由もない。

 何か対策を立てたのかもしれないし、何もしなかったのかもしれない。何より氏は2004年に亡くなられたので、仮にどんな対策を立てたとしても、間に合わなかっただろう。


 これより後に、私が同人作家やプロの漫画家に遭遇することは何度もあった。

 そのたびに本件について話をして、現在の二次創作が抱えている問題について提起したが、それが何か成果につながったのか、それともまったくの無駄であったのか。


 それは、もはや確認する手段がない。


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