エクシードレベル
意識が戻った僕は辺りを見回した。
どうやら、僕が思ってるよりも意識が離れていた時間は短かったようで、意識が離れる前と同じ状況でみんなが僕に注目していた。
今、この場で僕は高城先輩から能力を継承して、この城の城主となる事を宣言しなければならない。
その為にはどうしても、他人のステータスを見る事が出来るアライアの協力が必要だ。
「ちょっと、アライア」
僕は小声でアライアをこちらに呼ぶ。
「なに?」
僕はアライアを、花が飾られている台座と花瓶の影に隠れて、みんなから見えない位置に誘導する。
そして、僕は無言で小指を差し出した。
「だから、なんなの?」
「いいから。繋いで」
アライアは渋々、僕の小指に自分の小指を絡ませる。僕とアライアが小指を繋いでいるのは、装飾品の影になってみんなには見えなくなっている。
『高城先輩に会ってきた』
『えっ! ノボル様は生きているの?』
『いや、どちらかって言ったら死んでいる』
『何? それ?』
僕もあの状況をどう説明すればよいのか分かりかねている。
『とりあえずだ。死んでいるのだけど、話しは出来る状態ではある』
『何かよく分らないけど、サイレントトークを使うって事はみんなに聞かれたくない話なの?』
『そういう事。高城先輩が僕にこの城の城主になれって』
『はぁ、ショウ! あんた馬鹿なの? あんたのステータスで城主が務まると思ってるの?』
『だから、先輩のステータスを継承したとか言ってみんなを納得させろって』
『納得させろって言ってもねぇ……』
アライアはそう言ってもう一度僕のステータスを確認している。
『えっ、待って、凄い!』
『どうした?』
『あんたのステータスが上がっているの』
な〜んだ、先輩も人が悪いなあ。能力継承するように嘘をつけって言ってたけど、本当はステータスが上がってるって事を知ってたんじゃないか。
『じゃあ、これで城主に相応しいステータスになったというわけだ』
『はぁ? 何言ってんの?』
アライアは僕を凄く蔑んだ眼差しで見ている。
へっ?
『城主に関係するステータスは何にも変わってないわよ』
『ん?』
僕も自分のステータスを表示してみる。
本当だ。何も変わっていない……あ、変わってる。運のステータスがレベル上限の20を超えて23レベルになっている。
上がってるって、運かよ………………。
僕は一気にテンションが下がってしまった。
『これって、凄い事なの?』
『さあ、でも、レベル上限を超えてるステータスを見るのは私は初めてよ』
『う〜ん。でも運のステータスだからなぁ』
『だから前にも言ったじゃない。ギャンブラーにでもなればって』
『絶対にイヤだ』