第7話 仲間 ~小さな魔法使い~ ★
角兎討伐依頼を終えたレオネスは報酬を受け取り、余った角兎の角は売り払い、換金する。
また、角兎は精肉屋に持っていき、食肉として加工してもらい、余った分の肉は売り払い、これも換金する。
「……これは、初仕事の記念にとっておくか」
大牙虎の爪と牙は、初めての依頼成功の記念に取っておくことにしたのだった。
報酬と素材の売却により、今回の依頼の稼ぎは3000Gとなった。
「しかし、俺がBランク冒険者か。昔の俺じゃ、考えられなかったな」
レオネスは単独での大牙虎の討伐により、力量を認められ、一気にBランクに昇格したのだった。
依頼を終え、やることを済ませたレオネスは道具屋に訪れていた。
「うーむ、どれくらいの大きさが良いものか……」
レオネスは魔法の小袋の前で悩んでいた。
「大きい方が良いかな。でも、値が張るんだよなぁ……。ま、大は小を兼ねるというし、将来への投資と考えるか」
こうしてレオネスは依頼の報酬と貯金を合わせ、100,000Gの魔法の小袋を購入する。
「さて、日も暮れて来たな。宿を取るか」
レオネスは空いている宿屋を探し、部屋を取る。
「冒険者ですけど、部屋は空いてますか?」
「大丈夫ですよ。一泊200Gです」
「あと、これを夕食にしてほしいんですけど、出来ます?」
「ええ出来ますよ。夕食の時間にお部屋にお運びしますね」
レオネスは角兎の肉を宿屋に渡し、借りた部屋へと向かう。
「今日はいろいろあったから疲れたな、晩飯食ったら寝よう……」
◇◇◇
翌日、レオネスはギルドを訪れていた。
「さて、今度は何の依頼を受けようか」
レオネスはBランク冒険者に昇格したため、一気に受けられる依頼の幅が増えていた。
「あなた一人? よかったら一緒に依頼受けない?」
依頼掲示板の前で悩むレオネスに一人の少女が声をかけてきた。
小柄な少女はとんがり帽子をかぶり、ストロベリーブロンドの髪と尖った耳が特徴的だった。
全体的には魔法使いの装いだが、手には籠手、足には具足、腰には細剣を携えており、魔法使いにしては変わった出で立ちであった。
「構わないけど、なぜ俺に?」
「お兄さん、剣士でしょ? 私は魔法使いで後衛職だから、前衛職と組みたかったの」
少女の言葉は理に適っていた。
しかし、前衛並の防御を固めている少女が言うには違和感があった。
レオネスが怪訝な顔をして少女を見ていると、少女は自分の言っていることと、自分の装備が一致していないことに気付いたのか、説明を始めた。
「私はミレスティア。ミレスって呼ばれてるわ。ハーフエルフで魔法使いなの。昔、剣術を習っててね、それで基本は後衛職だけど、緊急時は接近戦も出来るように、一応、剣に合わせた装備もしているの。剣は使えるけど本職は魔法使いだから!」
「そういうことか、俺はレオネス。よろしくな」
ミレスの説明に合点がいったレオネスは、自身も自己紹介をする。
「ミレスのランクはどのくらいなんだ?」
「Cランクよ、レオネスは?」
「Bランクだ」
合同で依頼を受ける場合、メンバーの戦闘職のうち、一番ランクが低い者に依頼のランクを合わせる必要がある。
回収者など、非戦闘職のランクはカウントされない。
そのため、今回ではミレスのCランクに合わせる必要がある。
「それじゃ、依頼はミレスが選んでくれ」
「わかった」
ミレスが受注した依頼は迷宮での魔石30個回収の依頼だった。
「あはは、まだ魔法の小袋持ってなくて。魔石なら、かさばらないから、いいでしょ?」
「俺は魔法の小袋持ってるけどな」
「えー!? 先に言ってよ!」
野を駆ける牙獣時代に何度か迷宮に潜ったことはあるが、回収者としてついて行くのと、自身で討伐依頼を行うのとでは勝手が違う。
そのため、レオネスは迷宮での討伐依頼を楽しみにしていた。