高城先輩の思念
隅々まで調べてみたけど、それらしき物は発見できず諦めかけていた時、ふと、玉座を見ると、椅子の影がおかしいことに気づいた。
通常、影は光の反対方向に形を作るのだけれど、椅子の影が妙に歪な形をしているのだ。
僕は玉座の下を覗き込んだ。
玉座と床の隙間にきらきらと光る玉のような物が見える。僕はその隙間に腕を入れ、ゆっくりと光る玉に向かって手を伸ばしていく。
そして、指先がその光に触れた瞬間、僕の意識はその光の中に吸い込まれていった。
何も無い真っ白な世界。
そんな中に僕がぽつんと立っている。
どちらが正面か分からないけど、僕が向いている方からひとりの人が笑顔で歩いて来る。
「た、高城先輩!」
「おう! どうした? そんな辛気臭い顔をして?」
「だって、先輩が死んだって…………」
「あはははは……。死んだか。そうか……そうか……」
高城先輩は大爆笑している。
「何がそんなにおかしいんですか!」
「いや、ごめん。ごめん」
頭を掻きながら、バツの悪そうな顔をして僕の顔を見る。
「実は俺にも死んだのか、どうなのか、はっきりとは分からないんだ」
「どういう事ですか?」
「俺は確かにあの世界で死んだ。しかし、こうして意思を持って存在している。という事は、もしかしたらこの世界で復活する方法があるのかもしれないし、元の世界に戻れるのかもしれない」
「それじゃあ、僕は先輩を復活させる方法を探せばいいって事ですね」
「まあ、そういう事かな」
高城先輩はいつものお気楽な感じで答えてるけど、僕にはどうしても聞いておかなければならない事がある。
「先輩を暗殺したのは誰なんですか?」
「う〜ん。それか〜〜。やっぱり聞いてくる?」
「当たり前じゃないですか!」
「え〜と、それは聞かないで欲しい」
「どうしてですか?」
「今のみんなは俺が転移してから、ずっと助けてくれた仲間なんだ。その関係を壊したくない」
どうやら今、謁見の間にいる人物の中に高城先輩を暗殺した、若しくは暗殺を手引きした者がいるようだ。
しかし、先輩は犯人の名前を言いたくないらしい。
言いたく無いって、自分を殺した犯人なんだぜ! どうして言いたくないってなるんだよ!
う〜ん。ちょっと良くわからない、と言うか、先輩の気持ちが理解できない。