見たことあるけどない
ちょっとリハビリ程度に書きます。
また毎日投稿出来るようになったら
お知らせします。
「サンドワーム、か?」
ラキュオスがなぜ疑問符を付けたのか……
サンドワームと言えば、体長二十メートル程のミミズで、砂に潜り砂上の気配を察知して、不意打ちで真下から獲物を捕食する、厄介な魔獣である。
今目の前に居る魔獣も、胴の直径が二メートル、体長は、砂の表面から出ている部分だけで十メートルはある。
見た目はサンドワームのようだが、ここまで執拗に獲物を追う習性は、サンドワームには無い。
よく見ると、体表に赤黒いマナの膜を纏い、まるで目があるかのようにサンドドラゴンを獲物と定め、執拗に追っているのだ。通常のサンドワームでは、考えられない行動である。
「らっく、やれるか?」
「楽勝だにぃ!」
ラキュオスは、呆然としている蜥蜴ソリの男に声をかける。
「ものは相談なんだが、アイツを私達が倒す代わりに、ソリに乗せてくれないか?」
「で、デザートワームを倒すだって!出来る訳無いじゃないか!」
デザートワーム。サンドワームの突然変異と言われている。探知能力に優れ、サンドワーム以上の攻撃手段を有する、水晶の樹海周辺固有の魔獣である。
「出来ると言ったら?」
「……あ?あぁ、本当に出来るんなら、乗せてやる!」
「よし。」
ラキュオスが約束を取り付けたその時、
「ドン!」
「うにゃっ!」
らっくが盛大に吹っ飛んで来た!砂地に叩きつけられ、ゴロゴロと二回転して止まる。おかげで砂まみれである。
「らっく、交代だ。」
「ぷへっ、ぺっ、ぺっ、砂の塊が飛んできたにぃ……」
見るとデザートワームの胴が脈打っている。口と思われる部分が外側に捲れ、ぐるりと二周、サメの歯の如き三角の棘が現れた。
更に大きく胴が脈打つと、砂の塊が大砲のように撃ち出された!
「ドン!」
「はっ!」
ラキュオスは腰の棒を抜き討ち、砂の塊を粉砕する。どうやらデザートワームは、体内の粘液で飲み込んだ砂を固め、撃ち出しているようだ。
「らっく!ソリを守れ!」
「あいさー!」
ラキュオスは棒にマナを込めた。
「顕化・成刀」
デザートワームは、次の砲撃を放つと、砂の塊の後ろから突進する!砂を粉砕されるとよんで、死角から喰らいつこうという計算だろう。
「コイツには、知能や思考、戦術というものがあるのか?或いは本能……」
ラキュオスは砂弾を粉砕せずに切った。後ろから来るデザートワームの口に、刀と化した棒を打ち込む。するとグニャりと棒を包み込むように、口を閉じた。
「なるほど。口に、上下左右というものがないのか。しかも柔軟性がコイツの防御スタイルなのだな。」
ラキュオスは雷を棒に纏わせ、デザートワームの口が緩んだ隙に距離をとった。デザートワームの身体が、また脈打つ。今度は砂を固めず、嵐の如く噴き出した!
(また視界を遮るか……)
ラキュオスは跳躍で砂嵐を躱す。だが砂の背後には、デザートワームの姿は無かった。
「何処だ?」
着地の瞬間を狙って、真下から大口を開けたデザートワームが飛び出す!足元の砂や石ころごとラキュオスを吸い込み、デザートワームは砂の中へ沈んで行った。
「ラキ様ぁ!!」
らっくは飛び出そうとするが、蜥蜴ソリの男がしがみつく!
「今のうちに逃げるんだ!」
暴れるらっくを必死に掴まえ、男は全速力でソリを走らせるのだった。




