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お弁当と椎名の後悔(一部椎名視点)

「幸人くーん! 今日は私オリジナルお弁当でーす!」

 

 次の日のお昼休み。

 俺は今日も食堂でご飯を食べるものだと思っていたのだが小鳥遊が目の前に弁当箱を置いた。


「おお。いきなりか」

「いきなりって失礼よ! さ、受け取りなさい!」


 弁当箱を受け取り、開いてみると中には美味しそうな具材が入っていた。

 ハンバーグにソーセージ。もちろん、偏りのないよう野菜もちゃんと入っている。


「これ、小鳥遊が作ったのか?」

「もちろん私オリジナル。ふふ、美味しそうでしょ?」

「ああ……少し感動してる」


 まさか女子からお弁当をもらう日が来るとは思わなかった。

 それも学校の天使様と呼ばれる人物からだ。


 レア度が高すぎる。


 しかし、それと同時に周囲の視線が痛い。


「おい……まさか夏樹のやつ小鳥遊と……」

「いやそれはない。あの夏樹が天使様に認められるわけが……」


 男子生徒がぼそぼそと呟いている。

 それも殺意てんこ盛りで。


 だが、その言葉は小鳥遊にも届いていたようで。

 俺の方に笑顔を向けると同時に、


「私、夏樹くんと付き合うことにしたんだ! みんな、把握お願いねー!」


 と、叫びやがった。


「ちょ、それは俺が死ぬ!」

「まあまあ。大丈夫大丈夫」


「おい嘘だろぉぉぉぉぉぉ!!」

「死ぬ、俺は死ぬぜ! 今この手に握られているカッターナイフが俺の覚悟の象徴だ! 行くぞ俺の動脈! 切り落とすぞ手首ぃぃぃ!!」


 阿鼻叫喚の嵐であった。

 特に手首を切り落とそうとしている生徒まで出ているのが恐ろしい。


 だが、小鳥遊から言った効果もあるのだろうか。

 俺に殺意を向けられることはなかった。


 どちらかと言えば、自傷行為に走っている生徒の方が多い気がする……。


「あ……」


 ふと、椎名と目が合う。

 ツンツンとした表情を浮かべ、一人の男の方に向かって走り出した。


 ……小峠。


「椎名も無知よね。いや、恋は盲目というもの。まさかあんな男子に惚れちゃうなんて」


 この様子だと本当に付き合うことになったんだな。


「ま、いいじゃない。見せつけることができて」

「ああ。俺はもう、椎名を諦めるべきなんだろうな」


 昔いた椎名はいない。

 それに、もう関係ないんだ。あいつは俺に話しかけるなと言ってきた。


 あいつにとって、俺には人権なんてない。ただの人以下の存在なのだ。


「それじゃお弁当食べよ!」


 そう言って、小鳥遊が割り箸を取り出す。

 俺は受け取り、


「いただきます」

「いただきまーす」


 ありがたく、お弁当を頬張ることにした。


「あ、めっちゃ美味い」

「でしょー? ほら、それじゃあ私のもあげる。あーん」


 小鳥遊のお弁当には唐揚げが入っていて、それを俺にあーんしてくる。

 あーんって、すげえシチュエーションだな……ちょっと恥ずかしい。


「嫌?」

「そんな顔で言われたら断れないな」


 そうして、俺は唐揚げを頬張ることにした。

 ……うん。美味しい。


「最高だよ」

「えへへ……嬉しいですなぁ」


 恥ずかしそうに笑う小鳥遊を見ていると、今の自分の居場所はここなんじゃないかと思ってしまう。

 今、俺は少なくとも幸せを感じていた。


「あ、そうそう。今週末だけどね。一緒に遊園地にでも行かない?」

「遊園地か? もちろん大丈夫だが」

「やったー!」


 そう答えると、小鳥遊は嬉しそうに口角を上げた。

 遊園地か。デートスポットとしては定番だろう。


「お金は俺が出すよ。一応バイトしてるから余裕はあるんだ」

「いや、いいよ。自分の分は自分で出す。幸人くんって、男の人がお金を出すの当然だと思ってる人?」

「当然だと思っていたが……違うのか?」


 尋ねると、小鳥遊は胸を張って、


「幸せってのは分け合うものなのですよ。だから、お金も半々」

「……なるほど?」


 まあ、彼女がそういうなら別にいいや。

 そろそろ昼休みも終わるので、お弁当を片付けることにした。


「ありがと、小鳥遊」

「いえいえー。喜んでもらえて嬉しいよー」


 ◆


「おい、別にいいじゃないかよ」

「なにがよ! ベタベタ触らないで!」


 夏樹が小鳥遊とお弁当を食べている頃。

 椎名は小峠と二人きりで空き教室にいた。


「付き合ったらすることはする。当然のことだろ?」

「でも……いきなりすぎるでしょ!」

「はぁ? オレ様が付きあってあげてんのに、なんだよ。口答えするきか? ああ?」


 椎名は小峠に攻め寄られていた。

 腕を掴まれて、上手く動くことができない。


 相手は男。力は自分よりはるかに強い。


「なんで……なんでそんな強引なことするのよ!」

「そういうもんだろ? っていうか、ちょっと体に触るだけじゃねえか」

「うっ……」


 椎名はそう言われて、夏樹が脳内でちらついた。

 彼は自分のことをもっと丁寧に扱ってくれて、とても紳士的だった。


 でも、あいつは童貞だからずっと気持ちの悪いことを考えていると思っていた。

 ……多分、違うのだろう。


 椎名が憧れていたキラキラとした物は、実はドロドロで圧倒的に夏樹の方がよかった。

 だが、今更後悔したって遅い。


「わ、分かったから……もうやめてよ……」


 それでも認めたくなかった。

 夏樹の方が良かっただなんて。


 だが、事実は非情だ。


 もしかして、あたしは間違ってたの?

少し椎名視点入りました!展開が短編版と変わってくるのでお楽しみに!


ブックマーク、評価ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!!




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