18 あんがー・まねじめんと6
それ以来、職場や瞑想中にフラッシュバックに見舞われた際は、チャンス! と思いながら、体の変化に意識を向けた。
──これはある日の瞑想中の出来事。
目を瞑って坐っていると、昔の記憶がいつものようにやって来た。呼んでもいないのに。
──ある日の職場の給湯室で湯呑を洗っていた時の記憶。
廊下で話す○×主任と▽△さんの会話が思い起こされる。
『皇さんって、ほんと使えないよねぇー』
『早く、会社辞めてほしいよね。あの給料泥棒』
──そんな記憶が鮮やかに蘇る──。
普段なら頭が沸騰して……○×主任らへの憎悪で×××な妄想を始めてしまうのだが……。
この日のわたしは湧き起こった怒りとともに生じた身体の変化に【気づき】を向けることが出来ていた。
怒りとともに喉が締め付けられるような不快感に【気づく】ことが出来たわたしは、ニンのアドバイスに従って、目を瞑り、呼吸をしながら、必死にその不快感に意識を留めた。
喉がギューと絞めつけられるような苦しみ……その不快感を全力で感じ取る。
──そして、自分が吸った息を喉の苦しみの部分に送り届ける……そんなイメージで呼吸を繰り返す。
心を落ち着け、冷静に喉の違和感を観察する。
徐々にその不快感の質が溶けるように変化し……不快感の範囲が移ろい……やがて消えた。
何かの自浄作用が働いたかの如く。
瞑想中以外の時──職場や家の中にいるときも──同じような対処に努めた。
こうすることで、怒りは自然と収まって、見苦しい妄想を未然に防ぐことが出来た。
これはただの現実逃避かもしれない。所詮、対処療法だ。そんなことを言う人もいるだろう。
でも……怒りに、脳を、身体を、焼かれていただけの昔より、ずっとずっとマシだ。
そもそも、一日のわたしの脳みその働きぶりを冷静に振り返ってみると、その9割はどうでもいい思考や思念に費やされている。
過去に受けたネガティブな記憶の反芻、どうしようもない妄想や空想、Ifという無意味な願望、後悔……
なんて非生産的なんだ!
わたしはこうしたアンガー・マネジメントを繰り返し、日々、“今の自分の状態”、“今の周囲の状況”に心を留めることに専心した。
【気づき】を持って、一日を丁寧に過ごすことを心掛けた。
そんな日々を過ごすことで、わたしは過去の苦しい記憶、無意味な思考から少しずつ、少しずつ、自由になっていけるような気がした。




