01 瞑想をやってみよう!
──とある冬の日の朝。
障子の隙間から、曙光がわずかに差し込む畳の上で。
わたしは銀髪の美人を前にして、唯々諾々と彼女の言葉に従っていた。
濁りのない綺麗な声音が、和室に響く──。
* * *
「まずは、おしりの下に、クッションを敷いて下さい。
そしたら、足を組んで。
両膝とお尻の三点で、身体を支えて下さい。
身体の力を抜いて──上半身を前後左右に揺らして──座りの良いポジションを、探して下さい。
それが出来れば、ゆっくりと背筋を伸ばして──。
両手は膝の上に。
ゆっくり……静かに目を閉じて。
そしたら……意識を、呼吸に向けて下さい。
吐く息。吸う息。その間にある呼吸の止まる瞬間。
それをひたすら、観るんです──。
ただ、それだけです。
あっ、呼吸はいつも通りに、していて下さいね。
これは簡単に思えるかもしれませんけど……やってみると、意外と難しいんです。
何故なら、雑念が沸いてくるからです。
“お腹、空いたな”
“鼻が痒い……”
“今日、失敗しちゃった!”
“赦せない!”
“もう嫌だ……(>_<)!!”
何か思い浮かぶ度に、意識は呼吸を忘れて、雑念に捕らわれます。
でも、その度に呼吸に意識を戻すんです。
……時には“何かの記憶”をきっかけに、考えが止まらなくなっちゃうかもしれません……
それは、仕方のないことないんです。
人間の脳みそって、そういう風に出来てますから。
でも、そのことに気がついたら、すぐに意識を呼吸に向け直して下さい。何度でも何度でも────筋トレで筋肉を鍛えるように。
ただ、それだけです。
まずは10分間だけやってみましょう!」
* * *
──わたしはニンピューモーさんの言葉に、死んだ目で頷いた。
ひょっとしたら、これで救われるかもしれない……わたしは藁にも縋る思いで、彼女の言葉に従った……