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日本の政治家というもの

 もうすぐ選挙だ。

 どの候補、どの政党に票を入れるかという話はここでは言わない。

 ただ、私がこの目で見た、この国の政治というものの現実について、話をしたいと思う。


 私にも若い時代はあり、それなりに理想を持っていた。そしてこれまでに話してきた異様な幸運のおかげで、政治家に会い、自分の使命らしきものを自覚するようになったときには、少し興奮してもいた。

 権力と私の力が結び付けば、不可能を可能にすることだってできる。そう思ったから。


 だが今は、保守派にも反体制派(左翼)にも、なんの希望も抱いていない。政治そのものに幻滅している。


 もう10年以上前のことだが、ある保守派の政治家からこんな質問をされたことがある。

「どうして消費税はこんなにも評判が悪いのでしょう?」


 どうしてって……当たり前ではないか。

 そもそも消費税は80年代末頃のインフレを前提とした税制であり、デフレが明白になっているのに税率を上げ続けている状況が異常であること。

 税金を上げるなら、賃金の上昇率を上回ってはいけないのに、90年代から2010年代にかけてほとんど賃金は上がらず、税率ばかりが上がっていること。

 そもそも税率は景気やインフレ率や失業率を見ながら上げたり下げたりするものなのに、消費税は制定以来一度も下げていない、柔軟性を欠いた税であること。


 そのように、ダメ出しをしてみたのだけれど、どうも反応が鈍い。

 どうも現代の政治家というものは、一般市民がどうやってお金をやりくりしながら生活しているのか、何も把握していないのではないか?

 私は氷河期世代だ。正社員になろうとしてなれなかった人の無念、そして非正規で働く人たちの間に沈殿する絶望を、身に染みて知っている。

 だが政治家たちは、それを何も理解していない。

 官僚たちと話をする機会もあったので、意見を聞いてみたが、誰もかれも自分の省庁の都合の話をするだけで、日本という国、そこに暮らす人の視線が欠落している。


 ある政治家が、何か可哀想な人に向けるような目で私を見て、こう言ったものである。


「あなたの言うことは立派であるけれど、今の日本に、国のためとか国民のためとか、そんな理由で政治家をやってる人はいません。与党も野党も同じことです。国民のために働いたってどうせマスコミは褒めてくれないし、票にもつながりません。そんなものより、言うことを聞いておけば当選に必要な分の票を入れてくれる宗教団体とか市民団体に従っておいたほうがマシです。それで食べていけるんですから」


 私は先ほど氷河期世代の話をしたが、彼のいう「今どきの政治家」の姿は、どこかそれと似ていた。

 氷河期世代は会社も社会を信頼していない。だから、どこか他人事のような顔をして、怒られない程度の仕事をする。こうして無気力と無責任を呼吸しながら生きていく。

 今どきの政治家は、国家にも国民にも責任を感じておらず、信頼もしていない。ただ票を入れてくれる政治団体や宗教団体の話を聞いて、言われたとおりの政策を推進する。そうすれば選挙で議席だけは確保できる。議席があれば収入が入る。疑問を持たない方が楽に生きていける……。


 与党も野党も同じこと。件の政治家はそう言ったが、それも嘘ではないだろう。

 政治に幻滅したのは、そんな現実を知ってしまったからだ。


 現実の世界は、溺れそうになるほどの虚無に満ちている。

 でも生きていかなければいけない。

 虚無をかき分け、もっとマシな未来に指が届く日を信じて、ただもがき続けるしかない。

 だから、おのおのの判断で、比較的「マシ」だと思う政治家と政党を選んで投票して欲しい。そう思う。


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