04 わたしとニンピューモーさん1
さっきから、わたしの独白に割り込んでくるのは……ニンピューモーさん。宇宙人だ。
齢は15万4千383歳。
腰まで伸ばした艶やかな銀髪がトレードマークで、琥珀色の瞳にピンっと上を向いた長い睫毛が印象的な美人さんだ。
見た目はわたしと同じくらいで23,4歳に見え──真っ黒なローブに身を包み、まるでライトノベルに出てくる魔導師のような格好をいつもしている。
◇ ◇ ◇
──ちょっと、ココでわたしの話。
18歳の時に進学のため上京したわたしは、祖父母の住む青梅市のこの古民家に住まわせてもらうことになった。
その祖父母はわたしが二十歳のときに二人とも亡くなり、それ以来、わたしはこの広大な敷地を持つ一軒屋に一人で住んでいる。
さっき言ったように、社会に出て半年でわたしの精神は病んだ。
今思うと会社を休職する選択肢もあったが……その当時のわたしは、冷静で合理的な判断を下すことが出来なくなっていた。
日々、思考力が落ちていく。
日々、感情が欠けていく。
日々、現実が朦朧としていく。
そんな毎日を過ごしていた。
だから、あの頃の記憶は──複雑に絡まりあって、固く縺れてしまった毛糸のように──ほぐして──思い出すのは難しい。
ぼんやりとした記憶の中で覚えているのは、ある日曜の昼下がり──たしか、紅葉の季節だったと思う──部屋でボーっとしていた時のこと。
窓の外で火の玉が、ゆっくりと裏山に降りていくのを目撃したのだ。
その時、どう思ったのか? その時、どうしたのか? まったく覚えていない。
ただ──夕方になると、玄関のチャイムが鳴って、扉を開くと魔導師のような格好をした綺麗な女性がそこにいた。