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父を知る者



「それで?」


「剣聖は、ソードともブレードとも違う、見たこともない剣を持っていた。ブレードを縦に割って片刃にしたような、少し反りのある剣だそうだ。打刀と言うらしい。

ギルバートさんは持てる力と技、全てをぶつけた。その尽くを紙一重で躱され、とうとう最後にはギルバートさんの喉元に、剣聖の切先をピタリとあてられた。」


「紙一重、か……」


「剣聖は王様に、この者は力、技、共に自分と互角だと言ったらしい。そこで王様は、ギルバートさんに、ソードマスターの名乗りを許された……という話だ。」


「その、ギルバート殿が、今ギルドのマスターだと?」


「そうだ。あんたも冒険者なら、ギルドに挨拶くらい行くだろ?くれぐれも粗相の無いようにな。」


「あ、あぁ。そうだな。明日にでも行ってみよう。」


ラキュオスは、少し悩んだ。父の強さを知る者、会えば必然的に比べられるだろう。剣聖の息子が、こんな基本も知らないような冒険者だなんて……いっそ名を隠して、教えを乞うか……その夜、結論の出ぬまま眠りについた。



-翌朝。腹を括ったラキュオスは、ギルドを訪ねる。


「マスターにお会いしたい。私は、ラキュオス・フォン・シュタイナーと申す者。旅の冒険者をしている。ご挨拶に伺った。お取次ぎ願いたい。」


ラキュオスは、名を隠すことなく、ありのままを伝えた。すると奥から一人の男が顔を出す。


「シュタイナーだと?嫌な名前だな。何しに来た!」


「旅の途中、立ち寄らせてもらった。一応挨拶だけでもと思い……」


「じゃあ挨拶は済んだろ。とっとと帰んな。」


「ギルバート殿に折り入ってお願いがある。私に、剣の基礎をお教え願えないだろうか?」


「はぁ?お前、基礎も無しに冒険者やってんのか?呆れたヤツだな……親父は教えてくれなかったのか?それとも、親父の名が重すぎて、一人でやさぐれたか?」


「うっ、それは……」


「ならばなぜ剣をとった?逃げるくらいなら、はなから剣など握らなければいいだろう。」


「……守るため。私は、守るために剣を振るう。」


「(ふんっ……)言うのは簡単だ。わかった。一度手合わせをする。お前がどれほど本気なのか、見極めてやる。修練場に来い!」


ギルバートとラキュオスは、修練場に向かった。



-野次馬に囲まれ、二人は中央で向き合う。

さほど広くない修練場は、人の熱気でむせ返っていた。


「いつでもいい、かかってこい。あぁ、お前はその腰のヤツでいいぞ。」


ギルバートは、樫の木を削った棒を手に構える。


「それは少々舐め過ぎでは無いですか?死にますよ?」


「やってみろよ。」


ラキュオスは刀身にマナを込める。大上段に構えると、一気に跳躍し距離を詰め、ギルバートの頭上に振り下ろした!


「ガギン!」


ギルバートの持つ樫の棒の先が、ラキュオスの剣の鍔と柄の継ぎ目に、正確に突き入れられている!ラキュオスの剣は柄が砕け、刀身が甲高い金属音を響かせ、床で跳ねて転がった。


ただの木の棒による突きが、鍛え抜かれた真剣に貫かれたような錯覚を覚える。何もかも次元が違う。僅か一合の打ち合いで、ラキュオスは圧倒的な敗北を悟った。


「お前、嘘だな。何が守るための剣だ。お前の剣は、怒り、憎しみしか伝わって来ない。言わば復讐のドス黒い剣だ!そんなヤツに教えるものは何も無い!帰って墓守でもしてろ!」


それだけを言い残し、ギルバートは修練場を出ていった。

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