コスプレじゃないの?
そんな事を考えていると、急に落下スピードが下り、一度フワッと浮いた感覚がして、体は地面に降ろされた。例えていうなら、エレベーターの止まる時の感じに似ている。
「ああああああーーっっっっ! またしても失敗かあぁぁーー!!」
周りの様子を確認する間もなく、とんでもない大音量の声が僕の耳に飛び込んできた。
声のした方に顔を向けると、そこに、なんとも奇妙な格好をした少女が頭を抱えてうずくまっている。
「えーと、どちらの方ですか?」
僕は恐る恐るその少女に質問をしてみた。今の現状が分からない以上、目の前にいる少女から少しでも情報が欲しかったからだ。
「何だって! ああーっ?」
その少女はこちらを向いて、すこぶる機嫌が悪そうに僕を睨んだ。
「いや、だから、どちらさんかな〜と思って……」
「あーあ! スーパーレアでも無い。レアでも無い。どノーマル! また、一年かけてお金を貯めなきゃいけないのか」
少女は人の話を聞く気もないのか勝手に言葉を呟いている。
僕は彼女の姿と言葉から少し現状を推測してみた。
まず、彼女の格好だが、黒のとんがり帽子に茶色の革製っぽいワンピース、その上から裏地が赤色で外側が黒色のマントを羽織っている。足元は、これも革製っぽいのブーツ。
うん。魔法使いのコスプレだな。
呟いている内容からすると、スーパーレア、レア、ノーマルって言ってるから、ゲームのガチャの話だろうな。
結論。
彼女はコスプレーヤーで、コスプレしながらスマホのアプリゲームをやって吠えている少し危ない人。
う〜ん。納得。我ながら素晴らしい洞察力。
じーっ。じーーっ。じーーーっ。
満足げにしている僕の顔を、凄い顔で睨んでいる少女が一人。
「あんた! 何か失礼なことを思ってないよな!」
「いやいや。失礼なことなんてとんでもない。その魔法使いのコスプレ似合ってるよ。それから、ガチャ良いカード出なかったんだ。残念だったね」
「コスプレ? ガチャ? 何のことを言ってるんだ?」
少女は僕の方を見て怪訝そうな顔をしている。
「えっ、その服装はコスプレじゃないの?」
「お前の言っているコスプレというのが何のことかは知らないが、この服装は召喚師の一般的な服装だ」
「召喚師?」
「そうだ。わたしこそが、エラン王国宮廷召喚師 ソフィア・アライアだ!」
少女は無い胸をめいいっぱい張っている。
えーと。ちょっと何を言っているのか分からないな。