召喚にかかった費用分は働け!
自分のステータスをもう一度見てみる。
全体的に平均以下。これは僕でも彼女が残念がるのも分かる気がする。あ、でも一つ20って数値のがあるじゃん。
「糞、糞って言うけど、え〜と、LAKってのが20で最高値じゃない?」
「そう! 確かに20ね。運が……。運のステータスがMAXって、あんたギャンブラーにでもなる気?」
「なんでギャンブラーなんだよ! それにもう一つ高いステータスのがあるじゃないか」
「ああ、INTか。残念ながらこれが全く役に立たないんだよね〜。そこのスクリーンをスライドさせてみな」
彼女の言う通りにページをスライドさせる。タッチパネルをスワイプさせる感じだ。
攻撃魔法
アイスボルト
補助魔法
スリープ
回復魔法
セルフヒール
キュアポイズン
特殊魔法
―――――――――
新たな画面が表示された。どうやら、魔法に関するものらしいののだが……。
「それでこれのどこに君をがっかりさせる要素があるんだい?」
僕の言葉に、彼女はやれやれといった表情を浮かべ首を左右に振った。
「あのな、お前は当然知らないだろうが、ここに表示されている魔法は全て初歩の初歩。魔法を習い始めて最初に覚える魔法なんだ。INTは魔法攻撃力に直結している。つまり、本来INTが高ければより多くの魔法を習得しそれに伴って攻撃力は上がっていく。なのに使える魔法がこれだけって、全くの役立たずってことだろう」
「いやいやいや、ここに表示されている魔法が初歩の魔法だとしても、これから色々覚えるかもしれないし、今ある魔法がパワーアップするかもしれないじゃないか」
「残念ながら、それは無い。なぜなら、画面表示を見れば分かると思うが、攻撃魔法、補助魔法、回復魔法ともに空きスペースが無い。それはこれ以上の魔法は覚えないという意味なんだ。それから、今表示されている魔法のレベルが最大値まで上がったとしても、他の上位魔法のレベル1程度にしかならない」
うわーっ。それが本当だとしたら、僕のこの世界での活躍の場は無いじゃん。
よく異世界物のアニメとかである、異世界での死は現実世界での死になるとかあるからなぁ。この世界での僕の能力が平均以下だとすると……。
この世界で生きていける確率はヤバイくらいに低いんじゃないか?
そうだとしたら、早くこの世界から自分の世界に戻る事を考えた方がいいよな。
「僕が君の役に立てない能力の持ち主だってことは、よーく、わかった。僕は自分の世界に戻らさせてもらうよ」
「そういう訳にもはいかないんだよね〜」
彼女は頭に被っていたとんがり帽子を取って、片手で肩に届かない位の長さの髪を整えている。
目がぱっちりしていて圧倒的な美人では無いが、愛嬌のある可愛い顔だ。
「どうして? 僕は糞カードだから、居ても居なくても同じことなんだろ?」
「そうね。糞カードだけど、召喚にかかった費用分は働け! そうじゃないと割に合わない」
はぁ〜っ!?
勝手に召喚しといて、召喚費用分働けって? どんなブラック企業だよ。
「やだよ。ボロクソ言われた上に、召喚した費用を賠償しろって有り得ないだろ!」
「そうかな〜。お前にとっても良い条件が提示出来る思うんだけどな〜」
「例えば?」
「衣食住は保証される。これはデカいぞ〜。この見知らぬ世界で一人、食べることも住むところも無くてどうやって生きていくんだい?」
確かに、この世界で生きていく為には衣食住の確保は絶対だ。
「それから、お前が自分の世界に戻る為の方法が分かるかもしれない。この世界は広い。召喚できるすべがあるなら、戻すすべもあるだろう。どうだ? これぞ一石二鳥のナイスなアイデアだと思わないか?」
ナイスなアイデアかどうかは、働く内容にもよるが、僕が今出来る最良の選択肢は彼女の話に乗ることのようだ。
「分かった。で、僕は何をすればいいのかな」
「とりあえずはわたしについて来てくれ」
彼女は嬉しそうに笑みを浮かべ、僕を促すように建物の外へと誘導する。僕は彼女の後をついて、建物の出口へと歩みを進めた。