二十三話
大変お久しぶりです。少し短いです
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かなり滑稽な態勢。何もかもが中途半端、これに対応する型はよほど数奇な、それこそ万を極めようとしたアレクですら気にかけなかった珍妙な剣術でなければ存在しないであろう。
だが剣術に限る必要も実践ではないのである。流石にこんな状態を想定したものは存在しないが、応用を聞かせる事もまた業である。
浮かび上がった足の方向に存在する剣を確認する。浮き上がり力のなくなった状態を生かし、力を入れて抗する事を諦める。
軽身。体のばねを生かし、同時に気を合わせ普通ではありえない動きを可能にする。浮いた方の足のみに力を籠め、それに対し基本は固く、同時に柔らかく力を伝達し体を持ち上げる。
あたかも重力が無いかのように、剣の上に立つ。
そのまま、重力を無視したかのようにお辞儀をするかのような恰好から、頭から腰までの線を軸として回転する。首を掬う様な斬撃は容易く回避されるだけでなく、完全に浮いてしまったこちらの不利をついて下からの切り上げ。
避ける事もかなわないその一撃は、先程の一撃への驚きからか、或いは怒りか、空を裂き、あまりの衝撃に通路その物を切断する。
…それをなんと表現するか、ぬるりと、あたかも斬撃がアレクを避けるかのように後方に流れていく。大きく床を割いた一撃はアレクが部屋に入った廊下の先を切り裂くが、その強力無比な一撃はアレクに何の影響も与えられていないようであった。
流石の大男、ドレンにとってもその様な状態は予想外だったようで自慢の一撃を無傷で躱され頬が引き攣る思いだった。
ドレンの一瞬のスキをかぎ取ったわけではないだろうがアレクは、異常な回転をそのままに、地に足を延ばしつつ、技とも呼べない突きを繰り出してくる。
ドレンの目から見て、明らかな回転を残したその剣がどの様な結果をもたらすか判らないが下手に手を出せばやけどをしそうなことぐらいは容易く判る。
半ば反射の内に剣を避け、その体に斬撃を繰り出す。斬撃と同じ基本中の基本。気を込めた一撃、『割断』。
突然ではあるが、プレイヤーノランの今までやってきた、特に戦闘面での感想として特に思う事が二つである。一つ目は、特に今回になってからであるが想像以上の自由度と、何よりファンタージーをしているのにも関わらずリアリティーがそこにあった事。だからこそ差し込める要素もあった。
その中で、良く判らないものと言えば二つである。
最初に説明された魔法の存在。これを無視したとて、最初に教えられた気という存在。
最初に説明されたときはただあふれる力そのままに切り下ろし、『斬撃』を成立させたが、
それ以降、特に小隊長時代は、身体能力の強化という形でしか気を使えなかった。
どちらも同じと言えば同じかもしれないが、そこには所謂アクティブスキルだとか、必殺技と感じていた気のそれが無かった。
今使った軽身。或いはその後の斬撃を避けた『木の葉』。そこには必殺技の様なものとして感じられる物が有り、同時に気を使うという事を通して明確に気が何か掴み始めているきがした。
気とは、格ゲーで言うゲージ、恐らくこれが近いのである。相手に攻撃を当てる。或いは攻撃を当てられることにより気というリソースが溜る。基本はそうなのだろう。
また、リソース量による特典も存在するのではなかろうか。
必殺技として感じた時と、そうでないとき、その二つに明確な差はないかもしれないが、しいて言えば完成度であろうか。
決まった動きを再現する事により、技としての完成度と威力を向上させ、何より最適化された動きで出が早い事が明確な違いなのではなかろうか。
ともかく、技と技術とでもいうべき二つには特徴があり、同時にそれが自己強化と、ゲージ技の差なのだろう。
出が早く、完成度が高い。つまり安定している物が技、或いは必殺技。
出はまちまちだが柔軟性が高く、技が失敗しづらい。技術、自己強化。
何とはなしにわかってきたこの特徴、強い敵であっても逃れられない明確な隙。ある意味これもリアルであるのだろう。
自己消化が完全にできているわけではない朧げな気の存在と、そこに内包された可能性を感じつつ、単純な剣戟から気を用い超人と化した戦闘を開始する。
一瞬の硬直。大男の構えへの移行。技の出は早くとも、安定して出せない、つまり状況によって出せる技が限られる。その技をどこからでも出せるという事は、どこからでも出せる状態に持っていくという事だ。
…隙、ありである。いかに出が早くともそこに移行する瞬間は何もできない。
良く訓練されたものに出る特徴である。
蛮族風味ではあるが、この大男非常にうまい剣術の使い手でもある。だが追い詰められた経験が少ないのであろう、リカバリーが下手なのだ。だからこそ釣られたのだろう。
一撃必殺、それを体現する攻撃。しかしその一撃は今までと違い前方だけを切り裂く収束した一撃。その計り知れない一撃は放たれることなく手の喪失により空ぶるという形に終わる。
その光景は今まで以上のまさに超常を生み出した。回転するその男は唐突に空を切るかのように床に落下する。
同時に地に着いた瞬間には左足が地に付き右足は確かに地を踏みつつ、すさまじい速度でもって地を滑る。或いは空中で回転していた時以上の速度でもってその横薙ぎは放たれる。下から首を狙った一撃はされど大男の構えへの移行の為話した距離により掠めるにとどまり、構への移行の隙をついたはずの一撃は必殺の一撃を放とうとした大男の右手を割断する。
互いにとって想定外の状況。強かったが故に躱せたドレン。読めたが故に切れたアレク。
されど、どちらも中途半端に目標が叶えられ、されどどうしようもないほど趨勢は決された。
アレクのは圧倒的優位に立てたが己の見立てが甘くあと一歩であった事に、無双を体験し緩んでいた警戒心、闘争本能に火をつける。
「…少し戦闘を前に平和ボケしていたようだ…感謝するよ」
そう聞いた大男は何も言わずにケッとつばを吐き捨て何も語らない。ある意味、潔い物だ。
語るものなしと切り伏せようとしたが、最後のあがきか手の砂を投げてくる。
その程度で潰される目はない、そのまま切り伏せる。
切り伏せる瞬間に見た目は決死であった。或いはそれは生き汚なく見え貶されるような行為かもしれない。されどその内に感じた殉職の覚悟、盗賊とされた彼らの正体はやはりというべきか、敵ながら、或いはゲームながら深く深く感じさせられるものがある。
少しの感傷の後再び歩き出す。これだけの大立ち回り、相当激しかったはずである。
外からの様子では大して人のいる様子でもなかったが、先程の様な者がいる可能性がある。それに対抗できる人材は甲状腺に参加した人材の内に存在しない。
合流を測るであろう部下たちの元に一旦向かう事と決めた。
予定外は予定外であったが、想像以上に楽しめた。
雑に強い事、強い敵がいる事その事を愉快に思いつつ、同時自身が死んだらどうなるか判らないゲームシステム、できる事ならこのまま死なずに済みたいものだ。
外に迫る魔物に、恐らくいるであろう先程の大男のような存在。明確になってきた敵の存在や強さに心を馳せつつ、死なないように或いはよりゲームを楽しむために思考を加速させていく。
~continue~
今回は二週間。そろそろ学校も休みの季節に寒い季節。体調を崩すではありませんが、忙しさと急な環境変化で全然文章を書けず…楽しみにしてくださった人が居たら大変申し訳ありません。今後も不定期になりそうですがお付き合いお願いします。…前回にもありましたがただでさえ低い文章力がガガガ
