モンスターを狩ってアイテムを集めるような世界では無いって!
建物の外に出たとたん、僕の目に強烈な光が差し込んでくる。
「うっ!」
建物の中が薄暗かった分、外の燦々と照っている太陽の光が眩しく、思わず目の上に手をやって日差しを遮った。
目の前に映るものは、やはり僕がいた日本とは思えない歴史の教科書の写真で見たことしか無いような、石畳の路地と軒下にぶら下がるアンティーク調の看板、オレンジ色の切妻屋根と木枠の壁が特徴の窓を持つ家々が並んでいる。
振り返り、僕の出てきた建物を見る。
教会みたいなものなのだろうか、入り口正面上に紋様と文字が刻まれていて、赤い尖塔と赤いアーチ型の窓枠が可愛く感じられる建物だ。
「さあ、行くぞ!」
しばらく辺りを見回していた僕に、しびれを切らしたのか彼女は僕にひと声掛けて歩き出した。
道沿い、軒先に看板が下がっている家が建ち並んでいる。って事は、ここは商店街に当たるのだろうか? 人の往来もある程度あって、話し声や、笑い声が聞こえてくることからある程度賑わいのある町なんだろうな。
「で、僕は何処に連れて行かれるのかな?」
「あれよ」
彼女が指さしたのは、今いる町から1キロ位離れた、少し小高い丘にそびえ立つって言うよりは、どちらかと言うと、本城が別の場所にあって、その本城から離れた場所を統治するための支城のような建物だ。
「あれって、やっぱりあれだよね〜」
僕は本城なのか支城なのか分からなかったので、とりあえず言葉を濁して聞いてみた。
「そうだ! あれが我々エラン王国の城だ!」
彼女はいかにも凄いだろうと言いたそうに、自慢げな表情で僕の顔を見る。
えーと、どう返そうか?
僕が想像していたのは、ファンタジー映画に出てくるような巨城であり、こんな小さい城は予想外だった。
このサイズの城となると、この国の統治する領土の人口は二、三千人というところか。
となると、さっき言ってた僕の召喚費用に国庫の約一年分のお金が掛かったっていうのも分かる気がする。
「少し聞きたいこたがあるんだけど」
「なんだ?」
「この世界の国ってどれくらいの数あるのかな?」
「分かっているだけで約二十七ヵ国位。そのそれぞれの国が領土を広げようと躍起になっている」
「それって、国同士が戦争をしているって事なのか?」
「そういう事だ」
げっ! 最悪だ! 僕が転移した異世界は、モンスターを倒してアイテムを集めるようなファンタジーの世界では無く、国同士が覇権を争う戦国時代のようだ。
世はまさに戦国時代。弱小国に転移した主人公は果たして生きて元の世界に戻れるのだろうか!! って次回予告みたいな事を言ってる余裕も無い。
さて、どうしようか。