屋上
ホームルームを終え、十分ほどある休み時間の間に俺たちは屋上へ行くことにした。
先生に見られないよう、逃げるように階段を上がっていく。
「でもどうして急に屋上なんかに?」
「そりゃあ、ちょっと腹が立ったからね。こんな時はサボるのが一番だよ」
「俺授業サボったことないから、ちょっと緊張するな」
「ふふふ、初めて奪っちゃったね」
不敵な笑みを浮かべる小鳥遊を直視することができず、俺は顔をそらす。
それがまた面白かったらしく、彼女はケラケラと笑った。
「授業始まったら、教室はちょっと混乱するかもね。私と夏樹くんがいないから」
「……かもな」
俺は彼女と付き合い始めてから、からかわれてばかりな気がする。
まあ、それも悪くないと思ってしまう辺り俺もあれなんだと思うが。
屋上の扉を開くと、風が入り込んできて小鳥遊の髪がなびく。
……屋上に来たのは、あの時以来だ。
「久しぶりの屋上だー! 早速私はおねんねスポットに行こっと」
言いながら、小屋の後ろの方に駆けていく。
「夏樹くんもおいでー」
「ああ」
手招きしてくれたので、お邪魔させていただくことにした。
小屋に背中をあずけ、少し陰になっている場所に座り込む。
なるほど。さすがはおねんねスポットなだけある。
妙な体勢ではあるが、どこか安心感があった。
「いやー、やっぱここいいね。夏樹くんと付き合い始めてからはずっと一緒にいることがほとんどだったから、ここに来ることなんてなかったけど。やっぱり安心感が違うなー」
「なんとなく分かるわ。どこか落ち着く」
そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
同意してくれたのがよっぽど嬉しかったらしい。
「でしょー? 私がめちゃくちゃ探して見つけたおねんねスポットだからねぇー」
そういうと、彼女は背中をぐっと伸ばしてから目を瞑った。
「夏樹くんはさ、あの時のこと覚えてる?」
「あの時ってあれか? 俺が振られた……」
「違うよ。まあいいや。いつか思い出してくれたらそれで十分」
「なんだよそれ」
なにか隠し事でもしているのだろうか。
それとも、なにか俺がやらかしたか?
……でも深く追求してこないから、大丈夫だとは思うのだが。
俺も倣って、目を瞑ることにした。
「私、いつか誰かとここで寝たかったんだ。夢が叶って、ちょっと嬉しい」
「そうか。それはよかった」
だんだんとウトウトしてきた。
やばい。普通に寝てしまいそうだ。
まあ、睡魔に従って眠るのもいいか。
と、のんびり眠ろうとした瞬間に耳元で小鳥遊がささやいてきた。
「君と一緒に寝れて嬉しいよ」
「ぶわっ!? 急に……びっくりしたわ」
「えへへ」
駄目だ。一気に目が覚めてしまった。
これじゃあ眠れそうにないな。
ちらっと隣を見てみると、彼女は完全におねんねモードに入っていた。
ウトウトとしている様子を見たあと、俺は澄んだ青空を見上げた。
「なんやかんやで、俺は幸せになれてるのかな」
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