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十三話

大変遅くなり申し訳ない。

~loading~


…いわば、一つの体に二人の精神が入っている状態の為、判る事がある。


アレクという騎士は一般人であるプレイヤーから見ても非常に用心深く、臆病である事が判る。相手と剣を合わせて、アレクの確信、結果の予想を元に戦ってきたが、戦い続ける内にここまでじり貧になった理由が朧げに見えてくる。


単純な話、彼の予測の精度はともかく、彼の予測の取り方に問題があるのだ。

一番始めに戦ったドワーフのような男、うまくすれば勝てるという予測に、実際の戦闘の結果が伴わない。それに対し今の状態も、その場凌ではないが、好転しない事が判っていたとしても動き出せない場面がそこそこにあった。

簡単な話、リターンとリスクの観点で、リスクを多めに取る事であったり、成功率が高い手を優先する癖があるのだ。

いわば、90%の手のみを実行するような 慎重を通り越したそれ。


考えるとするならば、今までそれが通用してきたというバックボーンが原因か、予測と行動を切り離しているのか。前者は、ストーリー上、立場も含め恐らくないのではないか。

となれば後者が本来の姿なのだろう。

必ずしも成功率が低ければ高い効果を得られるわけではないが、往々にして安全マージンが無い方が高い効果を得られることは多い。


今までの手が完全に間違っていたという事はないのだろうが、根本的に勝つ為の手として弱すぎた積み重ねを行っていたのだろう。

小説で言うギア、意識を切り替えていく。



追い詰められたアレクは遠目から見ても明らかに息が上がり、その動きは鈍くなっていた。

それに対して、ハッシュの動きは変わらないどころか、その勢いを増していく。

そこには対比のように、勢いを増す物と、勢いを失う者。今までに積み重ねた実績も、これからの展望も、そうと思われる二者の差が決定的になるかのような一戦。


決着の瞬間も近いと、誰もが考えた。それは、戦っている二者も同じであった。


確信を持ちハッシュは、声を荒らげる。

「ここまでのようですね先輩!実績を積み重ねておられる様でどうにも恐ろしい先輩と思っていたのですが、華を持たせて頂けるとは。このままこの勝負貰いますね!!」


嫌われ者が落とされる瞬間である。一部とはいえ歓声が上がれば否が応でも場が盛り上がっていく。

ハッシュの剣が大上段から、とどめの一撃としても過剰な威力でもって、命を狙うかのような一撃。

それは油断ともいえない誰もが持った確信。アレクの返事も待たずそれは振り下ろされる。


どこから出たか、一瞬の笑い声。誰が挙げるにしても場違い。そして、その一瞬が勝敗を決める。

小さな呟き。

「」


それが何かも確認できずにハッシュはその意識を絶たれた。

勝敗はあっけなく。二者の間ではひどく薄味に勝負は決まる。


ハッシュの振り下ろした剣。それに対して、蹲る様に倒れているだけのアレクは一見して死に体であった。だがそれは、剣がアレクの体を打とうとした一瞬の内にその様相を一変させる。


言うなれば足の形をクランチスタートのように、左足をひき、右足を立てる。体を回転させると共に剣は地をするように抜かれ自身の頂点にある剣の腹に滑らせるように、振り上げられる。

その一撃は、地から昇る雷の様に空をかけ、ハッシュの顎をかすめ、一瞬の内に意識を刈り取る。


「勝負は譲るが、模擬戦の結果は貰っていくぞ、後輩」


一瞬の逆転。いかにアレクが嫌われていたとしても、この劇的な逆転勝利である。

練兵場は、唯の模擬戦とは思えない歓声に包まれ、場が沸き立つ。


その熱狂はアレクを勝者と祝福している様であった。その様を気に入らないと思ったのか、その手に持った大剣を一振りして一人の大男が前に出てくる。


「おい。ハッシュを医務室に連れて行ってやれ。それでアレク小隊長さん、体調がすぐれなさそうだが、お誘いを受けた身だ。俺はどうすればいいかな?」


挑発的な猛獣の笑みに対し、疲れた体を押してアレクは笑う。


『スコアアタックだなこれは』

「それじゃあ、お相手をお願いしようかな」


そこから言葉はいらないと、両者は適当な距離を取って対峙する。


大男、確かガルドだったか。一応、彼は立場としては自身より下だが、一番隊の中でも実力は高い。実力という意味では、明らかに自身より上である。でもまあ勝てないという感じではない。結局の所、戦闘の最中と同じ様に可能性ばかりであれば負けは濃厚だが、選べないわけではない。

