異世界といえばハーレム……なわけ無い
高城先輩は両腕を広げ、ハーレムが異世界でのステータスシンボルかのように言った。
「…………」
僕は高城先輩に冷たい視線を放つ。
「な、なんだ? その視線は!?」
「あのですね。先輩は僕が異世界ハーレムに憧れを持っていると思っていたんですか?」
「えーーーーっ! ハーレムに憧れは無いの? 世の中の男女問わず、可愛い子や美形な子を、側にたくさん置いておきたいって願望があるんじゃないか?」
「人それぞれです! 少なくとも僕はありません!」
「そうかぁ? せっかく城主という、金と権力を集めれる立場になるんだ。それを利用しない手は無いだろうに」
高城先輩は残念そうに、ジーンズのポケットに両手を突っ込んで天を仰いでいる。
あれ? 先輩の服が、僕と階段から落ちた時の服になっている。
「先輩! さっきまで着ていた、あのいろいろ付いたきらびやかな城主の服はどうしたんですか?」
「ああ、なんか死んだら元の服に戻ったみたいだな。それより、本当にハーレムは興味無いのか?」
「まったくありません! 先輩はどうだったんですか? あんなに異世界に憧れていたじゃないですか」
「俺か? 一応ハーレム的なものを作ってはみたんだけど……」
「けど?」
わ〜! この人マジでハーレム作ったんだ。
「なんか楽しくなかったんだよ」
「楽しくない?」
「そう。なんて言うかなあ。俺の求めていたのは、かわいい女の子からチヤホヤされるのでは無くて、俺の愛した女性から愛される事なんだって気づいたんだ」
うわ〜〜っ。ここで愛を語るのか…………。
「で、この異世界で先輩が愛する人は出来たんですか?」
「いや、出来なかった。っていうか、城主の仕事って思ったよりもメッチャ忙しくってさ。恋愛してる暇すら無かったのだよ」
「そんな大変な仕事を、僕に押し付けるんですか?」
「いやあ、悪いとは思ってるんだけど……。俺がこんな状態だからなあ。大切な仲間と住民達の為に力になってやってくれ」
高城先輩が直立不動で深々と頭を下げてくる。そこまで頭を下げらると、僕としてもやらなきゃ非情な人だと思われかねない。
「分かりました。任せとけとは言えないですけど、可能な限り頑張ります」
「うん。それでいい」
高城先輩はそう言ってから振り返り、強い光の差している方へ、片手を上げて手をひらひらと振りながら歩いて去っていく。
「何かあったら、また出てくるから。当分は向こうで休んでる」
「は、はい……」
「はい」とは言ったものの、何かあったら出てくるの何かって何だ? 相当ヤバイ何かなのか? それから、向こうっていったい何処で、どんな場所なんだ?
などなど、色々な疑問を残しつつ、僕の意識は自分の身体へと戻っていった。