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一週間(前半)



「最初に言っておく。この一週間は、俺の許可無く剣に触れる事を禁ずる。」


「え?は、はい。」


「そして、最終日に試験をする。ここにある岩を 剣で砕け。岩が砕ければ合格、剣が砕ければ失格。どちらにせよそこで終了だ。」


そこまで言うとギルバートは、昨日の立ち合いで使っていた棒を ラキュオスに投げた。


「そいつでも腰に下げとけ。」


やはり剣士というのは、腰にモノが無いと不安になる生き物らしい。多分に漏れずラキュオスもそうであった。


初日の内容は、身体の構造について学んだ。骨の位置、急所、人であれ魔獣であれ、ほとんどの生き物にはあるものだ。


「コイツがわかったら、次やることがわかるだろ?」


「え、えぇ、まぁ……」


「お前、ピンときてねぇな。いいか、力任せにただ剣を振ってたら、すぐ折れちまうぞ!棍棒振り回してんのとは、わけが違う。骨に当てないで急所を切る。剣の速さ、踏み込み、刃を入れる角度、振り抜くまでの動作、なぁ。やることいっぱいあんだろ。全てが噛み合ってはじめて、必殺の太刀筋ってヤツになる。」


「な、なるほど。」


「剣士ってぇのは、その太刀筋を幾通りも持ってるもんだ。剣士同士の戦いならば、相手も持ってるってことだ。相手の太刀筋を読み、捌きながら自分の一撃を打ち込む。どうだ!ワクワクすんだろ!」


熱く語り出したギルバートに若干引きながら、それでもラキュオスは真剣に聞いた。


「まぁ、口で言ったところで身に付くもんじゃねぇ。お前は今日から三日間、ギルドの魔獣解体の手伝いをやれ。いいか、受付の姉ちゃんも、お前の先輩だ。言われたことはちゃんとやれ。」


「え?は、はい。」


その日からラキュオスは、素材買い取りカウンターに立たされる。客の居ない時は、足運びの練習、解体室に吊された魔獣の骨に、木の棒で急所を狙い突く練習、生臭い部屋の中で三日を過ごした。


二日目の夕方、カウンターに旅の冒険者が来た。仕留めた魔獣を取り出し、解体の依頼だ。


「おい、珍しい魔獣だ。高く買ってくれよ。」


横柄な態度の四人組の冒険者、裏からお姉さんが出てきた。


「えー、どれどれ?なるほど。確かに希少種ですけど、これじゃ査定しなくてもわかります。頑張って買い取っても、銀貨五枚が限度ですね。」


「なんだとてめぇ!他所の冒険者だからって、舐めてんのか!コイツぁポアゾングリズリーだぞ!肉は食用、内臓や血は薬になる。毛皮も売れるハズだ!最低でも金貨八枚はくだらねぇぞ!さっさと出しやがれ!」


(脅しか……私が相手するかな。)


「吠えてんじゃねぇぞドサンピンがぁ!」


その言葉を怒鳴ったのは、なんとお姉さんだ!


「んじゃ、脳ミソ筋肉のあんた達にもわかるように、目の前で解体と査定してやるよ!」


ロビーの床板を剥がすと、土間になっている。解体室に入り切らない魔獣などは、そうやって解体するらしい。


「を!レミ姉さんの解体ショーか!みんな見てこうぜ!」


ロビーにいた冒険者達が、手際よく床板を片付け、端に避けると、解体が始まるのを待っている。


「そんじゃいくよー、ポアゾングリズリー、仕留めてから六時間ってとこだね。

瞬殺じゃないね。傷の様子から見て、罠を使ったね。毛皮に縄の擦れた跡がある。

動きを封じて頭に鈍器、多分ハンマーだね。首、脇腹、背中、刺傷が十数箇所。急所外しまくりで滅多刺し。酷いもんだ……んじゃバラすよ。」

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