表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/29

商人とは



「独立……ですか?」


「あぁ、この人がな、バッケスの野郎をふんじばってくれたんだ!」


「なんと!バッケスを!」


「あたしはスカッとしたんだが、ほっといたらダザイシティの流通が滞っちまう。街の人が困るだろ?祝いのついでだ。ヤスを連れて、あっちでやってみる気はないか?」


「お嬢、行くのはやぶさかでないですが、支所という形ではダメなんですか?」


「あぁ。あっちもこっちもなんて、あたしは仕切れないよ。この街で手一杯だ。ウル爺も親父の時から尽くしてくれた。もう自分の店構えるべきだろ。」


「お嬢……」


「ヤスもただの倉庫番じゃ勿体ねぇ。あっちで若いヤツら仕切って、バリバリやってみてぇだろ?」


「へい!」


「決まりだな。ウル爺、何人か連れて行っても構わないよ。」


「お嬢、バッケスが囚われたのなら、あっちにも仕事に溢れて途方に暮れてる者も多いでしょう。ヤスと二人、そいつ等束ねてやってみようと思います。」


「そうか。まぁ、人手がいる時は言ってくれ。」


「お嬢、お世話になりました。」


「こっちこそ。あたしに商売を教えてくれた師匠だ。ありがとうございました。」


「旅の方、ありがとう!さぁ、まだまだ忙しくなるぞ!」


「お嬢の花嫁修業も、もう少し先になりそうですな。」


「う、うるさいよ!」


ラキュオスは、以前ヤスに言われた、親方としてのナツに惚れちまった……という言葉を思い出していた。


(器というヤツかな……)


やはりおさと呼ばれ、慕われる者には、それなりの理由がある……ラキュオスはこの出会いに感謝し、名も告げず倉庫街を後にした。


「らっく、次の街に行くか。」


「行くにぃ!」


足取りも軽く、二人は旅を続けるのだった。



-水晶の樹海。

次のグリンシティに向かう為には、迂回を余儀なくされる、広大なエリア。文字通り樹木のように水晶が乱立しており、植物は一切生えていない。

足を踏み入れれば方向感覚を失い、二度と出られないと言われていて、旅人は樹海を避けるように、砂漠化の進む荒野を歩まねばならない。


「ラキ様ぁ、暑いにぃ……もう歩きたくないにぃ……」


「もう少し先で休もう。」


「にゅー……水晶が氷みたいで涼しそうだにぃ……」


「見た目だけだ。入ったら最後、帰れなくなるぞ。」


「にゅー……」


「もう少し、もう少しだ。」


「ねぇ、ラキ様ぁ……」


「もう少しだ。」


「何か来るにぃ。」


砂煙を上げ、何かが近付いて来る。あと百メートルという距離で馬車の幌が見えた。が、明らかに高さが低い。

五十メートル程まで近付いてようやく謎が解けた。ソリだ!しかも引いているのは、体長三メートル以上もある蜥蜴だった。

サンドドラゴンという砂漠地帯の固有種で、指の間には、水かきならぬ砂かきが付いており、脚が太く、体表の鱗は滑らかである。


「乗りたーい!乗りたいにぃ!おーい!」


「!!うぉー!止めるな!邪魔だ!どけっ!」


跳ね飛ばされそうな勢いの蜥蜴ソリ。その後ろの砂が、土竜の巣穴のように盛り上がり、そのトンネルがソリを追いかけている。


「!魔獣に追われているのか!」


「やっつけて、乗せてもらうにぃ!」


「あ、おい、らっく!」


らっくは跳躍と同時にヒュドラの爪を振り出し、出来たばかりのトンネルに突き刺す!

その瞬間、トンネルの動きが止まり、砂が震えた。


「ドバーン!!」


突如爆ぜるトンネルの先端!砂が波打ち、魔獣が頭を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