月曜日
月曜日。俺はいつものように支度をして小鳥遊と待ち合わせをし、学校へと向かう。
一週間もすれば、女子と登下校なんて慣れたものだった。ただ、やはり周囲の視線は痛い。
腕を切り落とそうとした人もいたけど、彼の腕は現在もちゃんと二本残っているのだろうか。
「さてはて、これまで私たちはいつものように登校してきました。でも今は二週間目。通常通りの登校なんてつまらないよね?」
小鳥遊が楽しそうに口をほころばせながら言う。
「え、他に何かあるのか? 下校ならまだしも、登校なんて変わったことできないだろ」
「あるんだよねぇー。例えばこんな感じ」
急に俺の体に密着してきたかと思うと、手をぎゅっと握ってきた。それも、ただの手繋ぎじゃない。
手を絡ませる形の――いわば恋人繋ぎであった。
手を繋いで登下校――まあ、そんなことは日常茶飯事だったが恋人繋ぎは何気に初めてである。
それに、めちゃくちゃ密着してきてるからドキドキして仕方がない。彼女のことだから、わざと密着しているのだろうが……。
「えへへ、少し恥ずかしいな」
「ならするなよ……俺も恥ずかしいわ」
他の生徒たちもだいぶ慣れてきたのか、悲しそうな表情はするもどこか諦めている人がほとんどだった。
だけど、さすがに今回の恋人繋ぎには驚いたらしい。
「え、え、え、え?」と声を漏らしている生徒がいる。
ごめん、俺もこんなの想定していなかったんだ。
動揺しているだろうが、俺も動揺している。仲間みたいなものだ。
学校が見えてきた頃、トントンと肩を叩いてくる人がいた。振り返ってみると、嬉々とした表情を浮かべている女の子がいた。
「朝から熱いなぁ! うち、知ってるで。これが尊みの塊って言うんやろ?」
「ついにお前は俺たちのことを尊いと言い始めたか……」
鳳は楽しげに肩を揺らしている。
「あれ、鳳さん? だっけ。夏樹くんの友達なの?」
「そうやで! 実際話すのは初めてやな、鳳渚ちゅうねん! よろしゅう!」
フランクに、よっと手を上げる鳳に小鳥遊も手を上げて返す。性格的に二人は仲良くなれそうな気がするな。
「そういや前、夏樹と一緒に出かけた時うちのことをじーと見てきたんやで……お前浮気されてるかもしれへんで……!」
「なんだって!? 夏樹くん酷いなぁ」
「万が一浮気をしていたとして、当事者が自首するやつがどこにいる」
思わずツッこんでしまった。
関西弁キャラにツッコミを入れてしまうなんて、なんか違う気がする。
「ははは! やっぱ夏樹はおもろいやつやなぁ! こんなやつやから、小鳥遊さんも仲良くしてやってや!」
「うん! もちろん、無知でムチムチな夏樹くんとは仲良くするし、いっぱい楽しいことするよ!」
「おあ!? お前もおもろいなあ! 夏樹、吉報待ってるで!」
「おい、お前らなに勝手に変な話に持って行ってんだよ」
朝から会話がお花畑すぎる。いや、お花畑というか枯れ果ててしまっている。
女の子同士の下ネタってキツいって聞いていたが、実際聞いてみるとマジらしいな。
「長話しすぎたな。ほな、お前らも地獄の月曜日耐えぬけなぁ!」
そう言って校舎の中に入っていく鳳を見ながら、小鳥遊は嬉しげに言う。
「鳳さん。私に遠慮せず話しかけてくれる優しい子だなぁ」
そう言えばそうだった。
彼女はこう見えても友達が少ない。
気軽に話しかけてくれたのが余程嬉しかったのか、鼻歌交じりに再度俺の手を握ってきた。
二章(二週間目)開始です!!この機会に、まだ評価していないよって方はぜひ、
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