第38話 一回戦 ~初戦~
一夜明け、ついに武闘武術大会が開始される。
レオネス達、剣の魔術師は一回戦の第一試合に出場するので、今大会最初の試合を行うことになる。
「司会と審判は、このマオルゥが努めます! よろしくー!」
露出度の高い服を着た兎人族、マオルゥが自己紹介をする。
「では、選手に入場してもらいましょう! 赤コーナー、ベルセリオン!」
赤コーナーの入り口からベルセリオンのメンバーが入場し、観客の歓声が上がる。
「続いて、青コーナー、剣の魔術師!」
青コーナーの入り口からレオネス達が入場し、またしても歓声が上がる。
「それでは~! 試合前にルールの確認をしまーす!」
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の五人で1チームであり、先に三勝した方が次の試合へと進む事が出来る。
武器の使用は許可されており、対戦相手を死亡させても反則にはならない。
試合の出場順は各チームで自由に決めても良い。
何らかの事情でメンバーが揃っていない場合は、対戦方式が勝ち抜き式に変更となる。
10秒以上、リングアウトすれば負けとなる。
ダウンした場合はテンカウントが行われるが、気絶などにより十秒以内に起きる見込みが無ければ、即敗北となる。
「以上がルールです! 他に分からないことがあったら聞いてくださいねー!」
「こっちは特にない」
「こちらもルールは把握した」
剣の魔術師とベルセリオンが互いに答える。
「はーい、無いようなのでぇ、早速試合に行きたいと思いまーす! では先鋒の方、リングへどうぞー!」
「頑張れよ、フェレティス!」
「はい、見ていてください!」
レオネスの声援を受け、フェレティスはリングに立つ。
「へぇ、お嬢ちゃんが相手か。狐人族の方が好みだったんだがな」
フェレティスと対峙するのは、スキンヘッドの格闘家、バルリックである。
「私は好みじゃない? お互い様ですね、私もあなたみたいな人はタイプじゃないです」
「言うじゃねぇか!」
珍しく相手を挑発するフェレティス。
「いい感じに火花バチバチなところで、試合開始でーす!」
試合開始のゴングが鳴る。
先に動いたのはバルリックだった。
「安心しな! 殺しはしねぇ、晩のお楽しみのためにな!」
バルリックはフェレティスの居る場所をめがけて、拳を振り下ろす。
振り下ろされた拳はリングの床を砕き、砂埃を巻き上げる。
「悪いな、ちょいと本気を出しちまった」
砂埃を払い、フェレティスを確認するバルリック。
しかし、そこにはクレーターしかなく、フェレティスの姿は無かった。
「なにっ!?」
消えたフェレティスを探すバルリック。
しかし、フェレティスはリングの何処にもいなかった。
「どこにもいねぇ? ああ、場外に吹っ飛んだか」
バルリックは審判のマオルゥに近づく。
「おい! 何ぼさっとしてやがる、リングアウトのカウントを取りやがれ!」
「い、いや、フェレティス選手は居ますよ?」
「はぁ? どこに?」
「あなたの後ろに」
そう言われ振り返るバルリックの顔面にパンチが飛んでくる。
「ぐぉ!」
「気付くのが遅いですよ?」
「このガキィ!」
フェレティスの小さい手は、バルリックの鼻を捉え、バルリックの鼻は曲がり、鼻血を噴出している。
フェレティスの一撃を受け、激昂したバルリックは力任せにフェレティスに殴りかかる。
しかし、一発もフェレティスに当たることは無かった。
「身のこなしを中心に鍛錬したって言うだけあって、以前と素早さが段違いだな」
「ふふっ、それだけじゃないわよ?」
フェレティスの試合を見て、会話するレオネスとルナリス。
「この、ちょこまかと!」
フェレティスを捉えようと繰り出される拳は空を切り続ける。
「な!」
フェレティスへ向け、振られていたバルリックの拳はいつの間にか切り傷だらけになっていた。
「やっぱり気付くのが遅いですね。結構、鈍感な人なんですか?」
フェレティスの手にはいつの間にかナイフが握られており、バルリックのパンチにナイフで反撃していたのだ。
「コイツ……!」
フェレティスからいったん距離を取るバルリック。
(あの小娘が何をしているのか分からん以上、近づくのは迂闊だったか)
距離を取ったバルリックは背中を叩かれ、振り返る。
「なにぃ!?」
そこには目の前にいたはずのフェレティスが居たのだ。
「おじさんと私とでは、相性が悪かったみたいですね?」
フェレティスはナイフを突き出す。
紙一重で躱すバルリック。
「舐めるな! ロックストーム!」
バルリックは魔力で岩を形成し、岩を殴り、フェレティスへ向けて岩を飛ばす。
動きの読めないフェレティスに対し、バルリックは岩の弾幕を張り、面攻撃で攻める。
「ちょっと厄介ですね」
フェレティスは足で床をトントンと鳴らし、姿勢を低くして加速し、バルリックの攻撃を避ける。
バルリックの攻撃により発生した砂埃がある軌跡を描く。
(! そうか、こいつは高速移動していたのか!)
フェレティスの神出鬼没な行動の正体、それはフェレティスが一カ月の修行で身に付けた強化魔法『瞬転速』の効果であった。
瞬転速は魔力で肉体を活性化させ、機動力を爆発的に向上させる強化魔法である。
この魔法を使い、フェレティスは目にも留まらぬスピードで移動していたのである。
「種が分かればこっちのもんよ!」
バルリックはロックストームを砂埃の軌跡の場所へと集中させる。
「いかに速かろうが! ……がぁ!?」
攻撃の手を強めるバルリックは突如、頭部に凄まじい衝撃を受け、失神する。
「私はこっちですよー」
フェレティスは高速移動で撹乱し、空中に飛び上がり、誰もいない場所を攻撃するバルリックの頭に上空から膝蹴りを入れたのだった。
「バルリック選手ダウーン! 勝者フェレティス選手ゥ!」
勝負が決し、観客から歓声が上がる。
「レオネスさん、どうでした?」
「ああ、まだフェレティスの戦いしか見てないけど、フェレティスが一番強くなったんじゃないか?」
耳をぺたんと倒し近づくフェレティスの頭を撫でるレオネス。
「魔法銃使ってないし、本気じゃ無かったよね?」
ミレスがフェレティスに問いかける。
「そうですね。正直、ナイフも使わなくてよかったと思います」
「あれー? フェレティスってこんな子だっけー?」
フェレティスの余裕発言に混乱するミレス。
「これが修行の成果か、大した奴だ」
一人納得するセンジ。
「さーて、それじゃ、次は私の番ね」
ミレスは軽くストレッチし、リングへと上がる。




