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私は何者か?

 元ライター。非公式の企画屋。現在は引きこもり。

 普通の人が理解不可能なものを理解できるので、人によっては「狂人」に見えるし「無礼者」にも見える。しかし、ある程度の能力がある人間から見れば「異能者」でもある。


 絶対に誰にも回答できないはずの問いに、なぜか回答することができる。

 しかも必ず正しい。

 この世には、そういう人間が実在する。私はその一人だ。


 漫画やアニメの世界なら、異能者は理解者を得て、物語を進める役割を負うが、現実にそんな人が都合よく現れたりしない。

 だいたい無理解と妨害に遭遇し、ロクでもない目に遭う。

 そしておそらくは、孤独のうちに死んでゆく。

 私の母方の曾祖母は明治時代に活動した霊能者で、予言で評判をとった女性であった。しかし、客の逆恨みで不遇のうちに死んだ。

 どうも、私も同じ道をたどりそうである。


 最初は些細(ささい)なことだった。

 ライター時代の私は、コミックマーケットがあれば参加していた。主にただの買い手として。あの場所で本を探して徘徊すれば、実にいろいろな人に遭遇する。

 偶然に出会った人に、ふとした思い付きから「今の仕事」や「仕事上の悩み事」を指摘し、必要とあれば今何をすべきかを助言してみた。

 そして、不思議なことに助言は毎回的中した。

 口コミがさらなる人を呼び、いつからか、私がコミケに行くと、続々と迷い人たちがやってくるようになった。


 小説家志望者だけど何を書けばいいかわからない人。

 ヒット作に恵まれない漫画家。

 多数の新人作家を抱えているが、任せるべき企画を持たない編集者

 自分の才能に自信が持てないスポーツ選手。

 スランプに陥った映画俳優。

 次回作のネタを探す映画監督。

 政治家、官僚、科学者たち。

 日本人、アメリカ人、フランス人、ウクライナ人、ロシア人。


 始めは善意で始まった「助言」は、やがて義務となり、最終的に私を押しつぶした。

 持ち込まれる話は規模が大きくなるばかりで、いつしか、支えきれないほどに巨大な十字架となっていた。


 今は仕事も失って、ただの無職である。

 十億部以上の本を売り、何本ものゲームや映画を立案し、いくつもの世界の危機に対処したその果てが、どん詰まりだったのだ。


 私が今から書くのは、私がかつて出会った人々と、私の助言によって起きた出来事、その顛末(てんまつ)である。

 各エピソードは、基本的に思い出した順番、あるいは、どうでもいい順である。

 初期の話ほど、些細な事件であり、後期の話ほど重大な事件となっている。

 エピソードどうしのつながりは薄いので、見出しを見て、気になったものだけを読むといい。


 私はこれを文章化することで、果たして自分がこの世界から与えられた役割が何だったのかを知りたいのである。

 つまり、私は何者なのかを。


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