異世界の王は……
歩いている坂道が徐々に緩やかになっていく。ようやく、城の前に辿り着いたのではあるけど、やっぱり、そんな大きな城とは言えない。
中央に円柱形の建物と、その周りを囲むように三階建の建物が四つ。ほぼ、僕の通っている高校と同じ敷地面積と建物だ。
城は城壁で囲まれていて、その回りに堀が作られている。城への入り口は一箇所、その城門の前に憲兵が二人立っている。
「お帰りなさいませ。アライア様」
「うむ」
憲兵の内の年配の方の人物が彼女に声を掛けてきた。その声に彼女は軽く手を上げて応える。
そのまま城門をくぐると、跳ね橋がある。堀を渡れるように設置されているのだけれど、敵が城まで攻めて来たときにはこの橋を上げて、城内への敵の侵入を防ぐのに役立つのであろう。
跳ね橋を渡り、城内に入った僕たちを待っていたのは、年老いてはいるけど、鮮やかな色彩、華やかな刺繍、ジャボやカフスに高価そうなレースで彩られた服を纏い、凛とした佇まいの人物だ。
「アライア。その者が今回召喚された者か?」
「はっ! ルシール伯様!」
彼女はこれまでとは違って、緊張した面持ちで老泊に接している。その事からしても、この老泊がこの国における立場がかなり上の者だと推測できる。
「国王陛下がお待ちである。速やかに拝謁するように」
「はっ! 分かりました!」
彼女は深々と頭を下げ、直ぐに一番大きい建物へと歩き始める。
僕も彼女に付いて歩き始める。
建物内へ入ると外とは一転してひんやりとして薄暗い雰囲気を漂わせている
でも、この感じ何かに似ているぞ? えーと、あっ、そうだ! 雨の日の午後、先生に先導されて職員室に連れられていくあの感じだ。
うわ〜っ、嫌な事を思い出したなあ。
今回の事も、彼女が国庫一年分のお金を使って僕を召喚した。けれど、召喚された僕の能力は、注ぎ込んだお金に見合うものでは無くて、誰でも身につけている様な平凡なものだった。こんな結果報告して喜ぶ国王っていないよな。
怒鳴られるのかな? 気が滅入るな。
アライアは一言も発すること無く、真っ直ぐ正面を向いて歩き続ける。
暫くして白色の重厚な扉が現れ、その部屋を守っている兵士二人がゆっくりと扉を開く。
部屋の中は全ての壁に金色の装飾が施され、床には赤色を基調に金の刺繍が入った絨毯が敷かれている。
僕とアライアはその上をゆっくりと歩き、部屋の真正面中央に座している人物へと近づいていった。
そして、片膝をつき深々と頭を下げた。僕は何をどうして良いものかと分からず突っ立っている。
「膝をついて」
アライアにそう言われて慌てて膝をついた。
その様子をにこやかな顔で見ている国王は、僕が思ってたような年老いた王では無く、二十代後半くらいに見えるどちらかと言うと若々しい王だ。
「異世界の者、そこまでかしこまらなくとも良いのだぞ。っていうか、やっと来たか。水波くん!」