夜陰夜会
掲載日:2021/08/01
それは月の無い闇夜のこと
ひとりの娘が導かれるように 闇へと足を踏み入れた
娘が向かうのは森の奥
忘れられた館で開かれる 秘密の宴
行ってはならぬと鳴く梟の 静止の声も耳に届かない
時計の針が真夜中を告げれば
蒼白い灯りの中 輪舞が始まる
音の無い舞踏会
踊る貴人たちの横顔に 死の影が揺れた
迷い込んだ娘は 恐れをなして階段を駆け降りる
裾を乱し どれだけ脚を動かしても
出口にたどり着くことはない
惑う姿を見つめるのは 赤い瞳
血の色をした魔の瞳
いつの間にか背後に忍び しなやかに娘の身体を絡め取る
悲鳴を上げる いとまもない
そして耳元で囁かれる 低い声
「ようこそ 夜陰夜会へ」
禁忌の瞳の奥底に 一瞬 せつなさが見えたのは気のせいだろうか
青薔薇が誘う罪の香りが 娘の意識に絡みつく
囚われたなら 魔の虜
首筋を差し出し 甘美な恐怖に身悶えるだけ




