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約束の日

 一週間。俺たちは充実した日々を送っていた。

 と言っても、一緒にお弁当を食べたり、手を繋いで下校したり。


 たったそれだけのことだが、俺はとても充実していたと思う。

 そして、ついに週末。


 約束の日であり、遊園地に遊びに行く日だった。


 俺は鳳の協力もあり、今自分にできる精一杯のおしゃれをして、待ち合わせ場所である駅前で待機している。


「おまたせー!」


 ベンチに座っていると、溌剌な声が聞こえてきた。

 声がする方に顔を向けると、緩やかなチュニックにふんわりとしたパンツを身にまとっている小鳥遊の姿があった。


「めっちゃおしゃれしてきてんじゃん」

「えへへ。やっぱり最終日だからね」

「……ああ。そうだな」


 今日が最終日。そう、もう終わりなのだ。

 俺たちはバスに乗り込んで、遊園地へと向かう。


 その間、俺はぼうっと外を眺めていたのだが小鳥遊の方から手を繋いできた。

 少しドキリとしてしまうが、俺も手を握り返す。


「遊園地、来たー!!」


 小鳥遊は楽しげに、遊園地内を走り回る。

 そして、こちらに振り返って、


「ねね、どこ行く? なにする?」

「うーん、とりあえずジェットコースターでいいんじゃない?」

「おおー。チャレンジャーだねぇ」


 そうして、俺たちはジェットコースターに乗り込んだ。

 休日なので混んでいるのかと思っていたが、意外にも空いていてすんなり乗ることができた。


 どんどん上昇していくジェットコースター。

 俺は胸の高鳴りを抑えられずにいた。


 正直、こういうアトラクションは苦手なのだ。

 少し強がってしまって、こういうのを指名してしまった。


「ふふ、怖いの?」

「そ、それは……」


 言いよどんでいると、面白そうに小鳥遊は笑う。


「恐怖も、共有しあわないとね」


 そういった刹那、ジェットコースターの急降下が始まった。


「うぉぉぉぉぉぉ!?」

「ひゃっほーーーー!!」


 ぐわんぐわん動くジェットコースターに俺はついていけず、目を回していた。

 だが、隣では楽しそうにしている小鳥遊の姿が見えて、思わず笑みを漏らしてしまう。


 それに気がついたのか、小鳥遊はこちらに向いてわざとらしく笑ってみせた。


 ◆


 夕方。それから俺たちは最後のアトラクションとして、観覧車に乗ることにした。

 ジェットコースターとは違って、緩やかに上昇を続けている。


「一週間、どうだった?」

「どうだった……か」


 俺は夕焼け空を見ながら考える。

 本当に色々あったように思う。


 いや、陽キャにとっては当たり前のことなのかもしれないが、俺にとっては全てがキラキラとした物に思えた。

 一緒にお弁当を食べたり、適当に駄弁ったり。


 とても単純なことだけど、その単純なことが幸せの一粒なのだと知った。


「楽しかったよ。ありがとう」

「ふふ、私も楽しかった。ありがと」


 何故か今更恥ずかしくなって、彼女のことを見ることができなくなっていた。

 今日で俺も卒業することになってしまう。


 その事実を思う度に、俺は恥ずかしくなってしまう。

 でも、それと同時に寂しく思う。


 これで、終わりなんだ。

 俺たちの関係は。


 外を見ながら、そんなことを考えていると頬に何かが当たる。

 慌てて振り返ると、すぐ近くに小鳥遊の顔があった。


 あれ……俺、キスされたのか?


「ねぇ。童貞卒業にも種類があってね。今回は頬にキスをしてあげた」

「あ、ああ」


 なにを言っているのか理解できず、俺は曖昧な返事をしてしまう。

 すると、彼女は笑顔を浮かべて、


「もう少し付き合わない? ……私、もっと君のことが知りたいんだ」

「あ、もしかして今の。頬キス童貞を奪われたってことか?」

「ふふ、そゆこと」


 なんだかめちゃくちゃからかわれてるじゃん。

 でも……俺は少し嬉しかった。


「……俺も小鳥遊のこと、もっと知りたい」

「そうこなくっちゃ」


 そして、彼女は俺の手を握ってきてこう言った。


「次の一週間はなんの童貞を卒業しちゃうんだろうね」

「まったく、小鳥遊には敵わないな」


 その瞬間、俺のスマホが震える。

 椎名からメッセージが届いていた。


「……椎名か」


『あなたより、あたしの方が絶対に幸せだから』


「……」


 俺は少し迷うが、ポケットにスマホをしまった。


「大丈夫なの?」

「ああ。今は、小鳥遊との時間を大切にしたい」

「そっか」


 俺たちは、沈む夕日を見ながらぎゅっと手を握った。


 ◆


 やっぱり、夏樹くんは思い出していない感じだなぁ。

 観覧車の外の景色を見ながら、小鳥遊は思った。


 でも、もう一週間延長することができた。

 少しキス……恥ずかしかったけど、あの時守ってくれたお礼を少しだけ返済できたって考えたらマシになってくる。


 いやいや、自分のキスにそこまでの価値あるのかな。

 ……考えるのはやめだ。


 さて、本当は月曜日のはずだったんだけど日曜日に前倒しになっちゃったな。

 でもいいや。


「夏樹くん。今日この日を記念日として、今日から一週間にしましょう!」

「ん? となると、契約更新は日曜日になるのか?」

「契約って……なんだか卑猥だね」

「そう思っているのは小鳥遊だけだよ」


 そう返されてしまった。

 むむむ。やはり携帯小説の読みすぎかな。


これにて短編分&一章完結です!!応援ありがとうございます!頑張って二章も書いていくので、更新を応援したいー!面白いぜー!と思ってくださった方はぜひ


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連載版も一位を一緒に目指せれたら嬉しいです!

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