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第9話 悪評 ~町の嫌われ者~

 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドを結成してから数日、レオネスとミレスは依頼(クエスト)をこなしていた。

 そんな中、レオネスはあることが気になっていた。

 それはかつての仲間、野を駆ける牙獣(ワイルドファング)である。

 かつての仲間に会いたい、また野を駆ける牙獣(ワイルドファング)に戻ってやり直したい、そんな郷愁じみた感情ではなく、時折耳にする野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の悪評である。

 レオネスの知る野を駆ける牙獣(ワイルドファング)は、そんな悪い噂の流れるクランではなかったので、多少、驚いていた。

 また、5年も前にAランクに昇格したはずの野を駆ける牙獣(ワイルドファング)が、未だに初心者の多いリフィアの町に居たことも驚きの一つだった。

 とっくに他の町に進出しているものだと思っていたからだ。


「ミレス、野を駆ける牙獣(ワイルドファング)って知ってるか?」


 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの拠点となる宿屋の一室で、レオネスはミレスに問う。


「ああ、あの迷惑集団? あれがどうかしたの?」


 ミレスは野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の話題にあまりいい顔はしなかった。


「いや、悪い意味で有名だからな」


「ああ、そっか。レオネスってランクは高いけど、冒険者としては日が浅いんだったね」


 ミレスは野を駆ける牙獣(ワイルドファング)について説明する。

 野を駆ける牙獣(ワイルドファング)はCランクのクランであるが、メンバーである冒険者はAランク相当の実力を持っている。

 そのため、力に物を言わせ、新米冒険者への恐喝、他クランの討伐対象などの手柄の横取り、共同依頼の報酬の独占、挙句の果てには、装備品を盗まれたという冒険者もいた。



「私も何度か、魔物を横取りされたし……」


 ミレスは不機嫌に呟く。


「……野を駆ける牙獣(ワイルドファング)ってCランクのクランなのか」


「ええ、一時(いっとき)はAランクだったらしいけど、緊急依頼(クエスト)を大失敗して降格したんだって」


 降格したころから、今の悪質行為をやり始めたらしいわ、と付け加えるミレス。

 自分が去った後に、そんなことが起きているとは思っていなかったレオネスは驚きを隠せなかった。


「しかし、ここまで悪い噂が広がっているんなら、ギルドも黙っていないんじゃないか?」


「ギルドは基本的に冒険者同士の揉め事には無干渉だからね」


「いや、聞く限り、揉め事ってレベルじゃねーぞ」


「みんな野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の仕返しを怖がって、通報できないのよ。昔、野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の悪質行為をギルドに報告した冒険者が居たらしいけど、そのあとに謎の集団にボコボコにされたって話よ。たぶん、野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の仕業でしょうけど……」


「上級冒険者に討伐を頼んだりはしないのか?」


「田舎の新米冒険者のために時間を割いてくれる上級冒険者がいるかしら?」


「……それもそうか」


 ギルドは基本的に冒険者同士の揉め事は不干渉であり、冒険者が通報しようにも野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の報復を恐れて通報できない、ゆえに野を駆ける牙獣(ワイルドファング)を恐れ、彼らの居ない所で愚痴るくらいしかできない、それが今のリフィアの町の現状だった。


「今、野を駆ける牙獣(ワイルドファング)は遠征に行ってて平和だけど、そろそろ帰ってくるんじゃないかしら」


 レオネスはリフィアの町に来てから野を駆ける牙獣(ワイルドファング)の姿を見たことが無かった。

 それは野を駆ける牙獣(ワイルドファング)が遠征に行っており、不在だったからであった。


「ともかく、今日の仕事を探しに行きましょうか」


「そうだな」


 二人はギルド向かうことにした。

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