勝負をしましょう
「え、えーと。距離感すごいね……宮日さんだっけ?」
「おっほー! はいはい、宮日です! あはは、お名前を覚えていただけているなんて光栄、光栄すぎて死ねますね!」
なんともまあ嬉しそうににまにまとしている。
それもなにか嫌な感じに。なんというか、息遣いが荒い。
もう「ぜーはーぜーはー」いっている。
頬は朱色に染まっており、何故か足はがくついていた。
もう分かる。一目で分かる。
いや、覗いた時点で察してはいたんだが。
この宮日明と言う人物は間違いなくやばいやつだ。
関わってはいけない系の人物である。
「あの……生徒会長さん? ちょっと、さすがに女子同士でもその距離感は……」
俺は意を決して宮日さんの手を小鳥遊から離そうとするが、その刹那。
――バチン!
思い切り手を叩かれた。
やばい、普通に痛い。
「なんだてめえ。ああ? 神聖なる天使様に触っていいと思ってんのか? お前、面見せろや、ああ?」
……帰ろう。
「小鳥遊、頑張れよ。よし鳳、帰ろう」
「それは最低やで。うわー、なんかこいつ逃げようとしてるわー」
「お前さっきまで逃げる姿勢でいたくせに、よく言えるな」
俺は全力で帰ろうとしているのだが、絶対に鳳が逃すまいと腕を掴んでくる。
いや、マジで絶対に帰ったほうがいい。
まだ俺が小鳥遊と付き合っている夏樹幸人その人だとバレていないうちに引き返した方がいい。
「あれ? お前、もしかして……夏樹幸人とかいう反逆者か?」
「ち、違いますー。反逆者じゃないですー。ほら、どちらかと言えば信者と言うかー、一般人というかー」
「な、夏樹くん? 本当にこれどういう状況なの?」
あー終わった。
もうバレたわ。本人様が「夏樹くん」なんて言ってしまったら俺、黒確定じゃーん。
「ほお。幸人か。お前が幸人か。ちょっとこっち来いよ」
「同姓同名の別人ですよ」
「この学校には夏樹幸人なんて生徒、一人しかいねえよ」
さすが生徒会長ー。把握しているのね。
ここまで来たらもう引き返せない。
俺はへんてこなファイティングポーズを取って、攻撃に備える。
「お前はきっと、こんな質問を私にするだろうな? 天使様保護法に違反した生徒がどうなるのかーとか」
え、それって採択されてなかったよね。
天使様保護法って存在しないよね。
というか、俺にだけ口調怖いんだけど。生徒会長ってだいたい敬語キャラだよね。
どうして俺だけヤンキー的なキャラになるの?
「結論、死刑」
……うわー。最初に結論持ってくる人って頭いい人多いよね。
なんてことが脳裏によぎるくらいには何故か余裕があった。
なんだろう。もう死刑なんていい出してもおかしくはないなと思っていたからだ。
あ、死ぬのね。俺処されるのね。
「ちょ、ちょっと宮日さん!? 夏樹くんは何もしてないよ!」
「こいつは無罪や! ちょっと性格悪いし面倒くさいし、デートの服の予算三千円とか頭イカれてる部分あるけど、無罪やで! 無罪なはずや! うん!」
「ちょっと怪しくなるのやめて!」
鳳に関してはフォローする気ねえだろ!
「天使様! ですが、この野郎は――糞野郎はあなたを幸せにすることなんてできません!」
そう言ってから、俺の方に顔を向けて、
「ちなみにクソ野郎のクソは漢字の方な」
と言ってきた。
わざわざその報告いらないからね。怖いだけだから。
「いや、夏樹くんと一緒にいて私は幸せだよ! 本当に!」
小鳥遊が言い返すと、宮日は苦虫を噛んだような表情を浮かべる。
「……ならば、勝負をしましょう。そして、今だけあなたと私は同格として扱ってあげます」
「勝負? あの、一応命の奪い合いはやめようね?」
「なに、単純なものです。どちらが天使様を愛しているかを比べる簡単なゲームですよ」
どうやら、何やらゲームとやらに巻き込まれることになったらしい。
だが……面倒事は早めに対処しておいて損はない。
「……分かりました。やりましょう。で、ゲーム内容は?」
「天使様が一番喜ぶ物。いわばプレゼントを選んだ方の勝ち、というゲームです。期限は明日の放課後。本当に理解している人なら、期限がたった一日だけでも、素晴らしい物を用意できますよね?」
「……もちろん」
「え、なに? なにか私の知らないうちに始まってる?」
何故か天使様本人は蚊帳の外と言った感じだが、ともあれ勝負となったらとことんやってやる。
更新遅くなってしまい、申し訳ございません!
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