イヤな知らせ
「まあ、おしゃべりはそれくらいにして、そろそろ準備にかかるよ」
キルト城の城門と憲兵が遠目に見える所で、アライアは商店と商店の間の細い路地に僕を連れ込んだ。
「ここから、インビジブルの魔法をかける。注意事項としてはこの魔法は1Hで効果がきれる」
「1H?」
「さっき馬車に乗っていた位の時間だ」
ああ、一時間位ってことね。
「それから、言葉を発すると効果がきれる」
「それじゃあ、インビジブルの魔法がかかっている間は会話が出来ないってこと?」
「いや、そうでは無い。ちょっと、小指を貸せ」
アライアにそう言われて、僕は手を差し出した。アライアはその手を取り、僕の手の小指に自分の小指を絡ませる。
「えっ、ちょ、ちょっと」
形的には指切りの状態なのだけど、別に指切りをしているわけではないので異様な恥ずかしさに襲われる。
「な、何を……」
「黙って!」
「あ、は、はい」
アライアは目を閉じて集中しているようだ。
『聞こえる?』
僕の頭の中でアライアの声がする。
「えっ?」
僕はアライアの方を見たけど、アライアは目を閉じたまま口を動かしてはいない。
『サイレントトークの魔法だ。互いの繋いだ小指を通して意思疎通ができる』
それじゃあ僕もやってみるか。集中させて言葉を頭の中で発する。
『それは便利だね。ただ、この小指を絡ませた姿は恥ずかしくないか?』
アライアは顔はみるみる真っ赤になり、それを誤魔化すように少し怒った口調で返してくる。
『インビジブルの魔法をかければ、誰にも見えないんだ。気にする事は無い』
おっしゃる通りで。
アライアは自分の小指を引っ込めて、少しその指を見つめてから、
『お前が余計な事を言うから変な感じになったけど、インビジブルの魔法をかけてキルト城に乗り込むよ』
『わかった』
アライアは魔法の詠唱を始める。
そこへ空から一羽の黒色の鳥が、魔法の詠唱を遮るように滑り込んでくる。
「な、何?」
アライアは詠唱途中で中断して、その鳥の姿を目で追いかける。
鳥は近くにある木製の箱の上に止まった。
そして、その目から商店の壁に向かって光が放たれる。その光は次第に形を作り人間の顔を映し出す。
(アライア! 大変なの!)
映し出された人物は回復職のフーアだった。
フーアは色白の顔がより一層白くなる程、血の気が失せ、取り乱した様子を見せている。
「どうしたの? そんなに慌てて?」
(そ、それが……それが……我らが王ノボル様が亡くなられたの!)




