天使様は幼馴染に正論を言う
「馬鹿みたいにイチャついて恥ずかしくないの?」
教室につくなり、俺は椎名に罵倒された。
あまりにも突然だったので、思わず呆然としてしまう。
小鳥遊も小鳥遊で少し驚いているようだった。
まさか彼女が直接接触してくるとは思ってもいなかったのだろう。
それは俺も同じだ。もう話しかけないで。そう言われたから俺も話しかけなかったし、極力反応もしないようにしていた。
「別に俺たちは恥ずかしいことをしているつもりはない。それに構わないだろ、椎名にだって今頃彼氏がいるんだろ」
あの日、告白した瞬間を見たことは伏せておくため遠回しに指摘する。すると、彼女は驚いたような表情を一瞬見せるが、すぐに堂々とする。
「そうよ。私には立派な彼氏がいるの。でもあんたとは違って、変にイチャついたりはしないわ。これだから童貞は嫌なのよ。彼女さんも可哀想ね」
あの日、振られた単語が出てきてドキリとしてしまう。
俺は――童貞だから振られた。恥ずかしくて言葉に出来ないほどだ。
一瞬だけ、復讐したいだなんて思ったけど今はどうでもよかった。復讐は間違っている。でも、俺たちを――小鳥遊を可哀想と言うのは許せなかった。
「お前な、言っていいことと悪いことがあるだろ――」
「椎名さんだっけ? 悪いけど、私は幸せだよ。不満なんて一切抱いていないし、気持ち悪いなんて思っていないから」
俺の言葉を遮るように、小鳥遊が前に出る。
かなり怒っているのが、隣に立つ俺にでもわかる。
「童貞だからって馬鹿にするあなたの方が可哀想だと思うんだけど。私間違ったこと言ってるかしら?」
「……それは!」
「もう行こ。ホームルーム始まるよ」
「あ、ああ」
小鳥遊は俺の手を引いて、席へと向かう。
置いていかれた椎名は、恨めしそうにこちらを睨めつけた後自分の席へ座った。
俺は、隣の席の天使様にぼそっと呟く。
「さっきはごめん。俺がちゃんと言わなくちゃいけなかったのに」
本当に申し訳なかった。
椎名と俺との関係は、正直な話彼女には関係ない。
なのにこうやって守ってもらっちゃって、少し不甲斐ないなと思ってしまっていた。
「いいんだよ。だって、私たち付き合ってるんだよ。困難も、一緒に乗り越えていかないとね」
けれど、彼女は一切気にするような素振りも見せずに笑顔を見せた。
……やはり、彼女は天使様だ。
お隣の席の天使様で、今は俺にとっての天使様。
いや――なんだよ俺にとっての天使様って。ちょっと痛すぎるわ。
「どうしたの、そんなに考え込んだ表情して」
「い、いやなんでもない」
まさかこんなことを考えていたなんて、間違っても言えない。俺は頬が熱くなるのを感じながらも、窓の方を向いてどうにか誤魔化した。
「あ、そうだ。せっかくだからあそこ行こうよ」
「ん、どこにだ?」
尋ねると、楽しげな表情を浮かべて。
「屋上だよ。一時間目の授業、サボっちゃお」
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