今回の勝負は完全にノリでしかない。本来のアレクがどう思うかは判らないが、プレイヤーとしては存分に楽しみたいものである。


ガルドの構えは、大上段。対する此方も大上段を右に傾けた変則的な半身を隠す構え。

一見してどちらも攻撃に傾倒した、ある種隙だらけな構えに見えるが、一方その中に隠された意識は反対と言ってもよかった。


ガルドは単純に攻防において必要な能力、攻めに足る総合力、守りに足る総合力。その両方を兼ね備え、言ってしまえば勝つ為に必要な能力を完全に超えていた。

であれば、守備に能力を回せば万が一が無くなるかもしれないが、同時に穴を埋めるために必要な能力は指数関数的に増える物である。逆に言えば、攻撃に力を回す事により、穴を埋められないが、効率的に能力を使える。有利に戦う、攻めの姿勢である。


一方のアレクは、基本的に攻めの構えであっても守りの心構えである。

能力が低い以上、攻めにも守りにもと力を回す事では勝ちえない。そこで尖らせるわけだが、その尖らせる方向性を自身より強い相手に対しては基本的に攻めの力を割いた方が良い。その事を踏まえた保守的な考えの元、構えたかの様に見えるが根本的な問題から上段以外は構として問題が多すぎるのである。

すりつぶされない、構とは真逆の考えの元アレクは構えるのであった。


満身創痍のアレクに対してガルドは油断なく構える。流石に二人を連続して下した不気味な相手には、油断ばかりとはいかないようであった。


動きのない此方の構えに対して、行くぞとの掛け声。


剣一本以上の距離が一瞬の内につぶれる。

反射としか言えない動きで、半ば感、予想の元剣を振り下ろし重ねる。


勢いはそのままに、僅かに掠めたのかアレクの顔が僅かに歪む。その一撃は地に当たり爆風ともいえる衝撃が周囲を吹き飛ばす。


地が割れ破片が両者を擦っていく。

踏み込む事もできず、アレクは飛びずさる。それに対しガルドはゆったりと余裕を保ったまま構え直す。


この段階で既に勝負の結果はほぼほぼ決まったように思える。事実、先程と違いまさにぎりぎりの綱渡りをしている状態のアレクに対し、能力と余裕を持っているガルド。

先程の戦闘の様な切り替えしも、先程の様な剣戟では望めないであろう。勝ち目はほぼほぼない。綱渡りも、そうでない運ゲーもどうしようもないほどこれだけでは勝ちにつながらない。


勝負は終わるまで決まらない。そうと言うならば、その認識が両者に共有され、それこそが弱者に取って勝利への道を厳しくさせ、同時に終わりを遠ざけていた。


言っては何だが反則技の一つでもなければ勝てそうにない。だが諦めるのは性に合わない。

だからこそアレクは構えるが、ガルドもそれに応じて構える。その形は距離こそ違うが、先程の再現。距離は先程よりも近い、単純にこの条件はアレクにとって不利条件である。対応策の一つもなければ、何の抵抗もさせては貰えぬまま捻り潰されることは想像に難くない。


息を深く吐き出す。一方その隙を突かれる事も可能性の一端として捉え、体から出る力が抜けださないように、されど少しでも力が体の中に入り込むように必死に空気を取り込む。


ガルドはそれを最後の見逃しだと言わんばかりに眼光を鋭くし、猛獣の、両県のような気配を隠さない。


呼吸の終わり、アレクの状態がフラットになった瞬間、先程の繰り返しの様に、剣が交差する…。


~continue~


量はいつも通りに戻せましたが、前回の投稿、水曜日にできず楽しみにしていた人、大変申し訳ないです。戦闘描写はどこを書けばいいか迷いすぎて日常会話パート以上に書くのが難しいです。だからできる限り良いもの書いているつもりなので許して。次こそ水曜目投稿します。

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